「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

背番号18の突破力は際立っていた。2017年は遠藤にとって飛躍のシーズンになるかもしれない [タイキャンプレポート(スパンブリー戦レビュー)]

 

エリク・モンバエルツ監督はタイ遠征でのゲームを2試合トータルで考え、選手個々のプレータイムを割り振った。38歳の中澤佑二は当初、2試合目の45分のみ出場予定だったが、結果的には1試合目に45分、2試合目は70分出場。栗原勇蔵の調整が遅れていることが最大の要因だが、中澤自身が元気にフルメニューをこなしているのも起用の背景にある。フィールドプレーヤーでは仲川輝人とマルティノス、あとはユース所属選手を除く全員が2試合合計90分以上ピッチに立った。

 一方でピッチに立てなかったのは栗原、伊藤翔、下平匠、そしてウーゴ・ヴィエイラのフィールドプレーヤー4選手と、キャンプ序盤に張りを訴えたGK杉本大地。栗原と伊藤については昨季からの負傷を少し引きずっているが、ここへきてかなりペースが上がっている。宮崎キャンプ終盤に予定されている練習試合は出場できるはずだ。ウーゴ・ヴィエイラについては時差ボケがひどかったようで、どのタイミングで全体練習に合流できるか。下平はもう少し時間がかかるかもしれない。

試合内容について触れると、このスパンブリー戦で躍動したのは遠藤渓太だった。ルーキーイヤーの昨季からリーグ戦23試合に出場したように、モンバエルツ監督はスピードと突破力を高く評価していた。だが、肝心のフィニッシュゾーンでの精度が足りず、ゴールやアシストは記録できなかった。惜しい場面も複数あったが、記録として残るプレーは皆無。モヤモヤが残るファーストシーズンとなった。

スパンブリー戦に限らず、2日前のバンコク・ユナイテッド戦でも背番号18の突破力は際立っていた。ビルドアップ時に中に入ってボールを受ける技術が向上し、タッチライン際ではスピードの違いで相手を振り切る。文字通りの突破口となっていた。あとはフィニッシュだけ。そして昨季とバンコク・ユナイテッド戦での課題をスパンブリー戦で解消した。「ドリブルを始めたときからシュートとゴールをイメージできていた」という1点目は相手GKのミスに助けられた部分もあるが、これで肩の力が抜けたのか2点目はパーフェクトだった。2017年は遠藤にとって飛躍のシーズンになるかもしれない。

 

 

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新戦力に目を移すと1試合目で仲川輝人のゴールをアシストした扇原貴宏や、右SBとして堅実なプレーを見せた松原健は戦力として計算できる目処が立った。現時点で絶対的なレギュラーになったわけではないが、少なくともポジション争いには加わる。扇原は中町公祐や喜田拓也とは展開力という異なる特徴があり、松原は金井貢史よりもサイズと本職感を持っている。両者とも周囲との共通理解を深めていけば自然とピッチに立つ時間は長くなるはずだ。

このタイ遠征が内々で発表された直後、始動から10日前後で90分ゲームを中1日で2試合行うことに対し、選手からは少なからず否定的な声が上がった。それも当然のことで、負傷のリスクがあったのは間違いない。その不安を払拭したのは日々の集中したトレーニングであり、目の前の試合に全力で取り組む姿勢だった。大きな負傷が出ることなくすべての日程を終え、このタイ遠征は充実の日々だったと言い切れる。

チームは27日に帰国の途に着き、2連休を挟んで30日にトレーニングを再開。31日からは宮崎キャンプに突入する。その頃には最大の懸案事項である齋藤学の去就に結論が出され、残る2枠を埋める外国籍選手も姿を現すだろう。

 

 

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