「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

[富樫敬真ロングインタビュー] 理想のゴールは「ペナルティエリア外からDFを1枚はがしてゴール隅にぶち込む、個の力だけで決められるゴール」 [VOL.2]

 

実施日:11月28日
インタビュアー・写真:藤井 雅彦
協力:横浜F・マリノス広報室

 


その男は彗星のごとく現れた。

練習参加から特別指定選手に抜てきされ、初めて起用された公式戦で鮮烈なゴールを決める。活躍が認められてプロ契約を勝ち取り、ルーキーイヤーの今年は五輪代表候補にも選出されるなど一躍、全国区の選手へと変貌を遂げた。

ゴールを決めてチームに貢献したいという思いだけで走り抜けた1年目。シンデレラストーリーを突き進んだ富樫敬真の素顔に迫る。


 

vol.01からの続き

 

――初先発のチャンスが巡ってきたアルビレックス新潟戦(1stステージ第3節・2-1)でゴールを決めたことは、大きなきっかけになったのでは?

「あの試合は緊張でガチガチでした。特別指定選手として途中出場したFC東京戦よりも緊張しました。前日の時点で自分が先発することがある程度分かっていて、準備段階からすごい緊張感が襲ってきました。新潟戦を振り返ると、ゴール以外は何もできなかった。1トップというポジションは守備もとても重要なのに、動き方や連係面を理解していないままプレーしていて…。トップ下のシュンさん(中村俊輔)にはすごく迷惑をかけたと思います。その中でも点を取れたことで良かったですけど…」

 

――緊張するタイプ?

「緊張したのはその新潟戦だけだったと思います。緊張で筋肉が硬くなっている状況で、初めての先発だったのでペース配分も分からない。それと新潟での試合だったので気候的に寒かったことも要因だったかもしれません。いろいろなことが重なって、前半の終わり頃には足がつりそうになっていました。それで案の定、後半の最初に足をつってしまった。マチくん(中町公祐)からは『体と気持ちのバランスが取れていない』と言われました(苦笑)。2ndステージになって、ようやく90分間戦うメンタルとフィジカルのバランスが少しずつ分かってきました。試合に出ていない時期やベンチスタートの時も、日々の練習や居残りで何をすれば良い状態で試合に臨めるかの感覚を掴めてきた」

 

――今シーズンのゴールを振り返ると、ほとんどはファーストタッチが決め手になっているように感じる。

「トラップしてからのゴールに関しては、どれもファーストタッチが成功したという手ごたえはあります」

 

――では、最も手ごたえを感じたゴールは?

「アビスパ戦(2ndステージ第2節・3-0)でのゴールは自分の良い部分を出せた形でした。マルちゃん(マルティノス)、マチくんとパスがつながって自分にボールが来たけど、マルちゃんがボールを持った時点でゴールまでのイメージができていました。そこでマチくんとのイメージが合致して、相手よりも早く動き出すことができた。それとDFが右後ろから来ていることも分かっていたので、逆足でトラップして良い位置にボールを置くことができた。相手の裏に狙うことが自分のストロングポイントで、その形がゴールにつながったと思います。最初の動き出しで決まったかな、と」

 

――ストライカー・富樫敬真の理想のゴールの形は?

「FWとして、自分の力だけでゴールを決めるのが理想。個の力だけで決められるゴールです。僕はその部分が足りない。ペナルティエリア外からDFを1枚はがしてゴール隅にぶち込む、みたいなイメージ。ゴール前に走り込んで味方からのパスを決めるというのは、出し手と自分の関係がうまくいった場合。もし自分が個の力でエリア外から決めることができれば、チームがうまく回っていない状況でも流れを変えられる。僕の今の実力では、チームが良い状況でしかスコアできない。だから理想は自分一人で点を取ることです。流れるようなコンビプレーで決めるのも一つの理想だけど、自分がチームの主力になるためには、個で取るというプレーが必要になってくる」

 

――意外な答えに感じる。

「それができていないから理想なのかもしれないです。今シーズン、自分はエリア外からゴールを決めたことがないですから」

 

 

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