「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

いくつかの実験-藤田と富澤- [練習試合レポート vs 長崎戦]  + インタビュー:「ボランチだけ人数が余っている」(小椋)

【練習試合:vs ヴィッセル神戸(J2)戦】

形式:45分×3本

スコア:0-2(0-0、0-0、0-2)

得点者:126分練習生(神戸)、131分練習生(神戸)

 

【1本目】 【2本目】
【3本目】

キャンプ中の練習試合としては珍しいことかもしれない。前日のV・ファーレン長崎戦、そしてこの日行われたヴィッセル神戸戦と、1本目に並んだフィールドプレーヤー10人はまったく同じ顔ぶれであった。前日まではチームコンセプトの浸透度を確認するための構成と樋口靖洋監督は話していたが、この日の試合後にメンバー編成の意図を聞くと、前日とは異なる答えが返ってきた。

「開幕までの練習試合の数を逆算して考えたときに熟成したメンバーで戦う機会を増やさないといけなかった」

レギュラーを固定し、チームの熟成を図る。勝つためには必要なことだろう。だが、あまりにも早い時期からメンバーを固定することでデメリットも生まれる。主力組に入った主力は自分の立ち位置が明らかとなり、選手によっては慢心が生まれる可能性がある。より競争原理を働かせたい場合は誰がスタメンかわからない状況を作る工夫も必要だ。指揮官の頭の中は誰にものぞかれない。練習試合のメンバーもある時期までは主力と控えを混同させる手段がある。

そのとき気になるのは控え組のモチベーションだ。もちろんリーグ戦開幕が近づくにすれて「色分けされるもの」(樋口監督)である。実力社会なのだから、力のない者にとっては厳しい瞬間がいつか訪れる。ただし、それがあまりにも早い時期だとどうなるか。プロのアスリートなのだから自分自身でモチベーションを上げる必要があるとはいえ、選手も一人の人間でしかない。過去のマリノスを見ても、あからさまにモチベーションを落とす選手は少なくなかった。数名の選手の士気が下がるだけでチーム全体に悪影響を及ぼすことも珍しくない。

今年のチームの場合、戦術の浸透度にさらに大きな差が生まれる懸念もある。長崎戦と神戸戦を見ると一目瞭然なのだが、主力組を担うのは昨シーズンまでのレギュラー選手のみである。唯一、昨年はあまり試合に出ていない小椋祥平にしても、アクシデントさえなければレギュラーだった。対して控え組には新加入選手が多く含まれており、現段階ではコンセプトが浸透していないのは明らか。小さくない“差”がある2つのチームの現状について樋口監督は「ベースの部分については、去年までいた選手たちは分かり合っている。新加入選手は理解を深めつつ、クオリティを高めないといけない」と指摘する。こうして主力と控えを区別していけば、その差はますます大きくなるだろう。主力選手にけが人が出たときを想像するだけで恐ろしい。

そういった事情を踏まえて、神戸戦では2本目の途中までにいくつかの実験がなされた。2本目は1トップに藤田祥史が入り、ボランチは体調不良から復帰した富澤清太郎が中町公祐とダブルボランチを組んだ。富澤は計算できる選手のため、ここでの注目は藤田だった。裏へ抜けかけて絶好機を迎えかけた場面もあったが結果的にはノーゴール。周囲からの信頼を勝ち取るためにも主力組に混ざってのゴールがほしい。だが、得点どころか同じ試合で腰を痛めた模様で3本目に出場できず。「体だけじゃなくて心も痛い」とうつむいて宿舎へ引き上げていった。

藤田に次ぐ実験は、2本目の16分から中澤佑二に代えてファビオを起用したこと

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