-F・マリノスでシュートが上手いと思う選手は? : 鈴木「渓太」 杉本&原田「翔くん」 飯倉「コサ(小坂雄樹コーチ)」[F・マリノスGK座談会vol.2]
【F・マリノスGK座談会vol.2】
実施日:11月9日(木)
インタビュアー・写真:藤井 雅彦
協力:横浜F・マリノス広報室
→前回からのつづき
座談会第2回のテーマは、4人の生業である『GK』について。他のポジションと違い、たった1つしか席のないGKは、サッカーにおいてアンタッチャブルな存在だ。
難しいシュートを止めてもなかなか称賛されず、ゴールを許せば非難されることもしばしば。ミスが失点に直結する緊張感と隣り合わせで、そんな過酷な役割を仕事にしている彼らだからこそ見える景色がある。
GKならではのマニアックな視点や思考を、とくとご覧あれ。
――F・マリノスでシュートが上手いと思う選手、苦手な選手はいますか?
飯倉「オレは決まったよ。みんなで同時に言おう」
原田「絞り切れないです…」
鈴木「難しい質問だなぁ」
杉本「決まりました!」
飯「せーの!…」
鈴「(遠藤)渓太」
杉&原「(伊藤)翔くん」
鈴「え、コーチありですか? それなら迷わずシゲさん(松永成立GKコーチ)です(笑)」
飯「あれ?(笑)。じゃあオレは後回しにして、まずは大地と岳が名前を挙げた翔の話からしよう」
杉「翔くんはシュートパワーがあって、テクニックもあります。例えば同じパワーシューターのヤマ(山中亮輔)はシュートに入る角度がなんとなく分かるのでコースを限定できるけど、翔くんは読みにくいです」
原「ティエリ・アンリ(元フランス代表)が得意にしている、左サイドからファーサイドネットを巻いて狙うシュートありますよね? その軌道のボールが一番遠く感じるのが翔くんなんです。他の選手と少し違います」
杉「ボールの置き所が違うんじゃない?」
原「それもあると思います。あとはタイミングとか蹴る瞬間のインパクトの仕方も違うのかなと」
杉「翔くんは体の正面にボールを置くイメージがあるよね」
鈴「オレは翔と高校から一緒にやっているので癖を分かっているつもり。だからシュートが上手いとは思うけど、苦手ではないですね」
――鈴木選手は遠藤選手の名前を挙げていました。
鈴「渓太は、まだシュートの形がないから読めないんです」
飯「足の振りが速いよね」
鈴「そうですね。振りが速くて、でもダフったシュートが来たりする。それって“下手くそ”なんですけど、GKの立場からすると形がないから読みづらい。右足も左足も形がない。僕はそういうタイプが一番嫌です」
杉「そのシュート狙ってないだろ! みたいな感じですか?」
鈴「そうそう。ミートできないでスクリュー回転がかかっていたりする(笑)」
杉「でも足の振りが速いのは厄介ですよね」
飯「コンパクトで速い。でも駆け引きはない。周りからは見えないと思うけど、GKはちょっとした駆け引きをたくさんしている。それがまったく通用しないのは難しいかもね」
鈴「そうなんですよ。あんまり考えていないように感じるから、GKが駆け引きしても意味がない(笑)」
飯「上手いではなく厄介という感じだな。渓太がこれから駆け引きを覚えたらどうなるだろう」
――飯倉選手はあえて小坂コーチでしたね。
原「なんでシゲさんではなく、コサさんなんですか?」
飯「シゲさんのシュートは何千、何万も受けているから、もうお互いの手の内は知り尽くしているんだよ。でもコサはそこまでの本数ではないし、たまに新しいシュートパターンを持ち込んでくる(笑)。プレミアリーグなんかの海外サッカーを見て研究しているらしい。だから心理戦という面も含めて、コサかな。でも、普通にキックが上手いのはやっぱりシゲさんが一番だよ」
鈴「本当に上手いです。自分の弱点を知られているのもあるけど、タイミングもコースもすごい」
飯「オレは一緒にプレーした選手ではシュンさん(中村俊輔/現・ジュビロ磐田)が抜けてすごいと思った。岳はシュンさんを得意してなかった?」
鈴&杉「マジ!?」
原「そんなことありませんよ! ただ、得意ではないですけど、意外と止めていたかもしれません」
飯「うん、止めていた印象があるよ。シュンさんは球種の多さや見ているところ、駆け引きのすべてでレベルが違う。この前のジュビロ戦も、FKの場面で壁の下を通してきたり、角度のないところからニアサイドを狙ったり。シュンさんは日本一上手いと思う」
原「大樹くんも言っていましたけど、シュンさんのシュートはいろいろなパターンがありました。形も入り方も種類も。だから予測できません」
飯「駆け引きがハマれば止められる確率は上がるけど、それがハマらないとだいたい決められてしまう。今のチームで駆け引きが意外と上手いのは(金井)貢史とかかな」
杉「貢史くんはよくGKを見ていますよね」
鈴「(下平)匠も上手い」
杉「匠くんもGKをよく見ているからやりづらいです」
原「貢史くんはトゥキックで狙ってきたりするのでまったく読めません」
杉「二人ともパワーはあんまりないですよね」
鈴「ちょこまかしている印象(笑)」
飯「そういう意味では大地が言っていたように、翔はパワーシュートも打てるから駆け引きの時に選択肢が多くて嫌だよな」
――では、皆さんはが目指すGK像を教えてください。
鈴「じゃあ岳からお願いします」
原「僕はチェフ(アーセナル)やデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)のようなクラシックタイプのGKが好きです」
杉「シュートストッパーみたいな?」
原「そうですね。少し前の時代だとデンマーク代表でプレーしていたピーター・シュマイケルみたいな選手です」
飯「欧州クラシックGKだ。次は大地かな?」
杉「僕は攻撃の組み立てにも参加したいし、積極的にゴールマウスを飛び出していくプレースタイルが理想です」
鈴「アクティブなGKだね」
飯「どちらかという南米スタイルということだな。大地はノリもラテンだし(笑)」
杉「たまに大きなポカをやってしまいがち(笑)」
飯「どちらかというとオレもそっちタイプか(笑)」
杉「京都サンガ時代に、雨が降っている日にゴールマウスを飛び出して捕球したら、そのまま滑ってエリアの外に出ちゃいました」
原「ハンドですか?」
鈴「うん、ハンドだろうな」
飯「それは新しい(笑)。じゃあ彩貴は?」
鈴「僕は必要なければあまりゴールから出なくてもいいという考えでプレーしています」
飯「オレや大地が不必要に飛び出しているように聞こえる(笑)」
鈴「いえいえ(笑)。僕の場合は身体能力が低いので、それをやると判断ミスで悪い方向に出ることが多いと分かっているんです」
杉「失点した時に一番見栄えがいいのは彩貴くんですよね。『何をやっているんだよ!』みたいなことはない」
飯「彩貴が北九州でプレーしている時の試合を見たことがあって、めちゃくちゃシュートを止める印象あるよ」
鈴「それは被シュートが多くて自分が当たっていた試合だと思います。個人的には安定感を求めていきたいです」
原「たしかに彩貴くんは安定感あると思います」
飯「人間的にも安定しているよ」
杉「変人ですけどね」
鈴「いやいや、だからオレが一番平均的な人間だってば!(笑)」
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