【サッカー人気3位】なぜ「11人の山賊」は消されてしまった…

赤鯱新報

【クラブニュース】G大阪との第11節が中止に。チームは急きょ公開練習を行ない、サポーターにせめてものおもてなし。

本日開催されるはずだった前倒しの第11節、G大阪戦は相手の選手4名、スタッフ1名に新型コロナウイルスの陽性判定が出たことにより中止が決定。試合前の豊田スタジアムは既に大勢のサポーターが詰めかけており、リリースより早く拡声器などを使ってのアナウンスがけたたましく流れる一種独特の雰囲気があった。その後、チームは急きょスタジアムでの試合メンバーによる練習開催を決定し、それを来場者に公開することも合わせて決定。今季、いまだ一度も行われていない一般客への練習公開という“サービス”により、チームはサポーターへの穴埋めをした格好だ。

練習に参加したのは予備のメンバーを含めたフィールド18名と、ランゲラック、武田洋平のGK2選手。フィールドはDFから丸山祐市、中谷進之介、木本恭生、藤井陽也、吉田豊、宮原和也、森下龍矢、MFは米本拓司、稲垣祥、長澤和輝、阿部浩之、FWが柿谷曜一朗、齋藤学、山﨑凌吾、シャビエル、前田直輝、マテウス、相馬勇紀と言う顔触れだった。この顔触れの中で誰がスターターだったのか、という部分は想像するしかないが、練習開始前にフィッカデンティ監督が長澤と談笑していたあたり、彼には初出場のチャンスだったのかもしれない。

練習はキャンプで見た流れとほぼ同じだった。ジョグで身体をほぐし、ストレッチ、全身運動と流れて徐々に強度を上げていく。購入したチケットの座席からその姿を見つめたサポーターたちはもちろん声を上げることはなかったが、これが今年初めて生で選手たちを見た方もいたはずで、その視線がピッチにくぎ付けになっていることはその空気感だけでも伝わってきた。

練習はボールトレーニングから本格化。バリエーションをつけた対面パスが始まると、選手たちは活き活きとした動きを見せ、心なしか楽しそうな雰囲気も。観客のいる前での練習は昨年9月16日のファンクラブ限定イベント以来である。ロングボールを地面に落とさずにさばく柿谷のテクニックに唸った人は手を挙げてほしい。筆者は唸った。うますぎる。それが終わると選手はピッチ中央に集まり、そこに小西工己社長も駆け付けて一度場内にアナウンスが響く。スタジアムDJが伝えたのは、「選手はなるべく皆さんの近くで姿を見せたいということで、ピッチいっぱいを使って練習をします」との内容。普段はできない写真撮影、動画撮影、SNSへの投稿も許可されるという大盤振る舞い。キャプテン丸山祐市はじめ選手たちも、フィッカデンティ監督も、なかなかに心憎い演出をする。

そして始まったのはポゼッションゲームだ。9対9なのでポジションはあってなきがごとし。メンバー構成もシャッフルで、相馬がサイドバックのようにポジションを取ったり、双方が3トップのような配置をとったりと、これはこれでの楽しみ方も多い。夜の豊田スタジアムはかなり冷え込みもしたが、選手たちはメニューを終えるごとに軽装になっていく熱さ。あっという間にこの日の仕上げ、ハーフコートゲームにたどり着くと、GKを合わせた10vs10の実戦形式の幕が開けた。

前田の思いきりの良いシュートから始まったゲームはその反撃で抜け出した齋藤のシュートが決まっていきなりの先制。齋藤も役者で両手を拡げたゴールパフォーマンスを見せると、スタンドからは拍手が起こった。もちろんこれはエキシビションではなくれっきとした練習である。選手たちの声は激しく、熱く、本気のぶつかり合いが豊田スタジアムのピッチに響く。ゲームではシャビエルのスルーパスに抜け出した相馬のクロスを阿部がプッシュしたり、ショートカウンターの形で前田が抜け目なく決めたり、もちろんランゲラックの好セーブもあり、とこれまでの練習よりも華やかな印象に。やはり彼らはプロである。多くのファンに見られていることで、気合も入ればプレーにキレも増すということか。

ただ、それらのゴールの後は今度は集中力の高まりからか、かなり拮抗した展開へとミニゲームは進行していった。人数は少なくても、守るべき場所は締められ、狙うべき場所を狙う。強度は上がり、コンタクトもかなり激しくなって、試合は白熱していった。ここで面白かったのは、1本目から2本目に切り替える時、ハーフコートの位置取りを逆サイドにしたこと。「なるべく近くで見せたい」という配慮の細かさには感心するばかりである。集中と闘争の10対10は熱を増し続け、相手のミスを逃さず決めた米本のゴールしか“後半”に得点シーンは生まれなかった。調子の良さを感じたのは長澤、相馬といったあたり。阿部も小気味よくプレーし、状態に何ら問題のないことを見せてくれた。そして守備の構成の速さに改めて驚いた。ミックスされたメンバーでこれだけの統制を取れることに、チームの練度を感じた。

そして練習開始から1時間10分、19時ちょうどにトレーニングが終了。かなりの冷え込みになっていたスタジアムだけに、チームは手早く集合を締め、それから場内を一周してサポーターたちに挨拶を行なった。運営的にもかなりのバタバタだったであろう当日の流れの中で、これだけの演出をするのだから大したものである。ファミリーたちへできる限りの敬意を払い、楽しんでもらえるようにトレーニングの構成も考えた。公式戦には敵わなくとも、愛情のこもった公開練習には、観客席からも温かい拍手が贈られていた。きっかけは残念なものではあったが、ひょんなことから生まれたサポーターたちとの触れ合いの場に、チームは新たな力をもらったに違いない。

reported by 今井雄一朗

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