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川本梅花 フットボールタクティクス

【時間の暴走】第11話:クラウディオ ラニエリの監督解任は、間違ってはいません

フットボールショートコラム【時間の暴走】第11話
使い古されたスパナ(C)すしぱく
イングランド・プレミアリーグの第26節、レスター・シティ対リバプール(2017年2月27日)の試合を見ようとして、スカパーにチャンネルを合わせた。試合実況の担当は倉敷保雄さんで、試合解説は粕谷秀樹さんだった。

試合開始前に、倉敷さんが震えた声で粕谷さんに問い掛ける。

「ラニエリ、可哀想じゃないですか」

粕谷さんは倉敷さんに同調して次のように話す。

「プレミアリーグの監督や元選手のコメントを聞いても、この仕打ちはひどすぎる、という話は聞きますからね」

監督や元選手のコメントとは、イギリス紙の『テレグラフ』や『OMNISPORT』が伝えたジョゼ モウリーニョなどの以下の発言を指すのだろう。

モウリーニョ(マンチェスター・ユナイテッド監督)

「昨季に私が前年度の王者として解任された時には、巨大なネガティブなことだと思ったが、ラニエリに起きたことに比べればピーナツのようなものだったと分かった。私が読んだ記事が事実だとして、少しでも真実が含まれているのなら、それを正当化する言葉を見つけだすのは難しい。だが同時に、私たちが、監督として対処する準備をしておかなければならないものでもある」

ユルゲン クロップ(リバプール監督)
「2016年から17年に掛けては、いくつか奇妙な決定があった。ブレグジット(EU離脱)、トランプ、ラニエリである」

これらの監督たちがラニエリ解任の事態に驚愕して、注意深くあるように促す中で、倉敷さんは興奮して話を続ける。

「132年のクラブ史において初めてリーグ制覇を達成させてくれた……。言っちゃあ悪いですけど、落っこちたって、ということを繰り返してきたチームじゃないですか。優勝させてくれた監督が、こんな形で……」

確かに、倉敷さんの言論には一理ある。しかし、ここまでの戦いを見れば、経営者陣のギリギリの判断だったと思える。ラニエリ解任までの成績は、25試合を終えて、降格圏と1ポイント差の17位。絶対とは言えないが、今季のサッカーだけを見れば、2部リーグへの降格は加速されていただろう。

2020年までの契約を無効にしてまで、そして契約解除の違約金300万ポンド(約4億2000万円)を支払ってまで、ラニエリはレスターで必要とされなくなっていた。なぜならば、昨季のレスターの奇跡的な優勝の要因は、ラニエリの手腕だけによるものではないからだ。

ラニエリがレスターの監督になったのは、2015年からである。レスターは、長期的なプランを組んでいて、2011年からアシスタントコーチを務めるスティーブ ウォルシュが、強化部門で中心的な働きをした。例えば、2012年にアマチュアリーグで得点を量産していた、昨季プレミアリーグMVPのジェイミー ヴァーディをレスターに加入させたのはウォルシュである。さらに、今季チェルシーに移籍したエンゴン カンテの加入など、地盤は固められていた。

ラニエリには癖があった。それは、戦い方において「いじりすぎること」である。彼は、自国イタリアでは「アッジュスタトーレ(修理屋)」と呼ばれた。それは、2部から昇格したユベントスにチャンピオンズリーグ出場権を与えた実績などから、そう命名されたのである。同時に、修理屋という意味には、「戦術や選手起用をいじりすぎる」という側面もある。レスターは、ビッグクラブでないので、選手層の薄さがあった。したがって、ある程度、固定メンバーで戦う必要がある。戦術をシンプルにして、共通理解を深めるために多くの時間を掛けられた。

今季のラニエリは「4-4-2」のボックス型が機能しないと見ると、同じ「4-4-2」でもダイヤモンド型を採用したり、さらに「4-2-3-1」を試行したりした。しかし、問題は一向に解決せずに、チームのバランスはより崩れていった。その結果、1月14日の第21節・チェルシー戦(0-3)の敗退から2月12日の25節・スウォンジー・シティ(0-2)まで、リーグ戦5連敗となった。

ラニエリの後を受けて、クレイグ シェイクスピアが暫定監督を務める。冒頭で取り上げた第26節の対リバプール戦では、ヴァーディとダニー ドリンクウォーターの得点で、3-1と久々の勝利を手にした。この試合は、原点回帰と呼べる戦い方だった。

なお、レスターの「原点回帰」の戦い方とはどんなものなのかは、本サイトの「決定的な1分間」の中で述べようと思う。

川本梅花

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