「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

成長と停滞ののちに -小野裕二と齋藤学-(後編):藤井雅彦コラム

成長と停滞ののちに ~小野裕二と齋藤学~(後編)

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指標は身近にあった

ヴィッセル神戸戦はスコアこそ2-1と最少得点差の勝利だったが、富澤清太郎の退場によって数的不利になってからの終盤の時間帯を除けば、完勝といっていい内容だった。2つのゴールの内訳は富澤のゴラッソ、そしてマルキーニョスの落ち着いたワンタッチゴールである。

先発した齋藤学はというと、チームの中で重要な役割を果たし、しっかり貢献していた。ボールを失う回数が少なく、相手DFの中間ポジションでボールを受けると、スムーズに前を向いて駆け引きを繰り返す。アクション直前に判断を変えることもできており、すると周囲をフリーにする効果も得られた。ただし、前半の15分にマルキーニョスのパスに抜け出した場面では、ドリブルで相手DFをかわしながらもシュートを打てずに終わった。またしてもゴールという収穫は得られなかった。

前記した得点場面を振り返ると、富澤はもともとインステップのロングフィードを得意としている。糸を引くような鋭い弾道で味方の足元にボールを届けられる選手で、その能力がシュート場面で生きた格好である。距離は30メートル近くあっただろうが、40~50メートルのフィードも難なくこなしているのだから大きな問題ではない。ひざ下の振りが速く、素晴らしいミートであった。

マルキーニョスのゴールについては、ゴール前での冷静さがすべてだ。小野裕二との対談で彼らは「マルキは簡単に決めちゃう」と首を傾げていたが、この日も偉大なところを見せつけた。時計の針を巻き戻すと、得点場面以前に金井貢史からの折り返しを一度は外している。シュートは枠を捉えられなかった。しかし二度目を外さないあたりがストライカーたる所以だ。

この2つのゴールは小野裕二と齋藤学に足りないものを示唆している。一つ目は“シュートレンジの広さ”で、日本人全体に共通する課題かもしれない。そして二つ目が落ち着きを含めた“意識”だ。前者に関しては筋力的な問題も大きく、これから急に30メートル級のロングシュートを決めるようになるのは難しいだろう。ただ、そんな距離のシュートを決めるのは日本代表を見渡してもそうはいない。あの香川真司だって、そんな距離からのシュートを決めるのは年間に1本あるかどうかだろう。ならば、後者の面を改革するしかない

 

前へ進むための割り切り

マルキーニョスはシュートを外しても、決して下を向かない。例えば、同じストライカーの大黒将志もすぐに気持ちを切り替えて次のプレーに備える。対して、小野や齋藤は一喜一憂を繰り返す。オーバーアクションで自らのテンションを下げてしまう。

なぜか? 彼らが若くして責任を背負いながら戦っているプレーヤーだからこそである。

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