90分で何ができるかは、ともにプレーしているチームメイトでさえもわからない。齋藤の単騎突破に勝負がかかる [J開幕戦 川崎戦プレビュー] 藤井雅彦 -1,478文字-
フランス人のエリク・モンバエルツ監督は開幕戦でさっそく秘策を用いて川崎フロンターレを迎え撃つ考えだ。
1トップに齋藤学を配置し、右MFには本来右SBの奈良輪雄太が入る。どう考えても攻撃的な布陣ではなく、齋藤の個人技頼み感は否めない。奈良輪は常に120%でプレーできる選手だが、この位置で試合開始からの90分で何ができるかは、ともにプレーしているチームメイトでさえもわからない。相手云々を語る以前に、自分たちに不確定要素がたくさんある。
そして指揮官はこの起用法について多くを詳しく語ろうとしない。それどころか練習での齋藤の1トップ起用を否定するなど、あくまで試合に集中しようとしている。始動から沖縄キャンプと宮崎キャンプを経て、チームはさまざまな配置を試してきた。思い返せば宮崎では藤本が1トップに入り、横浜に帰ってきてからは佐藤優平のトップ下などもあったが、すべてを踏まえた上で今回の予想フォーメーションとなった。
相手は攻撃陣にタレントを揃えるフロンターレで、すると守備に回る時間が長くなるかもしれない。富澤清太郎は「焦れることなく、相手を焦れさせたい」と話す。マリノスは試合開始から我慢する必要があり、それが勝利するための最短距離だろう。間違っても撃ち合ってはいけない。
アデミウソンは第2節・FC東京戦に間に合う見込みで、その後はラフィーニャや中村俊輔も帰ってくる。したがってシーズン序盤は辛抱強く勝ち点を積み上げる必要がある。せっかく攻撃のタレントが戻ってきても、その時点で上位争いできない順位では話にならない。
高揚感とともに迎える開幕戦とは言い切れない。現時点での戦力は昨季よりも落ちている。ただ、それが結果に直結するとは限らない。戦い方次第では勝機を見出し、勝ち点3を獲得できるはず。そういった点でモンバエルツ監督の采配力には期待がかかる。こればかりは公式戦が開幕しなければわからないことだ。
ベンチにはファビオ、三門雄大、佐藤優平、中島賢星、伊藤翔、そして17歳の和田昌士というバリエーションに富んだ名前が並ぶ。苦しい台所事情でも、試合の流れを変える一手があれば1点上回ることは難しくない。秘策を用いる指揮官は、さらなる秘策を持っているかもしれない。
【この試合のキーマン】
MF 11 齋藤 学
「1トップは人生で初めて」
水曜日の練習から1トップで起用されたため日は浅い。準備時間は十分とはいえず、ぶっつけ本番に近い状態で試合に臨む。それまでMFの右と左を務めていた藤本淳吾とのコンビネーションも未知数だ。
それでもマリノスが勝つためには齋藤に仕事をしてもらわないと困る。中村に続いてラフィーニャも離脱し、アデミウソンはまだ来日していない。攻撃陣の駒不足は否めず、齋藤の単騎突破にかかっている。
宮崎キャンプで右内転筋を痛め、今週に入っても序盤は同じ箇所に違和感を訴えていた。しかし現在は痛みもなく、試合に向けて心身ともにコンディションを上げている。「点を取れそうな気がしている」。齋藤の有言実行に期待したい。