「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

富樫敬真は日本代表GKとの駆け引きに勝利し、背番号8は別次元のプレーヤーへと昇華した [1st第4節鳥栖戦レビュー]

 

「相手のプレッシャーがあっても、しっかりビルドアップすることが重要だ。ハーフタイムに選手に言ったが、私は完璧を目指している。相手のプレッシャーがある中でも、もう少し展開できなければいけない」

 試合後の会見で、エリク・モンバエルツ監督はそう何度も繰り返し、不満げな表情を見せた。勝利したことを喜びつつも、内容にはまったく満足していない様子だった。この日のマリノスが能動的にチャンスを作った場面はほとんどなかった。前半のシュートはわずかに1本のみ。それに準ずる場面も少なかった。

ただし、ゴールシーンはふたつとも素晴らしかった。富樫敬真は日本代表GKとの駆け引きに勝利し、2試合連続ゴールをゲットした。決勝点となった中町公祐のシュートは、練習でも見たことがない。あの瞬間、背番号8は別次元のプレーヤーへと昇華した。アルビレックス新潟戦での齋藤学のゴールには大きな価値があった。この日のふたつのゴールには価値とともに、見ごたえもあった。

もちろん守備面の奮闘を記さないわけにはいかない。「コレクティブな守備は本当に素晴らしかった。相手にスペースとチャンスをほとんど与えなかった」(エリク・モンバエルツ監督)。ピンチになったのは失点場面も含めてセットプレーが多く、流れの中から崩される場面も少なかった。アーリークロスから富山貴光に決定機を献上した場面は、選手個々の問題である。

 

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 これで4試合連続失点、さらに3試合連続でセットプレーから失点している。この悪い流れはどこかのタイミングでストップしなければならない。特にこの試合では不要なファウルから直接FKを与える回数が多すぎた。失点はシュートが壁に当たり、さらにポストに弾かれて相手選手のところにボールが一尾枯れる不運もあったが、不運よりもファウルでリスタートのチャンスを献上したことを嘆くべきだ。

いくつかの反省材料はあるが、ひとまずは2連勝を飾った。この2試合は選手個々が水準以上のパフォーマンスを披露し、少ないチャンスをモノにする決定力が光った。山ほどあるチャンスのいくつかを決めたわけではなく、相変わらず決定機の数は少ない。アルビレックス新潟戦は相手の退場に救われた側面があり、サガン鳥栖戦の先制ゴールは疑惑の判定でもあった。

ただ、結果として2試合で勝ち点6を獲得したことは大きな収穫である。開幕から4試合を終えて全勝チームがいない今季のJリーグにおいて、マリノスの位置は悪くない。裏返せば、今後どのような状況になるかはまったく予想できない。戦力差は小さく、ほんの些細なことで勝敗が左右される。だからこそ、この2試合で発揮した勝負強さは素晴らしかった。

勝ったからこそ前向きに反省できる。その典型ともいえる2連勝をホームの地で飾った。

 

 

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