「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

勝っていれば多くの選手がこう言っただろう。「アウェイだけどサポーターが最高の雰囲気を作ってくれた」 [2nd13節川崎戦レビュー]

 

最初に。

試合前、マリノスサポーターが作り出した雰囲気は素晴らしかった。特にゴール裏から発せられた迫力は、ここ最近でもトップクラスだったのではないか。声量はもとより、闘志を前面に押し出した応援と一体感は、まさしくサポートと呼ぶにふさわしい。敗北という結果によってクローズアップされることはなかったが、仮に勝っていれば多くの選手がこう言っただろう。「アウェイだけどサポーターが最高の雰囲気を作ってくれた」と。

 シュートを20本打たれた。被決定機は3失点という結果以上にあった。だが、感じ方は選手それぞれ違ったようだ。中澤佑二が「3点ですんでよかった。ピンチはもっとたくさんあった」と厳しい表情で言った一方で、小林祐三は「1stステージは練度の差を感じたけど、今日は自分たちの良さも出せた」と前向きに話した。同じDFというポジションでもこれだけ違うのだから、中盤や前線の選手の感じ方もそれぞれのはず。

小林の言葉について言及すると、それは主に前半45分間の内容を指している。ポゼッションで後手を踏み、フロンターレにシュートを9本許した。対して、マリノスはなかなかシュートに持ち込めず、わずか2本に終わった。それでも被決定機はほとんどなかった。クロスからDFの連係ミスによって喫した失点はもったいなかったが、少なくとも1stステージのような絶望感はなかった。

守備に軸足を置くマリノスがビハインドで前半を折り返す。かなり厳しい展開なのは間違いなかったが、幸運だったのはリードしているフロンターレが後半に入ってオープンな展開に持ち込んできたことである。4バックに変更してからは両SBが高い位置を取り、カウンターに備えるのはCBの二人のみ。攻高守低の戦い方は、ある意味で彼ららしい。図らずもマリノスの最大の武器である齋藤学とマルティノスのスピードが生きる展開となった。

 

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この時間帯が勝負の分水嶺だった。言わば互いにナイフを突きつけ合っているようなもの。どちらが攻撃をシュートで終わらせ、かつゴールに結びつけるか。シュートに持ち込めなければ相手の反撃を食らう。その繰り返しの中で、マリノスが同点に追いつくか、はたまたフロンターレの勝敗を決定付けるゴールか。結論はマリノスのミス絡みから、三好康児が決めたゴールだ。

 本来ならば、この時点で試合は終わった。マリノスならばしっかり試合をクローズし、2-0の勝利を手にしていたはず。だがフロンターレは違う。2点をリードしてなお、前へ出てくる。結果的にミスも発生し、マリノスは中町公祐と伊藤翔のゴールで同点に追いついた。途中出場の前田直輝や天野純もゴールに絡む活躍を見せ、試合の行方は混沌とした。

しかし落とし穴が待っていた。試合後、珍しく中澤は複雑な表情で振り返った。

「今日の展開なら2-2で御の字だった。そこが唯一、悔やまれる。後ろの選手は2-2でもいいという気持ちがあった。そこで意識が統一されていなかった。そういう声をかけるべきだったか」

 絶望的に思われた2点のビハインドを、9分あったとはいえ後半アディショナルタイムだけで返した。その勢いのまま逆転ゴールを奪いたいという気持ちもあって当然だ。この試合を勝たなければ、2ndステージの優勝争いが苦しくなるという条件も重なった。一方で、中澤のようにこの試合だけを切り取れば2-2は悪くない結果という見方もある。そうなればフロンターレが勝ち点2を落としたということになっただろう。

端的には語れない敗戦だが、そのショックはあまりにも大きい。少なくとも、点の取り合いは分が悪いことは分かっていた。望んでいない打ち合いの末、マリノスは競り負けた。選手たちの奮闘は称賛に値するが、チームが得た勝ち点は『0』だ。その結果、マリノスのリーグ戦は終戦を迎えた。

 

 

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