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栗原貴宏「手術をしても、これだけできるんだと証明したい」【コラム・無料記事】

 

長年の痛みから解放された

この取材をしたのは911日。前日に退院して栃木に戻り、やっとチームに合流した日だ。今はまだ、チームメートとは別でリハビリを続けるが、術後の経過は順調のようで、「自分で動いている感覚も想像していたよりもいいです」とホッとした様子で話してくれた。何より、朝起きた時にベッドから立ち上がれないほどの状態だった、あの長年の苦しみから解放されたことで、気分的にも楽になっているようだった。

「今は、奈良の病院から最低限これはやっておきなさいと言われたバランス系のリハビリを続けています。あとは外部でリハビリを見てくれる人がいるので、そこに週に2回通ってメニューを作ってもらい、それをこっちでやっています。そのほかにもチームのストレングスコーチにお願いしてウエイトトレーニングや、AC(アシスタントコーチ)にお願いしてバスケットに関してできる範囲で取り組んでいます」

 ケガに悩まされた昨シーズンだったが、栗原はこの1年をどう受け止めているのだろう。

1シーズン通してプレーできていないので、何んとも言えないという感じですね。初めての移籍だったし、左足の痛みもあって、自分の納得のいく動きができませんでした。それをどう解決するかというと練習するしかないんですけど、やっぱり足が痛いのでなかなか思うようにできませんでした」

でも、無事に手術を終えた今、このまま順調にいけば、以前のようなプレーが可能になるはずだ。

「僕の中では、痛みさえなければディフェンスもオフェンスも、もっとできるという自信はあります。昨シーズンは、チームとして悔しい負け方をしたので、今シーズンは全員そろって戦って3シーズンぶりの優勝を目指したいですね」

 

絶対に戻ってやる!

手術をしたばかりの頃は、気持ち的にも落ち込んでしまい、バスケの動画は観たくないなと思う時期もあったと言うが、次第に歩けるようになってくると、バスケの映像を観ながらリハビリをすることも多くなった。バイクを漕ぎながらブレックスの試合を観たり、代表の試合を観たりもしたが、試合動画を観ていると、「あ~、自分もこういうプレーがしたいな」という気持ちが自然に湧いてきたという。

「絶対に戻ってやる! という気持ちが湧いてきて、それがモチベーションになって頑張れました」

SNSでもファンの方がやさしい言葉を掛けてくれ、「そうした励ましの言葉に心底救われました」と感謝の言葉も口にする。

 大きなケガと手術を乗り越え、長年の痛みから解放された栗原は、今は憑き物が落ちたように前向きなパワーであふれている。この様子ならコートに戻って来る日も、そう遠くはないだろう。

最後に、今シーズンの目標、テーマとして掲げるようなものはあるか? と聞くと、笑顔でこう答えてくれた。

「八村塁くんが、NBAのドラフトで指名されて日本のバスケ界の歴史に名を刻んだので、僕は医学界の歴史に名前を刻みます(笑)。こういう手術をしても、これだけできるんだと証明したい。…どこに名を刻んでんだって話ですけど(笑)」

 

 

 

 

取材を終えて…

手術をしたというのは聞いていたのですが、ここまで大変な手術とは知らず、話しを聞きながら驚くことばかりでした。長年苦しんできた痛みから解放されて、本当に良かったなと思うのと同時に、手術はかなりの決断が必要だっただろうなと感じます。それにしても、長い間、そんな痛みを抱えながらプレーしていたとは…。

選手の皆さんも人間ですし、いつも健康で、(もちろんメンタルも含め)万全な状態で試合に臨んでいるとは限らないわけで。大なり小なり、みんなそうした事情も抱えながら、それを微塵も感じさせず、言い訳もせずにプレーしているんだろうなと、あらためて感じました。

栗原選手の1日も早い復帰を、心から楽しみにしています!

ぜひ、医学界の歴史に名を刻みましょう(笑)!

 

 

 

 

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