「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

遠藤渓太のここまでが、すべて順風満帆ではなかった [Lカップ4節 甲府戦プレビュー]

 

 

 ガンバ大阪に0-1で敗れたリーグ第9節から中2日で、今度はルヴァンカップグループステージ第4節・ヴァンフォーレ甲府戦に臨む。ルヴァンカップはここまで1勝2敗でグループ4位につけている。前節のアルビレックス新潟戦で4-1の勝利を収め、未来が拓けてきた。

その新潟戦は、リーグ戦でも主力級のダビド・バブンスキーが先発していた。持ち味のキープ力を生かして全体を押し上げ、サイドアタッカーの優位性を保った。他にもポジティブな要素はあったが、勝利の決め手となる第一歩は一人で時間を作れるバブンスキーの存在だった。

だが今節は第1節・セレッソ大阪戦や第2節・ヴィッセル神戸戦と同じように、直近のリーグ戦から先発11人を総入れ替えする。リーグ戦に臨むチームとはまったく違うと考えたほうがいい。予想フォーメーションのメンバーでポジショニングや連係の確認を行ったのは試合前日のみ。蓋を開けてみなければわからない急造チームだ。

 新潟戦のメンバーを基本とするが、変更点として新井一耀が右SBで先発する。右SBだった遠藤渓太が本職の左サイドハーフに移り、左サイドにいた吉尾海夏が右サイドへ。右サイドの前田直輝がトップ下に入る、いわゆる“ところてん方式”である。スタメン変更はバブンスキー→新井のみだが、4つのポジションの選手が変わる。

ベンチには体調不良から復帰した仲川輝人の他に、ユース所属で2種登録の山田康太と椿直起も入りそう。両選手とも試合前日のトップチーム練習に帯同しており、新潟戦後にエリク・モンバエルツ監督が「今後は山田や椿にも出場機会があるだろう」と話したとおりのマネジメントとなった。一方で新潟戦は途中出場した齋藤学はアウェイ遠征に帯同しない。

たくさんいる若き才能の開花に注目だが、特にFIFA U-20ワールドカップ韓国2017に臨むU-20日本代表に選出された遠藤渓太の名前を挙げたい。

 

 

昨年はルーキーイヤーながらリーグ戦23試合に出場し、その活躍と成長が認められて世代別代表の常連に。昨年から今年にかけて行った強化合宿や海外遠征にコンスタントに招集され、最近の練習試合では数多くのゴールを決めてきた。同代表にドリブラータイプが少ないことも選出の理由になったのだろう。局面打開能力に秀でたプレーヤーとして期待されている。

しかし、すべて順風満帆ではなかった。強い覚悟を持って臨んだプロ2年目は、タイキャンプ中にゴールを決めて一皮むけたかに見えたが、齋藤のマリノス残留によって風向きが大きく変わる。背番号10を背負い、主将も務める齋藤はまさしく“目の上のたんこぶ”だ。ここまでのリーグ戦9試合すべてにベンチ入りしているが、先発はなし。出番がやってくるのも、もっぱら攻撃的にシフトする際の右SBという役回り。悔しさだけでなく憤りを覚える日もあった。

 

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その曇り空は、新潟戦で公式戦初ゴールを決めたからといってすべて晴れたわけではない。代表選出を受けての囲み取材では常に満面の笑みというわけではなく、少なからず鬱憤が溜まっているように見えた。

「最近は同世代の周りの選手がリーグ戦に出始めて、点を取ったりしている。自分もルヴァンカップで初めてゴールを決めることができたけど、もっと結果を出して認めさせなければいけないと思っている」

 無事に代表選出されたことは担当記者として安堵したいが、プレーヤーとして突き抜けるにはあらゆる面で足りない。ゴールという結果も、与えるインパクトも、そして周囲に認めさせる説得力も。

明日の甲府戦でもチームを勝利に導く結果を残すことで、周囲は遠藤渓太を一人前と認めていく。これまでもチャンスは数多くあり、明日の試合も、U-20W杯本番も、すべて勝負の舞台だ。マリノスに必要不可欠な選手になるために、高いハードルを飛び越えてもらいたい。

 

 

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