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佐々宜央AC「間違いなく前進したシーズンだった」インタビュー後編【無料記事】

ダントツのファイナルMVP

―今シーズンを振り返って、「佐々宜央賞」をあげるとしたら、誰にあげますか。

やっぱり、(鵤)誠司でしょうね。鵤はダントツのファイナルMVPです。実際にブレックスが優勝していたら、ライアン(ロシター)がMVPになっていたとは思いますが。

プロフェッショナルとして一番大事な力は “コンスタント” という部分なのですが、ずっと安定したパフォーマンスをしていて、1年間を通して成長したなと思うのは、やっぱり誠司です。

その次は、ジョシュ・スコットです。

ジョシュは意外と短気なんですよ、ああ見えて。でも表情はずっと変わらないから伝わりづらいですが、それも武器ですよね。

だから僕が賞をあげるとしたら、外国籍選手にはジョシュ、日本人には誠司。本当はそこに、喜多川修平も入れたいです。

 

―喜多川選手については、シーズン序盤からずっとMVPと話していましたね。

ブレックスには13人の選手がいましたが、僕はプロバスケットボールチームの中で111213人目の選手たちが、どんな精神状態でいるのかがとても大事だと思っているんです。ここにいる人たちに不満があると、チームにマイナスな影響を及ぼすことが多く、実際にはそれが普通です。

「なぜ自分は試合に出られないの?」という感情から、応援もしない、仕事だから一応やっているという状況になってしまうことが往々にしてあります。

今シーズン、田臥勇太さんや修平、荒谷裕秀などがそういう立場になってもおかしくない状況でした。でも、修平は強い人間なので、恐らく思っていることはあるだろうけどそれをこらえて、いつもしっかりと準備していた。

そういう意味では、本当に職人ですよね。毎試合そうですが、ファイナルが終わった後も、すかさずシューティングしていました。それがすごく嬉しかったです。

 

―毎回、試合が終わった後にシューティングしているのですか。

ほとんどの試合でしていますよ。

修平以外にも、(竹内)公輔もナベ(渡邉裕規)も。1試合目が終わった後に、サブコートがあったので練習しに行っていました。

 

―頭が下がりますね。

僕が「このチームは脅威だな」と思うのは、そこなんです。SR渋谷との試合後も、川崎との試合後も、千葉との試合後も、です。

もちろん相手チームの選手も練習しているのですが、相手チームで練習しているのは20歳代の若い選手たちなんです。

こっちは全員30歳以上。356歳ぐらいの選手が、しかも日本代表経験もある選手が、試合が終わった後に居残りで練習しているんです。

素直に「すげえチームだなあ」と思います。

36歳とか、代表経験者とか、そんなプライド、もうどうでもよくて、そこにあるのは「明日勝ちたい」「どうにか俺が活躍したい」という思いだけです。

それって、すごいことですよね。

こういうふうに、すごいなあと思うエピソードは、ほかにもいっぱいありました。そういうことが、竜三さんが言う「このチームは良いチームだな」っていう言葉に集約されているのだと思います。

田臥さんもNBAでプレーしたスター選手で、ブレックスでもずっと第一戦でプレーしてきましたよね。でもファイナル2戦目は試合に出ていない中で、ベンチで吠えたんですよ。

しかも勝っていて少し追い上げられそうになった時、ベンチが少し静かになった時間があったのですが、その時に田臥さんが声を荒らげて「おい、ここだろ、静かになるな!」と。

僕自身も、それを聞いてもうちょっと盛り上げなきゃって思いましたし、3戦目に負けた後に一番悔しがっていたのも田臥さんでした。

自分は試合に出ていないから、気持ちは入れていながらも「よくやったよ、お前ら」ぐらいの感じなのかなと思っていたら、本当にものすごく悔しそうで…。

やっぱり、このチームで勝ちたいという気持ちや、自分が携わっているチームが勝利できなかったという悔しさを誰よりも持っているんだなと思った瞬間でした。

 

 

 

 

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