「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

一戦必勝を狙っていく中で重要なのは、自ら隙を作らないこと [J27節 甲府戦プレビュー]

 

14試合負けなしのあとの1分1敗により、首位・鹿島アントラーズとの勝ち点差は『10』に開いた。残り8試合で直接対決が含まれていても、かなり厳しい数字である。マリノスが全勝するのは当然難しいが、それ以上に鹿島が約半分の試合を取りこぼすとは思えない。タイトル獲得という観点では、残り試合をできるだけ多く勝ち、鹿島が不可解に失速することを願うしかないだろう。

 ただし2位以下の争いは違う。2位の川崎フロンターレと勝ち点4差、3位の柏レイソルと勝ち点2差である。最近2試合はこの2チームと対戦し、1分1敗と勝てなかった。その差が現在順位にそのまま表れているわけだが、この差ならば分からない。ちなみに4位のセレッソ大阪とは勝ち点で並び、直接対決もある。リーグ戦の上位6チームが天皇杯のベスト8に残っていることを考えると、4位にも大きな意味がある。

一戦必勝を狙っていく中で重要なのは、自ら隙を作らないこと。特に、自滅だけは避けたい。ここまでの努力や成果が台無しになってしまう可能性がある。フロンターレに0-3で敗れたのは現在地だろう。スコアほどの差はなかったが、サッカーの質としては黒星でも仕方ない。柏に追いつかれての1-1も妥当だった。前半はマリノスが圧倒したが、後半は両指揮官の質の差が少なからず出た。失点シーンがやや疑問符の残るファウルとクリスティアーノの直接FKだったから痛恨に感じるが、内容的には痛み分けが正しかった。

この2試合と、そして水曜日の天皇杯4回戦・サンフレッチェ広島戦を踏まえて、今節のヴァンフォーレ甲府戦を仕切り直しの一戦にしたい。120分の激闘を戦ってからの中2日のアウェイゲームは正直ハードだ。さらに対戦相手の性質を鑑みた上で、どのような先発メンバーを選ぶか。シーズン最終盤だからこそ、エリク・モンバエルツ監督にかかる責任は重い。

 

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試合前日の練習を見るかぎり、予想フォーメーションの11人が明日の先発に名を連ねる可能性が高い。広島戦で腰を痛めた齋藤だが「だいぶ状態は良くなった。試合当日はもっと良い状態になると思う」と前向きに話している。柏戦と広島戦でのパフォーマンスはお世辞にも高くなかった。ボールロストが多く、プレーの判断も悪かった。だが、そんなことでベンチスタートに降格すべき選手ではない。試合が始まってあまりにも動きが重ければ話は別だが、まずは先発でチームの先頭に立つ。それが主将と背番号10を引き受けた責務だ。

広島戦でハットトリックを達成したウーゴ・ヴィエイラに関しては、選手が人間であり生き物である以上、守備面での問題に目をつむって先発させるしかないだろう。幸いにして甲府戦では前線からの守備があまり問われない展開が予想される。後方からのボールを引き出す動きの量は増やさなければいけないが、一番大切なゴール前での仕事でフルパワーを発揮できればいい。状況と状態を見極めて富樫敬真にスイッチする役目を担うのは選手ではない。

 最も不安なのは、ミロシュ・デゲネクとパク・ジョンスの二者択一である。柏戦と広島戦にフル出場したパク・ジョンスに対して、ミロシュ・デゲネクは柏戦に出場せず広島戦だけフル出場した。したがってミロシュ・デゲネクのほうが疲労は少ないというのは、あまりにも説得力に欠ける説明である。ローテーションやターンオーバーという用語を安易に使うのは、精神衛生上とても危険だ。何よりもビルドアップでより貢献できるのは間違いなくパク・ジョンスなのだが…。

今季のマリノスは下位チーム相手にしっかり白星を積み重ねた結果、9月終わりになってもチャンスのある位置にいる。その例に従って今節もしぶとく勝ち点3を掴めると思える反面、一抹の不安を残す。今季はこういった記述のほとんどが杞憂に終わってきたが、明日はどうだろうか。

 

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