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【インタビュー】川島永嗣が日本代表の正GKである理由【無料記事】 山野陽嗣(元U-20ホンジュラス代表GKコーチ)

【インタビュー】山野陽嗣(元U-20ホンジュラス代表GKコーチ)
川島永嗣が日本代表の正GKである理由

2018FIFAワールドカップロシアのアジア最終予選も、いよいよ3試合を残すことになった。日本代表は6月13日、イラク代表とアウェイのPASスタジアム(イラン)で戦う。その次は8月31日、ホームでオーストラリア代表を迎える。最後の試合は9月5日、アウェイでサウジアラビア代表との試合が待っている。

日本とサウジが勝点16で1位と2位を競り合い、3位には勝点13のオーストラリアが構える。グループリーグの上位2カ国が本大会に出場できる。もし3位になったとしたら、両グループの3位同士でプレーオフを行う。そこでの勝者は、北中米カリブ海予選の4位とホーム&アウェイで決戦を行うことになる。日程と勝点を考えれば、日本は負けられない状況にある。

アジア最終予選(Road to Russia)日程・順位表
http://www.jfa.jp/samuraiblue/worldcup2018_final_q/schedule_result/

6月8日にオーストラリアとサウジが対戦することも踏まえ、日本にとって6月13日のイラク戦は重要な一戦となる。そこで、日本のカギとなる選手は誰なのかを考えてみた。

今年になって日本代表のスターティングメンバーに変化があった。昨年11月15日に行われたサウジ戦[2○1]で日本のゴールを守っていたのは西川周作選手だったが、今年3月24日のアラブ首長国連邦(UAE)代表戦で先発起用されたのは、川島永嗣選手であった。

GKの話題は専門家に尋ねるのが、まっとうなやり方である。GKの経験もなくコーチもない評論家が、あれやこれやと言っても、全く説得力がない。Webマガジン「川本梅花 フットボールタクティクス」には、ぴったりの専門家がいる。それは、元ホンジュラスU-20のGKコーチだった山野陽嗣である。考察対象とした試合は、2017年3月24日のUAE戦と3月28日のタイ代表戦[4○0]である。では早速、話を聞くことにしよう。

川島永嗣以上のGKは日本にはいません

――ヴァイッド ハリルホジッチ監督は、UAE戦で川島選手を先発で使ってきました。それまでは、西川選手がファーストチョイスです。フランス1部リーグのFCメスに加入した川島選手は、UAE戦の時点で、今季1試合のみ出場という状況でした。

所属クラブで試合に出ていない、あるいはスタメンではない選手が代表戦で起用されるケースはあります。ACミランの本田圭佑選手やドルトムントの香川真司選手もそうでした。そう考えると、ハリルホジッチ監督は川島選手について、彼らと同列の評価をしていることになります。

そのことを踏まえ、ハリルホジッチ監督が西川選手ではなく川島選手を先発起用した理由を、どのように考えますか?

山野 理由はシンプルです。川島選手の方が、西川選手よりもGKとしての能力、総合力が上だからです。UAE戦で決定的な一対一を止めたシーンがありましたよね。この一対一の場面、川島選手と西川選手の2人を比較する象徴的なシーンになります。あの場面を見たら、川島選手を躊躇(ちゅうちょ)なくファーストチョイスにします。それはハリルホジッチ監督だけではなく、どの監督がなっても川島選手を選ぶでしょう。

いま選ばれている日本代表GKの中で、シュートを止めるためのプロセスを備えていて、そうした能力が一番高いのが川島選手です。これこそハリルホジッチ監督が川島選手を起用した理由だと思います。

――専門家の視線からすると、西川選手と川島選手では、そんなに実力の差があるんですか?

