赤鯱新報

【特別コラム】ファン感謝イベントで撮っていた、一枚の写真に添えて。

クリスマスイブに千葉和彦の新潟への移籍が、そして今日12月28日には長谷川アーリアジャスールの町田への移籍が発表になった。その瞬間、何となく使わないでおいた一枚の写真のことを思い出したので、ここに簡単ではあるが何か書きたいと思う。

写真は12月20日、ファン感謝イベントの際に撮影したものだ。場面はグランドフィナーレ後、選手たちが舞台から去っていく最後の最後である。恐らくは観客席に共通の知り合いを見つけたのだろう。アーリアが千葉を呼び止め、観客席を指さす。その姿は2020年最後の“お勤め”を終えた清々しさとともに、どこか名残惜しさを感じたものだ。彼ら2人はイベント中、対抗戦を行なうそれぞれのチームのリーダー格として常に積極的にマイクを握り、盛り上げ役に徹していた。普段から彼らはそういう人間だったが、この時は特に気合が入っていたように思える。

二人の素晴らしい人格者が移籍してしまったことは、来季のチームにとってはとても大きな損失になる。コミュニケーションにかけては右に出る者がいない、フレンドリーな大人である彼らの周りには常に会話があり、笑いがあり、真面目なサッカーの話があった。全てを飲み込み、懐の深さをもってチームを俯瞰していた千葉に比べると、3歳年下のアーリアはたまに愚痴っぽいことも呟いたが、それもすべては反骨心の表れだったと今は理解できる。現状をどうにかしたい、そのもがきが口を突いて出る。そして練習に打ち込み、誰よりもストイックに打破への道を見る。千葉もそうだ。J1リーグ通算349試合出場からのあと一歩、その足踏みは約2年続いている。しかしサッカーへの向き合い方は不変だ。風間八宏前監督も認めたキックの名手は、その真摯さと面白さでもって、新天地でもう一花、百花くらい咲かせてくれるだろう。

とりとめがないのでこのあたりで終える。千葉、アーリアとのコミュニケーションは楽しかった。選手と記者、という以上に純粋な会話ができた気がする。もちろん他の選手になかったわけではなく、それでも彼らの気持ちは心に響いた。新潟と町田は良い補強をしたと思う。日々発信される情報の中に、彼らのようなプロフェッショナルの言葉や姿が含まれているのだから。コミュニケーションの巨匠ふたりとの別れは、まったくもって寂しい限りである。

reported by 今井雄一朗

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