「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

キュラソー代表に招集されているマルティノスは、目に見える結果を残して旅立ちたかった [J17節 大宮戦レビュー]

 

前半のシュート数はマリノスが2本だったのに対して、大宮アルディージャはわずかに1本のみ。当然、両ゴール前での攻防も少なく、スリリングな展開には程遠かった。

 それはある程度想定していたことでもある。エリク・モンバエルツ監督は「今日は難しいゲームになるだろうと予想していた」と明かす。中澤佑二は「お互いに前半は我慢して」と振り返った。主導権がどちらにあるとは言い切れず、我慢比べが続く状況のまま前半45分が終わった。

均衡が破れたのは59分。中澤のクリアを受けたウーゴ・ヴィエイラから左サイドを疾走するマルティノスへ。齋藤学が横切るようにダイアゴナルランを仕掛けて極上のスペースを提供すると、キュラソー代表は迷うことなく右足を一閃。利き足とは逆の右足もなんのその、美しいカウンターアタックが決まった。

68分には山中亮輔のファインゴールが生まれる。ボールを奪った山中は自ら持ち出し、得意の左足を振り抜く。「個人的にはミドルシュートを得意にしているので、それがあの場面で出てよかった。力みなくいいシュートを打てた」(山中)。前節の初アシストにつづいて今節は初ゴール。まさしくノリにノッている男と言えよう。

2つのゴールに共通するのは、ラストパスという選択肢がある状況でシュートを選んだことだ。マルティノスがウーゴ・ヴィエイラや齋藤にラストパスを出す可能性もあった。山中がボールを持つと、ゴール前ではフリーになっている選手がいたし、山中自身もクロスを送れただろう。

もちろん、ただ強欲にシュートを打ったわけではない。この試合が終わるとキュラソー代表に招集されているマルティノスはチームを離れる。少なくとも来週末のサンフレッチェ広島戦には出場できず、目に見える結果を残して旅立ちたかったのだろう。

 

 

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山中はチームで最も争いの激しいポジションでプレーしている。大宮戦では下平匠がベンチから漏れるなど、争いは熾烈を極めている。結果が出なければ、すぐに控えに回る他ならぬ本人が想像できてしまう。「ゴールやアシストといった目に見える結果がほしい」と口癖のように言っていたが、それを2試合連続で有言実行するのだから恐れ入った。

   試合ごとにヒーローが変わるあたり、チームとして好循環のサイクルに入りつつある。内容面のディテールについては向上の余地を残すものの、それ以前にメンタル面の充実が大きい。何事も自信を持ってこなさなければ、結果など出ない。何もサッカーに限った話ではない。3連敗時期のチームは完全に自信を失っていたが、いまの選手たちからは試合前から前向きな言葉が多く聞かれる。

前半戦を終えて勝ち点32は合格点だろう。対戦した大宮は決して悪いチームではなく、現在順位は開幕直後の躓きが尾を引いているもの。しっかり組織されたチームはこれから順位を上げてくるだろう。しかしながら、リーグ全体を見渡すと上位と下位の差は大きく、年を追うごとに戦力差が開いているように感じる。

いまはとにかく勝ち点を積み上げたい。次節対戦するサンフレッチェ広島も低迷しているチームの一つ。狙うは6連勝のみだ。

 

 

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