「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「自分の左足を信じるだけ」 天野の覚悟はできている [総力特集/開幕への期待vol.2:天野純について]

 

 総力特集第2回の題材は、2年連続で開幕戦スタメン濃厚の天野純だ。

 昨年末に行ったインタビューの際には「2017年はマリノスのど真ん中になりたい」と野望を語っていた。経験と実績に勝るベテラン選手がチームを離れ、いよいよ天野の時代が到来するのか。そしてセットプレーのキッカーという重責を背負う胸中は…。


 

苦い記憶がある。ちょうど1年前、リーグ開幕戦の日だ。天野純はインフルエンザで欠場を余儀なくされた中村俊輔の代役としてトップ下でスタメン出場した。プロ3年目にして初の開幕スタメンだった。だが「何もできなかった」と苦い表情で当時を振り返る。61分に交代を命じられ、チームは大事な開幕戦を0-1で落とす。結局、1stステージはその1試合しかピッチに立てなかった。

対照的に、第2節・アビスパ福岡戦で戦列復帰した中村は後半37分に直接FKを決め、敗色濃厚のチームを救った。ベンチメンバーにも入れなかった天野は、ただ映像を眺めることしかできなかった。力の差をまざまざと見せつけられた。その後、ナビスコカップグループリーグには出場したものの、自身が持っている感覚には程遠いパフォーマンスに苦悩する。「あまり思い出したくない。腐りかけていたかもしれない」と試練の時期を過ごした。

やがて苦労と苦悩が肥やしとなり、シーズン終盤にプチ・ブレイクスルーをはたす。天皇杯4回戦・アルビレックス新潟戦で劇的な決勝FKを決めると、つづく準決勝・ガンバ大阪戦でも痛快なミドル弾で勝利の立役者に。リーグ終盤はコンスタントに試合出場を重ね、エリク・モンバエルツ監督にも「いま、とても伸びている選手」と成長を認められた。2016年は始まりと終わりでまったく違う景色が見えた。

迎えた2017年、天野の背番号は29から14に。かつて奥大介や狩野健太といったテクニカルな選手が背負った番号を受け継ぎ、さらなるモチベーションを獲得。20代前半の選手が大半を占めるチームにおいて、今年26歳になる天野は立派な中堅選手だ。試合に出るだけでなく、チームを勝たせる役割を担わなければならない。

具体的に任された仕事は、意外にも攻守のつなぎ役となるボランチだった。モンバエルツ監督は天野のビルドアップ能力を高く評価し、宮崎キャンプの前半の段階で「彼(天野)はボランチとして考えている」と公言。守備意識が向上し、ボールを持てば相手に奪われないキープ力と展開力を有し、さらにチーム屈指の運動量を生かして前線に顔を出せる。そうしたボランチとしての資質を高く評価した。

 

 

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