「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「(中村俊輔は)本当にすごい。練習でも全部同じところに蹴る。Youtube でシュンさんのインタビューを見ています」[天野純インタビュー(1)]

 

【天野純選手インタビュー】

実施日:12月14日
インタビュアー・写真:藤井 雅彦
協力:横浜F・マリノス広報室

 

 

プロ3年目の今年、開幕戦のピッチに初めて先発の一員として立った。ポジションは念願のトップ下だった。しかし自身の脳裏には、ほろ苦い記憶として刻まれるゲームに。

それ以降、出番はなかなかやってこない。練習だけの日々に、腐りそうになる瞬間があった。夏には移籍の可能性を模索し、海の外に飛び出そうかとも考えた。

だが、巡ってきたチャンスをようやくモノにする。試合に出続けることで「殻を破った」。さらにリーグ戦終了後の天皇杯4回戦で、見事な直接FKを叩き込んだ。

天野純、25歳。F・マリノスのど真ん中を目指す挑戦が、ようやく始まった。

 

 

――24日に天皇杯準々決勝・ガンバ大阪戦があるけど、その前に4回戦のアルビレックス新潟戦を振り返ってもらえるかな?

「チームとして、前半は相手にかなり押し込まれて、後半に入って少し立て直せたけど、なかなか攻撃に厚みが生まれなかった。自分個人の出来も全然ダメだったので、まったく満足していない。ただ、最後の一発で帳消しにできたというだけです」

――決勝ゴールとなったFKは鮮烈だった。あのFKの軌道や感覚は覚えている?

「しっかり覚えています。ボールをセットした瞬間、自分の世界に入った。シュンさん(中村俊輔)がよく言う“ゾーン”に入った感覚がありました。だから壁との距離も気にならなかったし、あとは壁の中で味方にGKのブラインドになってもらうだけで良かった」

――あのコースを狙うと決めていた?

「決めていました。コースもスピードも完璧でした」

――映像で見返した?

「しました(笑)。試合の日は興奮していて眠れないので、夜に何度も見ました。友だちが観戦に来ていて、ゴールシーンを動画撮影していたんです。それを送ってもらったので何度も見ました。映像を見て感じたのは、ファンやサポーター、そしてスタンドに足を運んでくれた観客の皆さんがすごく喜んでいたということ。すごくうれしかったです」

――あの瞬間、スタジアムの全員が天野純に視線を向けていたと思う。

「その視線を感じてしまったら決められなかったと思います(苦笑)。あの瞬間は、良い意味で何も感じなかった。自然に感じなかったんです。だから自分の中には『もしかしたら決まるんじゃないか』という雰囲気がありました。蹴った瞬間、入ったと思いました」

――練習を見ていると、居残りなどでFKを蹴っている様子はなかったけど。

「これまでは監督やコーチに言われて、試合直前に少し蹴るだけでした。でも新潟戦で決めてからは、毎日キックの感覚を確かめている。もっと上手くなれるという手ごたえと意欲が湧いてきました」

――プレースキッカーとしてのこだわりが生まれてきたということ?

「F・マリノスにはシュンさんがいる。次元が違い過ぎて、自分の中であきらめていた部分があったのかもしれない。でもシーズン後半はシュンさんがいなくて、自分がキッカーを務める場面がやってきた。もともとキックが特徴の選手だったのに、いざ蹴ってみると思うようなボールが蹴れなくてもどかしかったです。そこから修正して、新潟戦でのゴールにつながった。やっぱり一発を持っているのは武器だなと感じた。自分の調子が悪くても、一発決めれば評価は180度違う。チームの勝利に貢献できる武器であると同時に、自分がこの世界で生き残っていく武器になると再認識しました」

――中村俊輔はやっぱりすごい?

 

 

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