「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

殴り合いでボルテージが上がるのは後半の後半、つまり終盤戦だけでいい [J14節 川崎戦プレビュー]

 

川崎フロンターレが好調だ。5月はACLも含めて6試合を戦い、全勝だという。その中にはアウェイの鹿島アントラーズ戦も含まれており、昨季チャンピオンを3-0で撃破しているのだから脅威である。エリク・モンバエルツ監督は「客観的に見て、川崎はJリーグで最もプレーのクオリティが高い。チームがフィロソフィとスタイルを持っている」とその実力を認めている。

 言わずもがな、どの相手に対しても攻撃で主導権を握ろうとするチームだ。中村憲剛を中心としたパスワークはリーグ屈指。大久保嘉人が移籍してもチームスタイルに大きな変化はない。新加入の家長昭博や阿部浩之がフィットしつつあり、ほかにも豊富なタレントを所持している。間違いなくリーグトップクラスの矛である。

さて、マリノスはどうやって戦うか。ここまでの戦いぶりを見ていると、個々の総和で勝てる試合は順当に勝ち点3を積み上げてきた印象がある。反対に、鹿島アントラーズやガンバ大阪といった実力上位のチームには勝てなかった。浦和レッズに勝てたのは殴り合う展開に持ち込めたからだろう。

それでもフロンターレと殴り合うのは危険だ。負傷明けの齋藤学が先発復帰し、左サイドのマルティノスからウーゴ・ヴィエイラというホットラインが形成されたとしても、相手のオフェンス力が一枚も二枚も上だ。矛に対して矛を突きつけるのではなく、まずは盾を準備する必要がある。

 

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 ポイントはチーム全体でしっかり守れるか。特に最前線から相手のパスワークを限定する守備が欠かせない。前節の清水エスパルス戦で伊藤翔が負傷離脱した。途中出場のウーゴ・ヴィエイラが2得点して勝利に導いたが、今節の相手はレベルが違う。ここはしっかりとした守備で貢献できる富樫敬真を起用すべきではないか。守備のスタート地点で後手を踏むと、後方部隊だけではしのぎきれない可能性がある。

2列目の配置が変わり、中盤の底は喜田拓也の出場が微妙になっている。天野純と扇原貴宏のコンビが守備でどれだけ我慢できるかも重要だろう。アラートさを欠いてしまえば、たちまち相手ペースになってしまう。そして先制点でも与えようものなら、前に出ざるをえない状況から、さらに失点のリスクが高まる。

この試合には4万人以上の集客が予想され、スタジアムは熱気に包まれるだろう。高いモチベーションとテンションで試合に臨むことになるが、前半は試合をクローズさせたい。殴り合いでボルテージが上がるのは後半の後半、つまり終盤戦だけでいい。90分間殴り合うのはあまりにもリスクが高い。

試合展開を読みながら、効果的なアタックを繰り出し、強者を仕留める。横浜らしくスマートに戦って勝ち点3を手に入れたい。

 

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