山野 誰にでも分かるように説明することは、実は、難しいです。なぜならば、GKをやったことがない人は、GKのプレーを「当たっている」「当たっていない」という見た目の印象とか、雰囲気や感覚で「良い」「悪い」を判断しがちだからです。

僕の経験と洞察力で川島選手の方が「良い」と説明したとしても、ほかの意見に聞く耳を持たない人からは「川島選手を贔屓している」という意見しか戻ってこない。それはとても悲しいことです。

川島永嗣のGKとしての優位性

山野 先ほど述べた、 UAE戦で一対一になってシュートをクリアした場面がありましたよね。

――前半20分の出来事ですね。

あの場面、日本の守備組織は完全に壊れされています。森重真人選手が前へ出て潰(つぶ)しに行ったのですが、相手にいなされる。山口蛍選手と長友佑都選手はただ見ているだけ。カバーにさえ入っていない。インサイドハーフの香川選手も今野泰幸選手も、UAEの選手に釣り出され、適正ポジションにはいない状況でした。

MFイスマイール アルハマディ選手がスルーパスを出すと、FWアリ アハメド マブフート選手がペナルティエリア内で川島選手と一対一になり、シュートを放った場面。川島選手はきっちりセーブをしました。

山野 あるサッカーWebサイトには「UAEの選手は右にしかコースがなかった」と書かれていました。この記述通りであれば、日本のDFは、左のシュートコースを切っていたことになります。しかし実際には、日本のDFは2人とも戻ろうとしていましたが、戻り切れませんでした。シュートコースにさえ入っていない。

――そうですね。何度見直しても、あの場面は完全にフリーでした。シューターのマブフート選手は右にも左にも打てましたね。ニアか股間か。一度切り返してからシュートを打つこともできた。川島選手は、股間の辺りでブロックするんですよね。

山野 あの場面で、最もシュートを止められる確率が高い日本人GKは誰かといえば、川島選手です。それだけ、シュートストップの能力が高い。

川島永嗣と西川周作を比較して

山野 こんなこと言ったら問題かもしれませんが、西川選手だったらシュートを入れられた確率が高いと思います。実際、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)でも、この場面と同じような状況がありました。上海上港に所属するFWフッキ選手に、西川選手は股を抜かれてゴールを決められています。

西川選手でも東口順昭選手でも、あのシュートを止められる確率は低い。能力と過去の実績(データ)を鑑みれば、こういうシュートを止められる確率が最も高い日本人GKは、川島選手だと思うのです。

――具体的に川島選手のプレーに関して優れている点を教えてください。

山野 UAE戦での一対一の場面で説明しましょう。まず、シューターがボールを蹴る前に、体で壁を作る動作に入っています。壁を作るにしても、両足をピッチいっぱいに広げる形を作ります。これは相当に体が柔らかくないとできません。両足を大きく広げることによって、左右の下側の両シュートコースを最大限にきるのはもちろん、同時に広げた両足の下をグラウンダーでシュートさせないようにもシュートコースを防いでいます。股がピッチに着くくらい低く構えているので、そう抜かれることはない。

シューターとの距離は3メートル。日本のDFがミスしてボールを取られたのですが、その瞬間からぎりぎりになるまで(3メートルの距離になるまで)冷静にシューターの動きを見ている。シューターがボールを蹴る状態になる前にスルスルと前に寄せていく。シューターが蹴る時には、自分の体を壁にしてコースを切っています。この状況で、面を作ってコースを切り、なおかつ股を抜かれないように低く構える。これを瞬時に、一連の動作を無駄なくできる。

この場面を見ただけでも、普段のトレーニングから、いろんな状況を設定して取り組んでいることが分かります。このシーンで決められていたら、どのような結果になったか分からないですよね。

――確かに、川島選手は「この一戦は負けられない」という試合で、チームに勝利をもたらしています。

山野 そこなんですよ、川島選手のすごいところは。親善試合などのテストマッチではなくて「ここで負けてしまったら」「ホームでの敗戦の二の舞になるんじゃないのか」という試合で、シュートを止める。絶対に負けられない場面で止めることなんですよ。

何回かに1回ならば、JリーグのGKでもUAE戦の一対一の場面を止められるでしょう。ただ、あのような「絶対に負けられない」最もプレッシャーがかかる最も重要な代表戦の大一番という状況で、最も止められる確率が高い日本人GKは、間違いなく川島選手です。そして、そういった状況で「止められるかどうか」が勝敗、ひいてはチームの運命を大きく変える。だからこそ、日本代表のGKは長年、川島選手一択だったのです。

川島永嗣がファーストチョイスとなる

――ほかにも、川島選手が優れている点はあるのでしょうか?

