川本梅花 フットボールタクティクス

【無料記事】勝てそうな気がするかもしれませんが、勝てない相手です…【コラム】ロシアW杯、日本が対戦するのは?

勝てそうな気がするかもしれませんが、勝てない相手です…

ロシアW杯、日本が対戦するのは?

もしかしたら、振り分けられたグループを見て「これは勝てそうだな」と思った人もいるかもしれない。1勝はできるかもと予想した人もいるかもしれない。いや、とんでもない。現在、日本代表が勝てる可能性は……ほとんど見えてこない。

これは、2018FIFAワールドカップ ロシアの組み合わせ抽選結果の話である。

勝敗のカギは、ハリルホジッチ監督が選ぶ「戦い方」

ロシアW杯の抽選会が12月1日に行われた。日本(55位)が入るグループHには、ポーランド(7位)、コロンビア(13位)、セネガル(23位)がいる。括弧の中の数字は11月23日に発表されたFIFAランキングだ。

日本の大学の偏差値とFIFAランキングを比較して語ってるツイートを見掛けた。大学の偏差値ほど明確ではないが、それでもFIFAランキングは、チーム力を測るための一定の価値基準を与えてくれる。

グループHの中では、55位の日本が今のところ一番低い位置にいる。

実際に、日本以外の戦力を見てみると、どの国も強力なFWを配している。1人で打開できる力のあるFWが、1人や2人はいるのである。そもそも日本の場合、得点力よりも守備力の問題が大きい。日本のDF陣は、ロシアW杯アジア予選においても、スピードのある選手に振り切られるシーンが何度かあったのだ。

楽観論を語るコメントや記事を見たならば、その人や媒体は疑った方がいい。対戦国に関する知識が乏しいか、サッカーそのものを見られない人物という可能性があるからだ。だからと言って、悲観論が幅を利かせる必要もない。サッカーはやって見ないと分からない側面がある。

勝敗のカギは、ヴァイッド ハリルホジッチ監督がどのような戦い方をするかに掛かっている。この時期に来て、突然にブレイクするFWやDFが現れるとは思えない。そうすると、現在の戦力で、相手とどうやって組みいるのかを考えることが重要になってくる。全く手も足も出ない相手ではないので、どのような「戦い方」をするのかが勝つためには大切になる。

ハリルホジッチ監督の戦ったW杯アジア予選の中で、筆者が最も興味深いと思った試合がある。2016年10月11日、ドッグランズスタジアムで行われたオーストラリア代表戦である。

アウェイのオーストラリア戦で、日本代表は相手にボールを持たせて引いて守った戦いをした。この試合は、ハリルホジッチ監督がはっきりとした意図を選手に伝え、「組織的に引いて守ってカウンター」をやった戦い方だった。日本の選手たちは監督の意図を理解し、守備においても攻撃においても、きちんと組織を機能させた。

「ポゼッション」しながら攻撃をするイメージを持っている選手もいるだろうが、グループHにおいて、日本の選手の技術では、「ポゼッション」をしても攻撃に結び付けられない。だが「引いて守ってカウンター」に徹すれば、面白い戦いになるかもしれない。日本には足が速いFWが何人かいるので、「引いて守ってカウンター」はそんなに悪いやり方ではないと思う。

ただし、どこからプレスを掛けるのかがキーポイントになる。ハイプレスで仕掛け、相手にいなされたら、素早くリトリートして自陣に戻る。ハーフウェーラインから自陣に入ってきたところでプレスが始まるなら、ボールをピッチの中で奪うのか、それともタッチライン近くの外で奪うのか。全員ではっきり共通認識を持たなければならない。

おそらくハリルホジッチ監督は、対戦相手によって、FWが始めるプレスの位置を変えてくるはずだ。どこからプレスが始まるのに注視して見ていれば、ハリルホジッチ監督が、その試合をどうやって戦いたいのかが分かるだろう。

それでは、対戦日に沿って相手国を簡単にピックアップしよう。

コロンビア、今回はファルカオも出場か

2018年6月19日21時キックオフ
コロンビア vs 日本
都市:サランスク

基本システム:4-2-3-1

「対戦国には強力なFWがいる」と先述した。コロンビアには、ラダメル ファルカオ(モナコ)がいる。リーグ・アンでは13試合で14得点と好調を維持。前回のブラジル大会は故障のため出場できなかったが、リベンジの意味も含め、メンタルとスキルにおいて、選手としてピーク時にあると思われる。

カルロス バッカ(ビジャレアル)は、セビージャFCでの活躍が認められてACミランに移籍し、本田圭佑ともプレーした。今季はビジャレアルに期限付き移籍。10試合出場して4得点と、まだチームにフィットしていないが、スピードのあるFWだ。

