「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

若手の勇気を持ったトライと中堅・ベテランの確かな技術。それが絶妙なバランスでマッチ [天皇杯準々決勝 ガンバ戦レビュー]

 

またしても天野純の日になった。4回戦・アルビレックス新潟戦では90+4分に劇的なFKを決め、今度は90+6分に豪快なミドルシュートを叩き込んだ。一度だけでなく二度もチームに勝利をもたらすゴールを決めた。彼にとって大きな自信となり、もう一皮むけるきっかけになるだろう。

 その天野を筆頭に、新潟戦ではいわゆる若手選手が躍動した。25歳の天野を若手にカテゴライズしてはいけないのだろうが、プロ3年目で過去2年の出場試合数を見れば、まだまだ経験が不足している。富樫敬真や新井一耀は大卒ルーキーで喜田拓也と前田直輝は22歳だ。この日のガンバが物足りない出来だったことを差し引いても、彼らが見せたパフォーマンスは明るい未来を予感させるものであった。

カップ戦の1試合だけに過ぎず、長い期間かけて戦うリーグ戦と同列にしてはいけないのだろう。「最初のうちは若手の勢いだけでできる」と実績あるベテラン選手は言っていたことがある。高いパフォーマンスを継続して発揮する。それがいかに難しいことか。だから負傷なくポジションを守り続ける中澤佑二や小林祐三は素晴らしいのだ。

 

 

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ガンバ戦におけるスタメンの平均年齢は26.7歳だった。試合メンバー表を見て気づいたことなのだが、実は理想的なバランスではないだろうか。38歳の鉄人がいるおかげでバラエティーに富んだ年齢構成となっており、おそらく来季の試合でも同じくらいの数字になるはず。数字だけを切り取れば健全なバランスで、それだけではないからチーム運営は難しいのだが…。

 勝ったことで準決勝を戦える。それは担当記者としての喜びだ。ただ、負ければ今季のラストゲームになっていた。仕事である以上、戦前の段階ではすべての可能性を想定しているもの。だが、いざ試合が始まってからはチームが醸し出す絶妙なハーモニーに目を奪われた。若手の勇気を持ったトライと中堅・ベテランの経験に裏打ちされた確かな技術。それが絶妙なバランスでマッチした。

次の相手は世界2位の鹿島アントラーズ。相手に不足なし、とはまさにこのこと。最高のクリスマスプレゼントをくれた選手たちに感謝すると同時に、29日の戦いに思いをめぐらせたい。

 

 

 

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