赤鯱新報

【赤鯱探訪】中村直志編① 「当時の自分は、見識を拡げたい気持ちが強かった」

名古屋グランパス スクールコーチ
中村直志
(2001~2014 名古屋グランパス所属)

今回はやや変則的な形でお届けする。2014年限りで現役を引退し、その後はクラブに社員として残った中村直志さんが、今年から指導者へと転身した。引退当時は指導者への興味はないと言っていた彼にどんな心境の変化があったのか。それはぜひとも聞きたいことだった。そこで間もなく開幕するAFCチャンピオンズリーグの出場経験も豊富な中村さんに、“探訪”としての引退後のこと、そして自分たち以来のACLを戦う後輩たちへのエールについて伺おうというのが今回の趣旨。気づけば名古屋グランパスのことを誰よりも知る存在になりつつある“背番号7”は、選手時代よりも饒舌に、充実のセカンドキャリアを語ってくれた。

Q:まずは現在のスクールコーチに至るまでの引退後のキャリアについてです。最初はホームタウン担当でしたが、その頃は指導者への興味はなかったと記憶しているんですが…
「そう、なんですよね(笑)。ずっと選手の時は現場でやっていて、グラウンドの上が常という感じだったから、もっと自分の見識を広めたい、環境を変えたいという想いがずっと、現役の時にはあったんです。その中でまあ、最初は事業の方を見たいと思って。その考えの中では指導者という選択肢はなくてですね、ちょっと現場を離れたい想いの方が強くて。その頃は“事業”の中に何があるのかわかっていなかったですし、だから事業の仕事をして、その後は強化部で、アカデミーに異動して。アカデミーの中ではスカウトをやっていたので、自分のチームのコーチや、県内、県外の町クラブのいろいろなコーチたちを見ることになって、非常に面白い、魅力ある仕事だなと徐々に、徐々に思い始めたんです。そこで少しずつ心境の変化というかが、あったんです。そうなってからはスカウトから、指導者の現場を見てみたいなという想いで、クラブと話したところ、アカデミーという選択肢もあったんですが、いきなりそこではなくて普及の一番原点のところを、いろいろなカテゴリーがあるスクールを見てみたいなと。それに、これでスクールを見ることができれば、そこまで深くはないですけど、グランパスのほとんどの部署を、事業系、アカデミー、選手、スクールとすべて見ることになる。そこに自分の指導者としての勉強、一番はそこですけど、それもできるという。何事もやってみないと分からないので、スクールがどうなっているのかとか、指導がどういうものなのかとか、いきなりアカデミーというよりも、スクールというところに身を置きたいなということをクラブに伝えたところ、こういう流れになったというのがありますね」

撮影:2015年

Q:中村さんの意志でスクールコーチになりたいと伝えたのですね。
「うん、そうですね。クラブからの要請ではなく、おそらく何も言わなければそのままスカウトだったのではないかと思います。そこはわかりませんけど」

Q:指導者に興味を持つきっかけなどはあったのでしょうか。
「徐々にという感じですね。いろいろな指導者を見てきて、自分の経験を活かせるのはどこだろうと考えていたこともあったし、そこを見ていないのに何も言えないなと思ったところもあったし。指導者をやっておく方が、他のことをやるにしても見識が広がるなと思ったんですよね」

Q:最初の事業部も希望されたことでしたが、強化部やアカデミーの時はどうだったのですか?
「そこは自分の意志というよりは、クラブ内での異動という感じでした。今回と事業の時だけですね、希望を伝えさせてもらったのは」

Q:ただ図らずもおっしゃる通り、これでグランパスの主要なものにすべて携わることにもなっています。
「そうなんです。全てを見られている。スクールは本当に幼稚園から中学生まで関わりますし、その他にもいろいろなものを見ることができました。まあ、まだ見ている途中なんですけど」