ユベントスのファン グアドラードは、サイドからバイタルエリアに侵入してくるウインガーだ。ドウグラス コスタとのポジション争いが激しく、対戦相手によってスタメンであったり、後半途中から使われたりしている。動きがパワフルで、観客に見せるプレーのできる選手だ。

さらにMFのハメス ロドリゲスがいる。彼は、レアル・マドリーで活躍できなかったが、2019年までの2年間の期限付きでバイエルン・ミュンヘンに移籍した。前監督のカルロ アンチェロッティが引き入れたため、新監督のユップ ハインケスになったら控えに回されるかもしれないと思っていたが、先発出場しているところからも、今季のコンディションの良さをうかがわせる。

セネガル、名前の知れたタレントの宝庫

2018年6月24日24時キックオフ
セネガル vs 日本
開催都市:エカテリンブルク

基本システム:4-3-3

セネガル代表監督の名前を聞いて「ああ、そうか」と思い出した。2002年W杯日韓共催の時に、セネガル代表のキャプテンをしていたあの選手だった。アリウ シセが率いるセネガル代表は、国際大会でそれほど実績があるわけではない。

ロシアW杯アフリカ予選の最終ラウンド、グループDを3勝2分け、8得点2失点で1位通過。それぞれのポジションには、名前の知れたタレントたちがいる。プレミアリーグとセリエAに多くを輩出。ざっと見渡してみても、こうである。

FW サディオ マネ(リバプール)
FW ディアフラ サコ(ウエストハム)
FW クマ ババカル(フィオレンティーナ)
FW ケイタ バルデ(モナコ)
MF シェイク クヤテ(ウエストハム)
DF カリドゥ クリバリ(ナポリ)

マネにしてもサコにしても、足が速く爆発的な瞬発力がある。しかし、クラブチームでは完全なレギュラー獲得までには至っていない。それには理由があって、数試合通してコンディションを維持できない側面がある。試合によって好不調が激しく、ムラのあるプレーを見せるからである。

日韓大会でセネガルは、初戦のフランス代表に勝利を収めたことから快進撃が始まった。前評判以上の躍進を見せられるかは、第1節・ポーランド戦の結果によるだろう。そしてそれが、日本戦にも影響してくるはずだ。

アフリカの中では、エジプト代表がナンバーワンだと筆者は見ている。12月4日現在、プレミアリーグ得点王でFWのモハメド サラー(リバプール)は、7大会ぶりにW杯出場を決定づけたコンゴ共和国戦でのゴールが印象深い。そして、DFにはバイエルンから完全移籍してきたメディ ベナティア(ユベントス)がいる。

エジプトに比べれば、セネガルは総合力でかなわない。そのため、シセ監督がどこまでチームを作り上げてくるのかに注目される。

ポーランド、強力なFWレバンドフスキ

2018年6月28日23時キックオフ
ポーランド vs 日本
開催都市:ボルゴグラード

基本システム:4-4-1-1

もしかしたら、ベスト8に加わってくるかもしれないと、筆者は予想している。それだけ、いまのポーランドは強い。W杯ヨーロッパ予選のグループEを8勝1分け1敗で1位通過する。

問題は守備陣にある。予選では28得点、14失点。14失点は、さすがに多い。DFのリーダーは、カミル グリク(モナコ)が務める。モナコでもレギュラーとしてチームを支えているが、右サイドバック(SB)のウカシュ ピシュチェク(ボルシア ドルトムント)と、左SBのアルトゥール イェンシェイチク(レキア ワルシャワ)の裏が狙われるのだ。サイドから崩されて失点を喫するパターンをしばしば見掛ける。

こうした問題を解決するために、アダム ナバウカ監督は、11月の国際試合のウルグアイ戦で3バックを試みている。

しかし、そうした守備陣の不安定さを解消するのが、強力な攻撃陣であるのだ。誰もが知っているストライカーであるロベルト レバンドフスキである。バイエルンの試合を見て、彼のプレーを知ったならば、どれだけすごいプレーヤーなのかすぐに分かる。W杯欧州予選で18得点と、圧巻の数字を示す。2トップ気味の相方アルカディウシュ ミリク(ナポリ)の離脱があったが、そうした苦境をものともせず、キャプテンシー溢(あふ)れるプレーで、チーム全体を鼓舞し続けた。

ロシアW杯本大会では、得点王の最有力候補である。

以上のような、強力なFW陣と対峙(たいじ)しなければならない日本の守備陣は、どのように対処していくのか? まさにそのことが問題で、ハリルホジッチ監督が日本代表の指揮を執ってもらっているポイントになっている。前回までのやり方で、日本は世界で勝つことができなかった。どんなやり方で、どんな戦い方で、立ち向かうのか。
ハリルホジッチ監督に、何らかの解決策を持っているのかが気になる。

川本梅花

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