川本梅花 フットボールタクティクス

【コラム】セットプレーには気をつけろ! 【無料記事】#東京ヴェルディ 戦から #京都サンガF.C. 戦の見どころを探る

セットプレーには気をつけろ!

明治安田生命J2リーグ 第10節 東京ヴェルディ対水戸ホーリーホックの試合を観戦するために、4月21日の土曜日の午後、味の素フィールド西が丘に行ってきた。試合は、周知のように、0-3の完敗で水戸が敗れた。

【得点者】
10分 畠中槙之輔
78分 ドウグラス ヴィエイラ
90分 アラン ピニェイロ

試合は、東京のセットプレーからの2失点で決ったと言える。福井諒司が退場したことで不利になったのは事実だが、2失点目もセットプレーからであり、水戸の守備陣形を崩されたわけではないから、マークさえきちんとしていれば、たとえ1人少ない状況でも、防げた失点だったのではないのか、と考えられる。

記者席から見ていて、「あれ、この展開はどこかで見たことがあるな」と思わせた東京V戦だった。それは、4月1日の町田ゼルビア戦のリプレーを見ているようだったからだ。先に1点を取得した相手チームは、自陣に引いてカウンターというやり方を選択する。そうすると、ある程度ボールを持てるようになってくる。しかし、相手は、あえてボールを水戸に持たせているので、裏へのスペースもミドルシュートのコースをも消されているのである。そうした中で、水戸の選手たちは、ボールは持てるがなかなか攻め込めない、と認識させられてくる。それでも、得点機会はあるので、このままやり方を変えないで攻撃していけば、同点のチャンスがあると思わされて、同じようなやり方をしてしまう。しかし、状況は変わらずに敗れてしまう。これが、町田戦と東京V戦での水戸だった。そうした停滞した状況の時は、思い切ってやり方を変えるのも一つだと思う。

さて、失点したセットプレーの守備について話さなければならない。

セットプレーでの2つの過失と変幻自在な東京ヴェルディのシステム変更

1点目のセットプレーの失点に関してだが、コーナキックでの水戸の守備は、マンツーマンとゾーンの併用である。ただし、相手の主要な選手に対しては、完全マンツーマンで責任の所在をはっきりさせている。最初の1点目を失う場面でポイントになるのは、誰が誰をマークしていたのかである。東京Vの林陵平には、白井永地がマークすることになっていた。さらに、得点者の畠中槙之輔は、伊藤槙人が付くことになった。

試合前に、選手たちはコーチから自分がマークする相手選手を告げられる。したがって、白井と伊藤は共にマークする選手をしっかり認識してゲームに入っていた。しかし、ここで2つの過失が起こってしまう。本来ならば、絶対にあってはならないミスであるのだ。

コーナーから蹴られたボールに最初に触ったのは誰だったのか?

白井は、ボールが自分のマークする選手に飛んでくることを察知する。白井がマークするのは林である。林は、白井だボールに触るよりも前にヘディングでゴール前に流し込む。これが最初の過失だった。コーナーから蹴られらボールに最初に触るのは、相手選手であっては絶対にならない。水戸の選手がファーストボールに触れないとならない。それができないと、この場面のように失点に直結してしまうからである。

次に、起こってしまった過失は、伊藤がボールウォッチになってしまっていることだ。林が最初にボールに触ったことに驚いて、そのVオールの軌道を目で追いかけてしまった。本来ならマークをしないといけない畠中を見逃してフリーにしてしまう。

数日後に、伊藤は「自分のマークが目の前にいたのに、自分がやられてしまいました。ボールウォッチャーになってしまったんです」と正直に打ち明けてくれた。

では、こうした過失は防げないものなのだろうか。それに関して西村卓朗強化部長は次のように言う。

「セットプレー対策は、練習でやっています。ボールウォッチャーになってしまうのは、個人の問題なんです。集中力の問題でもあります。選手間のポジションの競争が激しいチームの中にいれば、一つのミスで試合に出られなくなってしまう。そうした緊張感を持てるのかどうかですね」

競り合いに負けた白井とボールウォッチャーになってしまった伊藤。彼らが、もう一段レベルアップするためには、取り組み方の甘さがプレーに表れたのだと言える。

東京Vのロティーナ監督は、カメレオン戦術の使い手である。

スタートシステムは、「3-4-2-1」だった。浦和レッズでやっていたペドロビッチのやり方である。ビルドアップ時には、最終ラインが3バックから4バックになって組み立てをする。次に、「4-3-3」にシステム変更をする。さらに、「5-3-1-1」にしてゲームをフェイドダウンさせた。特に、興味深いのは、システムの中で、個々の選手の特徴を活かそうとすることである。左サイドの渡辺皓太は、「3-4-2-1」のシステムの時には、タッチラインに張らないで、ピッチの中でポジショニングする。「4-3-3」では、奈良輪雄太とポジションチェンジをして、サイドラインに張ってプレーする。右サイドの林は、「3-4-2-1」の際に、福井とジエゴの中間のポジションに位置してプレーする。「4-3-3」の場合、裏を狙ったり、あるいはジエゴのオーバーラップを防ぐために、右サイドラインに張って、蓋をする役目を担う。

このように、オーガナイズされた守備戦術の中で、きちんと自分の役割をこなせる選手。ここに、「守備がいいヴェルディ」と言われる所以がある。

この敗戦について西村強化部長は、次のような発言をした。

「勝っている時には、気づかないことがあります。この前の大分戦もそうですが、0-3と大敗したのには何らかの理由があるはずです。そこに気づかせてくれて修正もさせてもらえた。シーズン序盤での出来事でよかった。これがシーズン終盤ならば難しいことになってしまいます。0-3の大敗はあまり気にしていません。ただし、選手たちは、自分のおかれた立場を鑑みて、もっと緊張感を持ってプレーできると思います」

さて、水戸は、4月28日の京都サンガF.C.戦をホームスタジアムで迎える。

おそらくシステムは、両チーム「4-4-2」でくるだろう。システムが同じだと、対面する選手がマッチアップ状態になる。そこで、どこにフリーの選手を作り出せるのかが一つの見所になる。また、水戸は、右サイドバックの田向泰輝が復帰するかもしれない。いずれにせよ、セットプレーは目が離せない。誰が誰にマークするのか。ファーストボールをきちんとクリアできるのか。

セットプレーには気をつけてほしい。

川本梅花

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