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佐々宜央AC「まだまだこのチームには余白がある」インタビュー前編【無料記事】

宇都宮ブレックス 佐々宜央AC(写真右)

 

シーズンが終了して1カ月が経ち、東京オリンピックに向けたバスケットボール男子日本代表 内定選手12名が発表される中、このサイトでは、まだまだ2020-21シーズンの振り返りを続けております。今回は、佐々宜央AC(アシスタントコーチ)に話しを聞きました。とても興味深い内容なので、極力省くことなくお届けしたいと思い、2回に分けて掲載いたします。まずは前編をご覧ください。(文・藤井洋子/写真・山田壮司)

 

一人一人が役割に徹することができた

―シーズンを終えて少し時間が経ったところで、あらためて2020-21シーズンを振り返っていただけますか。

シーズン開始時に、「こういうチームになれたらいいな」と思っていたチームにはなれたなというイメージです。もちろん完成形ではありませんが、一人一人が役割に徹することができたと思います。最後に結果を残せなかったことは悔しいですが、総合的に見ても評価できるシーズンだったのではないでしょうか。

 

―レギュラーシーズンは4911敗という安定感のある戦いぶりでした。レギュラーシーズン1位の意味についてはどのように捉えていますか。

1位を取れたことは良かったと思いますが、ほかのチームの外国籍選手の合流の遅れやコロナウイルスの影響などを踏まえると、本当に東地区で1位だったと言い切れるのかは分からないですね。

2019-20シーズンは、コロナの影響でうちが1試合少ない状況で2位に終わってしまいました。その経験を活かし、今シーズンはどんな状況でも勝ち続け、1位になることを意識して臨みました。そのことについては、どのチームよりも意識が高かったと思いますが、ギリギリで勝ったゲームや負けてもおかしくないゲームもあったので、すごく満足しているかというと、そうではないという印象です。

 

―今年の2月頃にお話を聞いた際、「川崎ブレイブサンダースに勝てるようなチームだったら今シーズンは結構いける思う」と話していました。レギュラーシーズン(RS)の最後は川崎に2連敗してしまいましたが、チャンピオンシップ(CS)では勝つことができました。この結果についてはどう受け取めていますか。

RSの最後に2連敗して、天皇杯でも負けて、言ったら3連敗しているわけです。さすがにこのまま大きな変化もせずにいったら、また同じような感じでホームで負けてしまうという危機感は、竜三さん(安齋HC)の中でもあったと思います。

僕の中では、こういうやり方をしたら勝てるなというイメージがずっとあり、それをCSに向けてやっていったらたまたまハマった、イメージ通りにいった、という感覚です。恐らく10回対戦したら何回かは勝てる、それぐらいの感覚でした。当然、千葉ジェッツにも負けるつもりはありませんでした。

 

―その時におっしゃっていたのは、「追い込まれた時に、個人に走ってしまうことが多くなるので、熱くなる気持ちをどう捌けるかが重要」ということでした。

今、その言葉を聞いて、自分はさすがだなと思いました(笑)。

ファイナルの3戦目の4Q(クオーター)は、そういう形になってしまいましたよね。疲弊していますし、勝ちたいという欲と、やらなきゃという気持ちで個人に走ってしまい、ボールが動かず11で打開しようとする時間帯が多かったように思います。でも、それはどこのチームでも起こり得ることです。

ブレックスの今シーズンのマイナス点があるとすれば、シーズン通してあまり接戦のゲームがなかったことかもしれません。大差で勝つか、大差で負けるという試合がほとんどで、ギリギリで勝つような展開があまりありませんでした。

それがどう影響するかというと、リードしている状況であれば安定した戦いができるけれど、相手にリードされてしまうとそうはいかない。こっちが2ポゼッション(6点差)以上離す展開にならないと落ち着いて戦えないという課題は、ずっとありました。

クォーターファイナルでも、サンロッカーズ渋谷に詰められた展開がありましたし、川崎戦の1戦目も詰められました。そういうメンタリティーの弱さが、年間通してブレックスにはあったのかなと思います。

 

駆け引きがとても面白かった

―ファイナルは、1戦目の敗戦が悔やまれますね。

プレーが硬かったという部分もありますが、SR渋谷戦と川崎戦でやっていたディフェンスが、千葉には合わなかったというところが大きいです。ですから1戦目はリバウンドを取られてしまいましたが、それも2戦目では修正することができました。

このシリーズは、戦略・戦術も非常に細かくて、その駆け引きはとても面白かったです。特に3戦目はすごかったですよ。3戦目の出だしで相手が2戦目の課題を解決し、今度はうちがそれを5分で解決して、というようにお互いのディフェンスの仕方が一つのゲームの中で34回は変わりました。

 

―安齋HCは、「3戦目の終盤でアドバンテージが出るなというものをいくつか入れたけれど、日頃やっていなかったのでそれがうまくいかなくて、良いオフェンスに展開できなかった」という話をしていました。

我慢できなくなっちゃうんですよね。僕もいろいろやりたいなと思ってしまうので気持ちはすごく分かります。でも、結果的にそれがうまくいくことってあまり多くないんですよね。だから、その辺りの判断はかなり難しいです。

新しいことを入れるとは言ってもゲーム全体を変えるものではなくて、1ポゼッションとか2ポゼッションぐらいのニュアンスなのですが、それを練習で取り入れると、選手のイメージとしては「ああ、これでいくんだな」という感覚になってしまう。ですから、選手への伝え方もとても重要になります。

 

 

 

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