「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

川崎戦での完敗は、大幅なメンバーチェンジを決断させた ・・・移籍オファーの三門は紅白戦出場せず [1st16節大宮戦プレビュー]

 

川崎フロンターレ戦での完敗は、指揮官に大幅なメンバーチェンジを決断させた。前節からフィールドプレーヤー5選手を入れ替えて大宮アルディージャ戦に臨む。

 最初に、左SBに下平匠が帰ってくるのは明るい材料だ。左ふくらはぎ痛でフロンターレ戦を欠場したが、チーム唯一の左利きSBはビルドアップに欠かせない人材である。今週序盤の練習では下平が合流できず、同じ左利きの前田直輝を左SBに入れていた。前田の適性はともかく、このポジションは左利きにしか務まらない。水曜日から合流したため体力面に不安を残すが、経験ある選手だけに心配不要だろう。

その隣には、ファビオが5試合ぶりに戻ってくる。負傷によって先発を外れ、復帰後は栗原勇蔵がまずまずのパフォーマンスを見せていたためベンチスタートだった。しかしビルドアップを強化するのならば、下平同様にファビオも欠かせない。右利きながら左足を巧みに使う球出しは、栗原や中澤佑二よりも上だ。身体能力の高さを生かした守備力も折り紙付きである。

中盤の底には喜田拓也が入り中町公祐とコンビを組む。パク・ジョンスは体調不良のため水曜日以降の練習に参加しておらず、メンバー入りも難しいだろう。とはいえ、このアクシデントがなくても喜田が先発復帰していた可能性が高い。前節の途中出場を見てもわかるとおり、もしチームにアンタッチャブルな存在がいるとしたら、それは背番号28である。

 前線では右MFにマルティノス、1トップとして富樫敬真が満を持して先発する。前者は遠藤渓太と、後者は伊藤翔やカイケ(今節は右ひざ痛で欠場濃厚)とポジションを争っていた。両選手については「別のクオリティを持った選手がチームにプラスαをもたらすという狙いでの起用」(エリク・モンバエルツ監督)と解釈すべきか。マルティノスは齋藤学とともに個人技で違いを生み出し、富樫は決定力で存在感を示したい。

これによって栗原勇蔵や新井一耀、あるいは伊藤がベンチスタートになるが、開幕時点よりも起用できる選手の駒は明らかに増えている。肋骨を痛めていた兵藤慎剛も復帰し、ベンチに戻ってくるだろう。大宮戦を翌日に控え、モンバエルツ監督は「チームとしてのパフォーマンスもそうだが、同時に個人のパフォーマンスもしっかり見て行こうと思っている。いまは全選手が同じ線の上に立っている。あとはパフォーマンスだけが評価の対象になる」とコメントした。今後は各ポジションでさらに激しい争いが繰り広げられそうだ。

そんな折、アビスパ福岡から三門雄大に夏の移籍ウインドーを活用しての獲得オファーが舞い込んだ。木曜日に某スポーツ紙によって第一報が飛び交い、同じ日にスポ-ティングダイレクターであるアイザック・ドル氏と三門自身がオファーを受けている事実を認めた。

 

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2013年からマリノスに所属している三門は所属2年目の昨季、ボランチやトップ下の主力としてリーグ戦32試合に出場した。労を惜しまないプレースタイルが高く評価され、モンバエルツ監督に重宝された。しかし3年目となる今季はここまでリーグ戦3試合の出場にとどまり、喜田や中町、あるいはパクに定位置を譲っていた。ナビスコカップでも右SBに回されるなど、起用法に少なからず疑問を抱いていたのは間違いない。

三門はマリノスとの契約期間を残しているため、移籍が実現するとしたらクラブ間交渉で折り合いをつけてからとなる。もちろん本人の意思も大きく関係してくるが、現在の状況ならば出場機会を求めるのは自然な流れだろう。完全移籍での獲得オファーならば移籍違約金が必要となり、その交渉は主にクラブ間によって行われる。

オファーが明るみとなり、試合前日の練習で三門は紅白戦やセットプレー練習から外れた。これについてモンバエルツ監督は以下のように答えている。

「(三門は)交渉中だ。移籍のことで頭がいっぱいになることは理解している。事前に話して、彼も理解してくれた。それは彼のためでもある。明日の試合(大宮戦)と、日曜日のサテライトリーグ(鹿島戦)にも出ない。ここでけがをしてはいけない。交渉中なのでリスペクトしなければいけない。交渉中にある選手はチームとは別の活動になる。これは欧州でよくあること。移籍の条件にけがをしていないことがあり、ここでけがをすれば話がなくなってしまう。それは彼のためにならない」

 フランス人指揮官はあくまで一般論を、私情を挟むことなく丁寧に話してくれた。これが欧州のスタンダードであり、モンバエルツ監督の方針なのだ。これらを踏まえたうえで、交渉の結末と三門の決断を見守らなければいけない。

 

 

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