「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

中村俊輔「ファンタジスタの居場所」(1)

 


レギュラー落ちの危機

マリノスに復帰して3シーズン目の秋、中村俊輔はレギュラーポジションを失いかけていた。

インフルエンザで宮崎キャンプに参加できず、フィジカルコンディションが万全でなかった開幕時期ではない。15節の川崎戦で負傷しリーグ戦2試合を欠場した後も、7月14日の18節、G大阪戦から当然のように先発に復帰している。雲行きが怪しくなり始めたのは8月、前半2点のリードを後半に追いつかれドローに終わった22節の川崎戦終了後からだった。

チーム練習の紅白戦で俊輔がレギュラー組から外れ、J1クラブ相手の練習試合で結果を出していた森谷が2列目に入るケースが少しずつ増えた。23節のC大阪戦はチーム全体が守備のモラルを欠き、俊輔もパスミスを頻発しゲームを作れず、0-2で敗れ無敗期間が終了。24節のFC東京戦は齋藤学が五輪終了後、初先発。俊輔は今季リーグ戦では唯一となるベンチスタートとなった。2点をリードされた後半開始から出場したが、流れを変えることはできずチームは連敗。

この時期、俊輔のコンディションが極端に悪かったとは思わない。むしろ負傷離脱から復帰後プレーのキレは着実に回復傾向にあったが、なまじコンディションが上向く中で、それ以上のキレを要求するプレーイメージに身体がついてこず、そのギャップがドリブルやパスのミスにつながっていた印象が強い。

27節の大宮戦、28節の広島戦はトップ下で先発するも、「相手守備ブロックの中でパスを受けない、ブロックの中にパスを入れない」消極的なプレーに終始。いずれもスコアレスドローに終わり、広島戦は今季最速となる72分で途中交代。スコアレスの状況で誰よりも早くピッチを去ることになった俊輔は、試合後にコメントを残さなかった。

そして中3日で迎えるダービー、天皇杯の横浜FC戦前日に行われた20分の紅白戦でのこと。途中から俊輔に代わりレギュラー組のトップ下に入った森谷が、巧みな動き出しでアンドリューのスルーパスを引き出すとGKとの1対1からループシュートを決めて、レギュラー奪取へ強烈なアピールを果たした。

 

ブロックの外側で

樋口監督は今季開幕前の某誌インタビュー記事で、「ボールを持つエリアを10~15m高くする。守備ブロックの外だけで回すのでなく、中にどれだけ入れるかが重要。俊輔はできるだけ前でプレーさせたい。仮に下がってくるようだったら”前にいなさい”と言うつもり」と語っていた。しかし、プレシーズンマッチの栃木戦から俊輔はボールを求めてボランチの位置まで下がり、樋口監督も試合中にとがめることはなかった。

2節のホーム仙台戦に0-2で敗戦後、俊輔は「俺が右で張っていてもボールを触る回数が少ない。バランスを取るために俺が下がってボールをもらうことは、あまりよいことじゃないと監督は感じていると思う。

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