川本梅花 フットボールタクティクス

【無料記事】クラシコでジダンが犯した采配ミスは、本当にそこですか?【コラム】月刊『フットボリスタ』2月号 Issue053

月刊『フットボリスタ』2月号 Issue053

月刊『フットボリスタ』2月号の企画に「17−18前半戦 108の謎」という項目があります。108の中の最初の謎として、スペインのリーガエスパニョールでのクラシコの一戦が取り上げらています。記事のタイトルは「クラシコでジダンが犯した、取り返しのつかない采配ミスとは?」です。

この記事を書かれたのは、『フットボリスタ』の初代編集長だった木村浩嗣さん。彼の記述を見てみましょう。

「ジダンのミスとはコバチッチに集約されている。(…)ジダンの決定的なミスは後半に起きた。そのコバチッチのポジションをカセミロの位置まで下げ、メッシをマークさせたのだ。これが試合を劇的に変えることになる。コバチッチを下げたことでR.マドリーのプレスと守備ブロックの位置も下がった。が、それだけではなく気持ちの面でもアグレッシブさが失われ、フィジカルの面でもまるで急に疲労したかのように動きが緩慢になった。」(p.9)

54分の失点シーンの理由として、木村さんは、コバチッチにメッシをマンマークさせたジダンの采配ミスをあげます。確かに、報道によれば、ジダンはコバチッチに執拗なマークを命じた、となっています。

しかし、54分の失点は、本当に、それが原因なのでしょうか?

実は、試合開始してすぐに、ある選手の動きに精彩がなったのです。その選手の緩慢な動きが前半から顕著に映っているのですが、試合が進むに連れて、彼以外の選手にも同じような状態が見られるようになりました。

そこで、失点の直接の原因は、ジダンの采配ミスだとしても、それを引き起こした事象が何かあるのではないのか、と考えたのです。その事が、今季のR.マドリーの不振を招いているのではないのか。それを検証してようと思います。

今回、2017年12月23日のR.マドリー対バルセロナのクラシコを見直しながら、『フットボリスタ』での「クラシコでジダンが犯した、取り返しのつかない采配ミスとは?」の謎を、本サイトで考えてみます。

前知識として、54分の失点場面を振り返って見ましょう。

トニ クロースが味方にパスしようとしたボールが、バルサの選手に渡ります。そのボールを受けたセルヒオ ブスケツがプレスに来たクロースを躱して、フリーのイヴァン ラキティッチにパスします。一方で、戦犯とされるコバチッチは、ボールを持っているラキティッチを追わずに、フリーランニングするメッシについていこうとします。そして、ラキティッチからセルジ ロベルトへいったボールは、走り込んで来たルイス スアレスに渡って、彼は簡単にゴールを決めます。

この失点だけを見れば、コバチッチにメッシをマンマークさせたジダンの采配ミスと言えるんです。しかし、もっと本質的な原因があったのではないか、という視点を持って検証したいのです。

川本梅花

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