「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

勝ち点1では物足りない [2nd5節磐田戦レビュー]

 

まずは経験豊富な両重鎮の言葉を借りよう。

「両ワイドの選手にスピードがあって、彼ら(齋藤学、マルティノス)が前を向いて仕掛けると周りは置かれていってしまう。分厚い攻撃ができず、相手にカウンターを食らって、そのあとまたガーッと攻める展開が続く。『行け』と『取られた』の繰り返し」(中澤佑二)。

 この日もチームで最も遅くミックスゾーンに現れたボンバーヘッドは、苦笑いを浮かべながらこう話した。

「もうちょっとチームとして駆け引きとか、ゆっくり攻めることも大事。これを遅攻と言うとネガティブに捉える人もいるけど。縦に速い攻撃で持って行って、次に自陣ゴール前まで持っていかれて、そうすると今度は80メートル先のゴールまで持って行かなければいけなくなる。もうちょっと大人のサッカーをしないと」

 こちらはトップ下に帰ってきた背番号10の言葉である。中澤とは違い、どこか神妙な面持ちに見えた。攻撃陣の一角を担う立場だけに、思うところがあるのだろう。何より、あれだけ縦に速いサッカーでは自身の持ち味が生きない。

とはいえ、である。齋藤とマルティノスは圧倒的なスピードを武器に、殺傷能力の高い武器となっていた。ジュビロ磐田の[3-5-2]システムはサイドにスペースがあり、彼らは守備時に5バック気味になってスペースを埋めようとはしない。相手のウイングバックはマリノスの両SBにプレッシャーをかける戦術で、前方の齋藤やマルティノスにとって仕事のしやすい環境が整っていた。

仕掛けて突破できるのに、それをやめろ、というのは無理難題であろう。突破できなければ彼らも違う戦法を考えるのだろうが、幸か不幸か磐田戦では突破できた。そして実際にチャンスも作っている。

だから仕掛けたあとの仕事を完遂する必要があった。サイドをえぐってからのチャンスは何度もあった。あとはゴール前でフィニッシュ、つまり仕上げの部分のみ。その点で言えば、前半に素晴らしいゴールを決めたカイケの仕事量も十分ではなかった。途中交代について不満げに話したが、交代するまでに複数得点するチャンスも十分にあったではないか。

 

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エリク・モンバエルツ監督は「全体を振り返ると我々がもっと点を取らなければいけない展開だった。3-2か4-2にすべきゲームだったと思う」と話した。2失点を許容しているあたりが結果重視のフランス人指揮官らしい。この理想スコアがチャンスの数に対しての言葉なのは容易に想像できるが、とにかく勝てばOKという思考なのだ。

 だが、それではいけない。もちろんマリノスには2点目、3点目を取るチャンスがあり、決めなければいけなかった。繰り返すが、齋藤やマルティノス、あるいはカイケには何度もチャンスがあった。その一方で、追加点を奪えなくても失点してはいけなかった。オープンな展開になったとしても、ゴール前で守りきるのがマリノスのアイデンティティではないか。失点が相手の素晴らしいミドルシュートだったとしても、失点という事実は変わらない。

チャンスの総数と先制に成功している試合展開を考えたときに、勝ち点1では物足りない。この相手に勝てないのであれば、上位進出は難しく、優勝争いなど夢のまた夢だろう。

 

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