山野 まずは、身体能力ですね。ほかの日本人GKと比べて、身体能力はずば抜けています。例えば「よーい、ドン!」で、全く同じ状況下……、そうですね、同じシュートスピードで同じコースに蹴られたとします。そうしたら、ほかの選手が届かない距離でも川島選手はボールに届きます。つまり守備範囲が広い。

細かいことを言えば切りがないのですが、僕の中では、川島選手と西川選手を同じ土壌に乗せて比較することはできない。それだけ、実力に差があります。いろいろと言葉を尽くしましたが、究極的には、2人のプレーを見て違いが分からないのであれば、いくら説明しても分からない。それくらい、はっきりした違いがあります。

――そんなにも違いがあるのですか?

山野 僕は、数年前に川島選手と西川選手の違いをブログで書いたことがあります。川島選手がこれだけ優れていると書いたら、ボロカスに批判されました。日本代表でGKが同じメニューで練習しますよね。例えば、GKが順次に入れ替わってシュートストップするシーンがあったとします。そうすれば、見る人が見れば、その選手の質が分かります。西川選手はこう、川島選手はこう、東口選手はこうだろう、と。ましてや現場で生で見ている監督やGKコーチならば、どちらがどうかは、すぐに見分けが付く。それほどはっきりした違いがあります。

――ハリルホジッチ監督にとって、川島選手を起用するメリットは?

山野 それは簡単ですよ。危険な場面を止められる確率が最も高い日本人GKなのですから、川島選手を使えば、勝てる確率が高くなる。だから、ハリルホジッチ監督だけではなく、誰が日本代表監督をやったとして、ファーストチョイスが川島選手になるでしょう。

――川島選手の身体能力の高さ、守備範囲の広さに関して分かりやすく説明してもらいましたが、それ以外で、川島選手の特徴は何かありますか?

山野 昨年のUAE戦(2016年9月1日/1●2)で西川選手が決められたFKがありましたよね。

――マブフート選手がドリブルで仕掛けて、ペナルティエリア手前の中央で吉田麻也選手に倒されてFKが与えられた場面ですね。前半20分の出来事でした。UAEのキッカーはアハメド ハリル選手。右足で直接狙ったんですよね。日本の壁を越えてボールがゴールに吸い込まれます。西川選手は手ではじき切れませんでしたが、もう少しの場面でした。

山野 川島選手ならば、あの場面はどうしただろうかと考えてみてください。守備範囲が広い。身体能力もある。海外のいろいろなシューターが蹴ったボールを受けている。つまり、強いシュートを止めるためには、それに負けなければいい。そのためには、ボールを止められる位置にいる必要がある。

このFKの失点の場面、西川選手は読みが外れて逆側に先に動いてしまった。つまり適正な位置に着けていない。そのことによりさらにシュートに対して遠くなるだけではなく、反応自体も遅れてしまっている。川島選手は身体能力だけではなく、そういったシュートへの準備などの細かな技術の高さも日本人GKの中ではずば抜けています。そして、国際試合になればなるほど、いろんなボールが打たれるわけです。変化するボールや、強烈に強いシュート。それらを、きっちりはじく必要があります。川島選手は長く欧州や日本代表でプレーしているので世界中のあらゆるタイプのシュートを受けている。

UAE戦で失点を喫したFKで、西川選手はボールに手を当てていますが、はじき切れなかった。川島選手には、強いシュートに対しても、はじき切れる強さがあります。日常的に世界中のあらゆるタイプのシュートを受けてきた川島選手は、対応できるシュートの幅の広さも日本人GKの中では群を抜いています。

