「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

樋口監督との別れ。そして後任監督のXデーは!? [J33節新潟戦] 藤井雅彦 -1,474文字-

 

 

11月下旬、サッカー界は別れの季節に突入しつつある。樋口靖洋監督の今季限りでの退任に続いて、試合前日の28日には小林慎二ヘッドコーチの契約満了も発表された。トリコロールの一員として今年までの17年間、さまざまな部門で指導にあたってきた、いわば功労者の一人である。監督の右腕というポジション柄、監督とともに結果責任が生じるのは仕方のないことか。しかし、だからといって過去の功績が色褪せることはない。個人的には育成年代など別部門に戻す一手もあると思うのだが、クラブは変革期に入りつつあるのだろう。

4-3-2-1_ファビオボランチ 監督やヘッドコーチの人事発表は、そのシーズンのホーム最終節前恒例になりつつある。何もマリノスに限った話ではない。ファンやサポーターに公式に伝え、互いに別れを受け入れる。そのために個々の契約事情を公表するというわけだ。明日、日産スタジアムには樋口監督や小林ヘッドコーチに向けて、どのような横断幕が貼られるのだろう。彼らに感謝を伝えるのはもちろんのこと、決定したクラブ側へのメッセージ性に富んだものを期待したい。

試合後には、勝敗に関係なく樋口監督と嘉悦朗社長の言葉を聞けるはずだ。実直で、決して愚痴をこぼさない指揮官の言葉は、ある程度想像できる。良くも悪くも期待を裏切らない、まっすぐな言葉を聞けるだろうし、最後に聞きたい。最後まで真っ直ぐでいてほしいとも思う。

注目は、代表取締役社長である嘉悦朗の言葉だ。監督退任発表後は幾度となく報道陣の囲み取材に応じているものの、発せられる言葉はきまって「ノーコメントですよ」で、不敵な笑みを浮かべている。相手側がある交渉事で進捗状況を逐一聞けるとは毛頭考えていない。ただ、一つの区切りであるホーム最終戦での挨拶の場なら、何か重大な言葉が飛び出しても不思議ではない。

 

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新潟4-4-2  断っておくと、これは何かを予言する文脈ではない。あくまで一般論で考えたときに、ここまで何もインフォメーションされていないのだから『あるとすればココか』という想像に過ぎない。あるいはホーム最終戦は見送られる監督とヘッドコーチのための時間という考え方もあり、とすれば試合翌日が“Xデー”になる可能性もある。「交渉は確実に進んでいます!」などという教科書通りの言葉は、少しつまらない。

いずれにせよ、別れの季節は新たな出会いが着実に近づいている意味合いもある。別れと出会いも笑顔で迎えるためにできること。それにはホーム最終戦を勝利で飾るしかない。昨年の雪辱戦などという表現は陳腐で、今年のマリノスが今年のアルビレックス新潟を上回れるかどうか。さまざまな感情と思惑が交差する中でも、選手たちはキックオフのホイッスルと同時に勝利のみを目指すのだろう。

 

【この試合のキーマン】
DF 4 栗原 勇蔵

 試合の中での役割としては目立たないかもしれないが、あえてこの男をキーマンに推したい。
他人への感情が稀薄になりつつある昨今、恥じらいなく「誰かのために、何かのために」とコメントできる選手は少なくなった。そのうちの一人が栗原勇蔵だ。
誤解を恐れず言えば、個人的なモチベーションが高いとは思えない。チームにタイトル獲得の可能性がなく、個人レベルでも明確な目標を見つけにくい。これまでなら“なんとなく”のパフォーマンスになってしまう可能性も否定できない。
でも今回は違う。「監督を男にしたい」。短い言葉ながら、力がこもる。勝って花道を飾りたいという思いは誰よりも強く、そして素直だ。苦楽をともにした指揮官に贈る1勝を、若大将がプレゼントする。

 

 

 

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