「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

中村に続いて、伊藤、矢島が離脱・・・歯車が狂い始めた混迷のなか3バック採用か [1st10節名古屋戦プレビュー] 藤井雅彦 -1,999文字-

 

リーグ戦2連敗のチームは負のスパイラルに見舞われている。結果が出ないチームはテンションが下がり、モチベーションを落とし、次に負傷者が出る。これはサッカーチームの常だ。

3-4-3_2015マリノスも例外ではない。モンテディオ山形戦前日に中村俊輔が右大腿二頭筋を痛め、検査の結果は全治3週間程度の負傷だった。さらに山形戦で伊藤翔が右内転筋痛を訴え、矢島卓郎は左太ももを打撲。好調だった伊藤と、切り札としてベンチに入っていた矢島の両FWを欠いて名古屋グランパス戦に臨む。両者とも重傷ではないためすぐに戦線復帰するだろうが、とりあえず名古屋戦にはいない。

さらに試合前日の練習後、ラフィーニャが太もも裏に違和感を訴えた。中村同様、長期離脱から復帰したばかりの筋肉系の故障である。ラフィーニャのけがの詳細は不明だが、これまでの経緯を踏まえると明日のピッチに立っている可能性は低いだろう。稼働率の悪さはどうにもこうにも不満が残るが、仕方ない。

トピックは負傷者だけではない。明日の名古屋戦、マリノスは[3-4-3]を採用する可能性がある。これは試合前日の練習でいきなりお目見えした布陣で、3バックは中澤佑二を中央に、右に富澤清太郎、左にファビオ。ダブルボランチは中町公祐と三門雄大が組み、右ウイングバックに小林祐三、左ウイングバックに下平匠。前線はラフィーニャを中央にして、右にアデミウソン、左に齋藤学という面々だ。ラフィーニャについては前述したように練習後に痛みを訴えたため、出場回避の場合はアデミウソンが中央にスライドし、右には藤本淳吾か兵藤慎剛が入るのではないか。ちなみに伊藤と矢島を欠くベンチには端戸仁が今季初めて入った。

 

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このシステム変更は名古屋3-4-3、最近続く3バックチームとの相性の悪さを改善するための策で、エリク・モンバエルツ監督は「今後は二つのシステムを使い分けていくことが必要。より高い位置でプレスをかけてボールを奪うために[3-4-3]を試した」と話した。練習を見ている限りでは高い位置から、つまり相手の3バックにプレッシャーをかけ、全体をコンパクトにしたまま最終ラインを高く保つ考えのようだ。局面によっては数的同数で守るところもあり、指揮官が最も注意している裏へのケアが心配である。

というのも3バックについてはプレシーズンから一度も試していない。それをたった1日練習しただけで本番でも採用するのはとてもリスキーなこと。モンバエルツ監督は3バックの採用を明言したわけではないが、4バックでの守りが機能しなかった場合はすぐにでも3バックに切り替えるだろう。メンバーをほとんど変えずに3バックに移行することが可能なのだから、試合開始時ではないとしても3バックが披露される確率はそれなりに高い。

少なからず迷走しているチームにとって大事なのは、内容はどうであれ勝つことだろう。ただし勝つためには内容が必要で、その内訳が戦略でありシステムであり、選手の起用法だ。いったいどこから歯車が狂い始めたのか。それが見えにくい現況は非常に危険ともいえる。どんなにチーム状態が悪くても相手がもっと悪い可能性もあり、Jリーグはどのチームも差はない。ただ、名古屋の不調を願うのはあまりにも情けない。不調のマリノスはいかにして窮地を脱するか、その道筋はいまのところ見えない。

 

【この試合のキーマン】
MF 11 齋藤 学

 どの試合前も、試合後も、齋藤は必ず「自分の調子は良い」と繰り返す。たしかにコンディションは良さそうで、身体的なキレもある。フィニッシュワークの拙さはもともとで(失礼!)、その場面に絡めていることが好調の証だ。得点こそ1ゴールだが、ゴールの起点になる場面はとても多い。
一方で、ここ数試合の齋藤は決定機に絡むことよりもお膳立てを意識し過ぎている感が強い。彼はゲームメーカーではなく、アタッカーのはずだ。相手が最も怖いプレーをすべきだし、味方が齋藤に求めるプレーも高い位置での仕掛けである。どんな調子が良くても、いまのプレーでは誰も認めてくれない。
サッカーは個の集合体が組織となり、チームとチームが対戦する。そのチームの中で自分が何をすべきで、何ができたか。それこそが唯一無二の評価基準となる。つまりチームが求めるプレーで結果を残してこそ、期待に応えたことになる。

 

 

 

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