「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「明日はオレが決めるよ!」 試合前日に取材を行うと、金井はいつもそうやって高々と笑って去っていく [J11節 甲府戦レビュー]

 

最初に、伊藤翔のヘディングシュートはパーフェクトなファインゴールだった。オフサイド判定によって幻のゴールとなってしまったが、おそらくかなり際どい判定である。映像を見返すと疑問符をつけざるをえない判定で、最も悔しいのはもちろん本人だ。今シーズン初ゴールを逃し、この試合のヒーローにもなり損ねた。きっとどこかで報われたとき、彼らしい切れ味鋭いコメントで笑い話にしてもらいたい。

 プレビューでも述べたように、この試合に向けた練習では『シンプル』が強調されていた。それは例えばクロスのシーンにも表れており、中に入れられるタイミングでボールを入れるプレーはこれまでよりも多かった。「センタリングに対して(伊藤)翔が存在感を出していた」というエリク・モンバエルツ監督の言葉通りである。

しかし審判団のジャッジや基準については、もうトレーニングの域を超えている。損する試合があれば、得をする試合もある。リーグ戦34試合で両方の回数を数えたら、ほとんど同じ数字になるだろう。どこか特定のクラブが得をして、反対に損を被るクラブがある、ということはない。特も損も平等下の話なのだ。よって本稿でこれ以上の言及は避けたい。

試合を決めたのはセットプレーで、さらに言うと金井貢史の抜け目なさだった。偶然そこにいたわけではない。彼は常にゴールチャンスを狙っている。ジュビロ磐田戦での決勝ゴールは、巧みなポジショニングから放ったビューティフルゴール。ヴァンフォーレ甲府戦でのゴールは、ゴール前のこぼれ球をプッシュする泥臭いゴール。どちらも同じ1点だ。

伊藤のファインゴールが幻となり、金井の泥臭さが決め手となった。伊藤がちょっぴり可哀想な気もするが、かといって金井の努力を否定するものではない。

「明日はオレが決めるよ!」

 

 

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試合前日に取材を行うと、金井はいつもそうやって高々と笑って去っていく。一度や二度ではない。ほぼ毎回だ。でも、もう2ゴール決めているのだから、決して大風呂敷ではない。虎視眈々と、愚直に狙っている。誰にでもできる芸当ではないのだ。

チームは3連敗中だった。その間は無得点とゴール欠乏症に陥り、選手によっては悲壮感を漂わせる表情もしばしば。何より勝利を欲していた。重鎮の中澤佑二も「負けているチームだからこそ、ホームで何が何でも勝つという最低限の結果。内容面は良くなかったところもあるけど、いまのチーム状況を考えると重要な勝ち点3」と言った。

勝って反省、勝って反省だ。そんなふうにして、若いマリノスは少しずつ前へ進む。強くなったと胸を張れるのは、もう少し先のこと。連敗という暗闇から抜け出す1勝の価値は、これからの自分たちの歩み次第だ。

 

 

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