「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

次節以降、エリク・モンバエルツ監督が背番号10をどのように起用するか [1st16節大宮戦レビュー]

 

サッカーに同じシチュエーションは二度とない。前節と試合を比較しようにも、すべてが違うから難しい。マリノスの先発は前節からフィールドプレーヤー半分が入れ替わり、対戦相手はポゼッション能力に優れる川崎フロンターレから大宮アルディージャとなり、試合会場は日産スタジアムからNACK5スタジアム大宮に移った。

 まず、能動的なメンバー変更がもたらした効果はそれ相応にあった。最終ラインにファビオと下平匠を加えたことにより、左サイドのビルドアップはスムーズ化する。単純に左足を使えるという事実だけで、ピッチを広く活用でき、ボール回しの精度は大きく変わった。それに加えて中町公祐と喜田拓也のパフォーマンスも高く、ミドルゾーンからアタッキングエリアに入る手前までのボールの動かし方は前節と比べものにならない精度だった。

そして対戦相手がフロンターレであれば、ここまで主導権を握ることはできなかっただろう。大宮は前線からコースを限定するような守備を仕掛けてきたが、マリノスのポゼッションが上回った。その結果、大宮は下がった位置でブロックを作る展開となり、マリノスが押し込む時間が長くなる。

グラウンドの違いに言及したのは中町だ。「日産スタジアムよりも少し狭いグラウンド」と話し、最終ラインを強気に押し上げてのポゼッションが可能になった理由を説明した。ただボールを持っているだけでなく、相手を下げさせるような攻撃という意味で、効果的なポゼッションを実現できていた。

足りなかったのは最終局面でのコンビネーションやアイディアだ。齋藤学が個人技で打開した場面が最大のチャンスだったことが、その事実を如実に表している。クロスに対して複数人が待ち構えていたのは1点のビハインドを追う終盤の話。前半から後半途中までは相手のペナルティエリア内に人数が足りず、分厚い攻撃がなかった。

しかしながら、これはいまに始まった話ではない。

 

下バナー

 

 たった一人ですべてをこなせる1トップがいるわけではなく、選手同士の距離が遠いオフェンス陣はコンビネーションプレーが難しい。そもそも守備のマインドを強く持つマリノスが、一朝一夕でオフェンス面の問題を改善することなどできない。

さて、前記したようにビルドアップで一定の成果を収めた結果、ある選手の持ち味が薄れてしまった。中村俊輔である。最終ラインからのボールが彼を経由する回数は明らかに減り、ビルドアップ時に存在感を発揮できなかった。かといって相手ゴール前に入っていく場面も少なく、中盤を浮遊する時間が長くなる。

中村は両足首に痛みを抱えており、72分に自ら交代を申し出たという。ビハインドの状況でセットプレーのキッカーを失うのは大きな痛手だったが、結果的に交代で入った兵藤慎剛のCKから同点ゴールが生まれるのだからサッカーはわからない。次節以降はまずコンディションに注目だが、エリク・モンバエルツ監督が背番号10をどのように起用するか。興味は尽きない。

 

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