それに、シュート前の準備として、GKの基本動作であるプレジャンプをしないこと。川島選手は、プレジャンプをしません。西川選手は、クセでどうしてもプレジャンプをしてしまう。それによって、一歩動作が遅れます。キックについては「西川選手の方が上」という評価を聞きますが、代表戦における両者のキック成功率やキックからチャンスにつながった確率を統計で出してみると、さほど差がないのみならず、試合によっては、むしろ川島選手の方がキック成功率やキックからチャンスにつながった確率が高いことも多い。そうなると、代表で西川選手を使う理由が全くなくなる。

――ハリルホジッチ監督は、今後も川島選手がファーストチョイスとなりますね。

山野 両者を並べて練習している姿を見れば、もう一目瞭然なんですよ。両者の差が。だから、合宿でプレーを見れば「ファーストチョイスは川島」となる。もちろん、直近の試合での調子や現在の状態なども選考基準となりますが。

以前、FC東京に権田修一選手が所属していた時、Jリーグですごく活躍した試合をハリルホジッチ監督が見ており、初采配のチュニジア代表戦(2015年3月27日)で権田選手を起用しました。試合は2-0で日本が勝利を収めたのですが、権田選手はミスを連発した。「ああ、これでチャンスはない」と思ったのですが、実際、次のウズベキスタン代表戦(2015年3月31日/5〇1)から、川島選手が使われるようになりました。

EAFF東アジアカップ選手権で、日本代表は国内組だけで戦うことになり、西川選手が起用されました。(2015年8月2日に)日本は北朝鮮代表と対戦して1-2で敗れたのですが、西川選手のプレーはひどかった。ハリルホジッチ監督の中で、あの北朝鮮戦の頃には、すでに「W杯のレベルで通用するGKは、日本で川島選手しかいない」と判断していたのだろうと想像しています。

アジア2次予選も川島選手から入っている。川島選手は、ずっとチームが決まっていなかった時期があり、川島選手も「今回呼ばれると思っていなかった」とコメントしています。ただ、監督の頭にはファーストチョイスとして、かなり早い段階から常に川島選手がいたと思います。

PKストップへの過剰な願望とPKストップの事実

――川島選手に関してよく言われるのが「PKを止めていない」という意見です。

山野 それも言われていますね。でも実際は、先のタイ戦でPKを止めています。昨年のキリンカップ・ブルガリア代表戦(2016年6月3日/7-2で日本勝利。後半45分にセーブ)では、利き手の右手ではなく、左手で強いボールをはじいています。

もっと前にも、象徴的なもので言えば、アジアカップのカタール大会での韓国代表戦(2011年1月25日/3〇0)、イングランド代表戦(2010年5月30日/1●2)で、MFフランク ランパードが蹴ったPKを止めています。

おそらく、2010FIFAワールドカップ南アフリカの決勝トーナメント1回戦・パラグアイ代表戦におけるPK戦と、2015年AFCアジアカップ準々決勝・UAE代表戦におけるPK戦の印象だけで、「PKを止めていない」とか「キッカーよりも早く動く」という評価になっているのでしょう。しかし、それらは単なる印象論です。僕も経験があるんですが、確かに中南米や南米の選手はPKがすごくうまいとはいえ、PKでGKの能力を語るのもどうかと思います。

――結論として、過去の日本代表の監督は、岡田武史元監督、アルベルト ザッケローニ元監督、ハビエル アギーレ前監督、そしてハリルホジッチ現監督は、川島選手をファーストチョイスしてきている。それだけで、川島選手の選手としての優位性は揺るがない。

ただ、彼の次に続くGKが育ってきてほしいという欲求は、日本代表ファンにあることは事実です。ここまで、川島選手のことを語ってもらったんですが、じゃあ、西川選手はどんな特徴のあるGKなのかを語ってもらうことで、西川選手が川島選手を乗り越えるために必要なことが見えてくると思うのです。いかがですか?

山野 はい、西川選手について、Jリーグでの大きな大会の試合をピックアップして、分析するのも興味深いことですね。

――では、次回、「西川周作GK論」をやりましょう。西川選手は山野くんのTwitterをフォローしているようなので、西川選手本人もこの記事を読むかもしれません。こうして語ることが西川選手への助言になって、「川島越え」をするキッカケになればと思います。

山野 分かりました。やりましょう。

川本梅花

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