「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

クラブはすでに水面下で準備を始めている [ルヴァンカップ準決第2戦 ガンバ戦レビュー]

 

第1戦をスコアレスドローで折り返した第2戦は1-1の引き分けに終わった。この2試合を振り返ると、試合内容や個々のパフォーマンスに大差があったわけではない。むしろ第1戦に関してはマリノスが試合を優位に進め、ポゼッションの時間も長かった。対して第2戦はその反対の内容となったが、2戦を合計すればほとんど差はなかった。

 アウェイゴールルールが勝敗を分けた、ということ。このルールを活用して1勝1敗ながら準々決勝で大宮アルディージャを破り、今度は反対にルールに泣いた。大宮はマリノス以上に決勝トーナメントの経験がなく、ガンバ大阪はこれで3年連続決勝進出という事実が示すように、ホーム&アウェイでの戦い方を熟知していた。この経験が巧い試合運びやピッチ上での落ち着きにつながり、明暗を分けた。

何度も書いているように、中村俊輔と齋藤学を欠く攻撃陣はどうしても決め手を欠く。この日も例外ではなく、マルティノスや前田直輝の個人技では惜しくもゴールに手が届かなかった。チャンスは作れてもゴールネットが揺れない。伊藤翔のゴールはストライカーらしさがつまっていた。しかし、このシーンについては偶発的な要素が強く、攻撃の形と呼べるものは皆無に等しかった。

相変わらずウイングの個人技頼みの戦術で、このスタイルが守備を難しくさせている。エリク・モンバエルツ監督は最終ラインの背後を取られないことと、バイタルエリアでスペースを与えない点といったリスクマネジメントについては口酸っぱく言っている。一方で、前線からの守備については整備されていない。攻撃時に両サイドがワイドに開く形では、守備で脇を締められない。個々の運動量も増え、どこかで破綻してしまう。

 

 

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 現行スタイルを貫くならば、さらに強力なウイングが必要になる。齋藤学クラスの選手が複数いなければ成立しないサッカーと言えよう。だが、そんな選手はJリーグにそうそういない。日本代表クラスの選手を獲得するのは、言葉で言うほど簡単ではない。かといって、さらに能力上位の外国籍選手を連れてくるのは、金銭面でも大きなリスクを伴う。

ルヴァンカップが終焉を迎えたことで、リーグ戦に続いて二つ目のタイトル獲得の望みが消えた。残すタイトルは天皇杯のみだが、この結果については来年の1月1日まで見えない。したがって来季の編成とは切り離して考えるべき戦いだ。この結果を待ってから来季に向けて動き出すのは愚策であり、もちろんクラブはすでに水面下で準備を始めている。

この敗北は、2017年に向けたスタートである。タイトルを獲るために何が必要で、どのように歩んでいくべきかを精査しなければならない。監督人事をはじめ、在籍選手の契約更新や非更新、あるいは他クラブからの補強について。ピッチ外がフォーカスされる日は確実に近づいてきている。

 

※諸事情により配信が遅くなりましたことをお詫びいたします。

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