「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

マリノスらしい勝ち方は背番号4とともに ・・・この日のヒーローは誰が何と言おうと栗原だ [1st13節神戸戦レビュー]

 

久しぶりに、というよりも今シーズン初めてマリノスらしい勝ち方を見た。昨年まではこういったケースでの勝ち点3がコンスタントにあったと思うが、今年はどういうわけかなかった。ここまでリーグ戦12試合を消化し、そもそも無失点ゲームはスコアレスドローに終わった浦和レッズ戦のみ。そのほかのゲームでは、勝ったとしても失点という味噌がついていた。

 ヴィッセル神戸戦での勝利を語る上で、まず完封したことを記したい。負傷した飯倉大樹に代わってリーグ戦では今シーズン先発となった榎本哲也を中心に、チーム全体が高い守備意識を誇った。それは中村俊輔の「理想には程遠いけど、今日勝ち点3を得るにはこれしかなかった」という言葉通りである。勝つためには汗をかいて守備しなければならない。中村を筆頭に、チーム全員でそのことを体現してくれた。

一方で、攻撃面ではチャンスをほとんど作れなかった。決定機と呼べる場面は皆無に等しく、ゴールを匂わせるシーンはなかった。これに関しても中村の言葉を借りるならば「ボールを持っても距離が遠くて求められるものがすごく高くなっている。無理をしないといけない状況が多い」となる。素早いパス回しで相手を攻略するような距離感ではなく、齋藤学やマルティノスが個の力で相手を一枚、あるいは二枚はがさないと攻撃の糸口を見つけられない状況が続いている。これに関しては日々の練習を含めて修正作業が必要だろう。

それでも、マリノスはゴールネットを揺らして勝ち点3を強奪する術を持っている。言わずもがな、中村を起点としたリスタートである。マルティノスが獲得したFKは、ヴァンフォーレ甲府戦でのゴールシーンと似たような位置だった。中村が蹴ったボールは相手DFや中澤佑二を飛び越え、ゴール前で待つ栗原勇蔵の頭をピンポイントで捉える。栗原にとっては一昨年8月以来久しぶりのゴールとなった。

試合後、栗原は決勝ゴールと完封ゲームという二つの喜びをかみしめながら、言葉を振り絞った。

 

 

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「どんなにヘディングが強い選手でも、いいボールが来ないと点は取れない。シュンさんの得点といっていいくらいのボールだったと思う。久々に点を取ったけど、久しぶり過ぎて喜び方を忘れてしまった(笑)」

「今年は無失点の試合がほとんどなかったし、流れが悪い状況で自分に出番が回ってきて、それでも結果を出さないと生き残っていけない世界だとわかっている。特にウチの場合、DFとGKは0か100かのどちらかしかないようなところもある」

「これまでチーム状態はいろいろあったけど、あまりにも出番が回ってこなかった。出場すればやれる自信はあったし、焦りはなかった」

 すべての言葉に重みがあり、とても感慨深い。昨年、ファビオにポジションを奪われ、以降は中澤とファビオのコンビに大きな問題がなかった。中澤は『鉄人』と呼ぶにふさわしく連続フルタイム出場を続け、ファビオも攻守両面で成長著しかった。客観的に見て、栗原が入り込む余地はなかった。二人の能力が高いことをわかっているからこそ、我慢するしかなかった。

だが、この日のヒーローは誰が何と言おうと栗原だ。マリノスらしい勝ち方は背番号4とともに。6試合ぶりの勝ち点3は、皆にとって最高の勝利となった。

 

 

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