0‐7の処方箋(J論)

川本梅花 フットボールタクティクス

サッカーを観ること。それは「生きること」そのもの…【フットボールシネマの逆襲】映画「シーズンチケット」を見て

【フットボールシネマの逆襲】映画「シーズンチケット」を見て

事務職に従事する人のことを「ホワイトカラー」、現場で作業する人のことを「ブルーカラー」と呼ぶが、この映画は、イギリスの「ブルーカラー」を題材にしている。主人公たちの生きざまは、決して反体制的な反抗ではない。それは「反逆」というよりも、サッカーを観ることが「生きること」そのものと呼ぶべきだろう。

映画のプロット

主人公は、15歳の少年2人。ニューカッスル・ユナイテッドFCのシーズンチケットを手に入れようと、時には悪事に手を染める彼らが、悪戦苦闘する姿を描く。父親の家庭内暴力が原因で離散した家族の中にいる少年。おじいさんと2人暮らしで貧しい家の少年。こうした恵まれない家庭環境を吹き飛ばすものが、ニューカッスルの存在だった。悪童と呼ばれる少年たちの、繊細な心を映し出す青春映画。

安易なファウルを嫌ったアラン シアラー

監督のマーク ハーマンは、ブルーカラーたちがブラスバンドを結成して大会に出場するという映画『ブラス!』を撮った人。ここで取り上げる『シーズンチケット』も、ブルーカラー階級を題材にしている。さらに、ニューカッスルの中でも労働者階級の街であるウォールズエンド出身のアラン シアラー本人が出演している。シアラーはニューカッスルのセレクションに失敗し、ブラックバーンへ加入。その後、マンチェスター・ユナイテッドからのオファーを断り、ニューカッスルに戻って活躍した地元の英雄である。また、彼はプレーヤーとして、ほとんどファウルを犯さなかった。そんなシアラーに憧れている2人の少年ジェリーとスーエルが、この映画の主人公だ。

サッカーの前では純粋になれる

この作品は、サッカーへの、クラブへの偏愛であふれている。それは冒頭の場面を見ればよく分かる。主人公2人は、暗闇のスタジアムの中で、芝生を掘り起こす盗みを働く。盗み自体は罪だ。しかし、彼らには彼らなりの理屈がある。僕らは「試合の一部になれないから、一部をいただく」のだと。当然、この行為は事件となり、「愚かなる蛮行」とか「冒涜(ぼうとく)だ」とか非難を浴びる。

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