Q:事業、強化、アカデミー、そしてスクールと渡り歩いてきた中で、自分がそれぞれの“部署”で得られたものがありましたか。
「もう本当にその場その場の人間関係というか、例えば事業であればホームタウン担当だったので市役所の方たちであったり、商店街の方たちであったり、サポーターの方たちであったり、いろいろな企業の方たちとも仕事をしました。僕が元選手だということで営業の方たちと営業回りをしたこともあったし、その中ではいくつもの人脈もできました。強化部では仲介人の方たちと話すこともして、海外にスカウトに行ったりもして、そこでブラジルならブラジルの代理人や選手とのつながりもできた。本当に多岐に渡りますね。アカデミーでは中学生年代の町クラブの方たち、指導者、スカウトした選手の親御さんもそうですね。スクールは始まったばかりですが、スクール生の親御さんともたくさんのコミュニケーションを取りますし、実務もあって指導ももちろんある。その場その場の人間関係がある中で、それぞれの仕事の進め方などを学びましたね」


Q:見識を拡げたいという想いもそうですが、そもそも中村さんが人と話すのがとても好きな人で。望むものがいつもあったんですね。
「最初は何もわからないまま入りましたけど、やっぱり人と人のつながりだなっていうのはどこに行っても感じますし、そこは一番大事だって感じています。人にすごく恵まれているなと自分は感じてもいて、自分が普通に生きていたら出会えないような人たちとも出会えたと思っているし、深い話もできたし、すごくいろいろな仕事を経験したので、そこはすごく僕の財産というか、プラスになっている部分です」

Q:この経験は貴重だったなって、思い出せることはありますか。
「そうですね…事業系の仕事ではグランパスの社員の方たちと仲良くなれたこと、そこが一番大きいです。普通に選手やスクールコーチをしていると、あまり社員の方たちと仲良くなったりというか、話すこと自体が少ないんですけど、そこの人間関係を築くことは僕はできていたので。そこは良かったと思うことですし、どの部署でもそれはありますよね」

Q:ただ強化部はなかなかやろうと思ってもできない種類の仕事ですよね。選手としてある程度知っていた部分はあっても、知らない仕事もたくさんあったのでは。
「ありましたね。選手はどういう風にスカウトして獲得するのかとか、いろいろな人間関係も大事で、難しいところも多かったです」

Q:確かシャビエル選手などは中村さんがトップの強化部にいた頃に獲得した選手ですから、関わりも深いのでは?
「ブラジルに行って、見てきた選手の一人ですね。直接試合を見て、本当に良い選手と思いました。その時チームはJ2で、ここから順位を上げていかなければいけないという時期で、彼みたいな選手が欲しくて、そこが一致したという仕事でした」

Q:シャビエル選手も日本でのプレーが長くなりました。ブラジルで見た時と今とで彼の変化を感じたりはしますか。
「日本で長くプレーしてくれているのは本当に嬉しいことです。ただ僕の中ではまったく変わっていないし、今は出場機会が限られているところもありますが、ポテンシャルはまだまだあると思っています。もっと力を出せると思っている部分もあります。J2からチームを昇格させてくれた時のように、もっと躍動してもらえたらとは思うし、ただチームによっていろいろな事情はあるから、彼も考えてやっているとも思います」

Q:J1昇格の原動力になった選手を自分のスカウトで連れてこられたというのは、他の仕事とは違う手応えもあったのでしょうか。
「僕が決めたわけではないし、あくまでチーム全体で決めたことですが、僕が見た選手がピッチで活躍して、サポーターの方たちが喜ぶ姿を目の当たりにする。その変化というか、反応はすごかったので、それは正直嬉しいことでしたし、単純に“すごいな”って思いました。ただその反応の大きさでは比べて小さかったとしても、自分が通ってスカウトした中学生の選手に、グランパスを選んでもらえた時には、それ以上の喜びがありましたね。そこは本当に、人間関係として自分がグランパスの窓口なので、自分を通してグランパスを良く思ってもらえて、入ってくれたということにはすごく充実感がありました」

②へ続く

reported by 今井雄一朗


【お知らせ】この夏、名古屋グランパスOBが“短期集中講義”を開催!

アカデミーコーチ監修・ミッドフィルダーコース
~ 吉村圭司・中村直志からMFの真髄を学ぶ ~

<日程>
8/19(木)・8/20(金)
※2日間コース
※小学3,4年生 – 9:00~10:10
※小学5,6年生 – 10:30~11:40

<会場>
愛知県口論義運動公園

<受付URL>
https://nagoya-grampus.jp/news/school/2021/06192021-50.php

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