川本梅花 フットボールタクティクス

【インタビュー】#ラインメール青森 アカデミーダイレクター就任 #堀江哲弘 【無料記事】「認知の部分を中心に鍛えていきたい」

【インタビュー】ラインメール青森 アカデミーダイレクター 堀江哲弘 

--まず、どういうポジションでラインメール青森に迎えられるの?

堀江 アカデミーダイレクターという職で、ラインメール青森の育成組織の全責任を負うという立場です。

--眞中靖夫さんが退任されたので(1月30日に公式発表)、それの後を引き継ぐ形になるんだね。アカデミーの具体的な方針に関しては?

堀江 方針としては単純に技術の部分は追いかけていきつつ、早めに戦術的な……戦術と言えば大げさになってしまうんですが、「認知」の部分を中心に鍛えていきたいんです。

--「認知」の部分というのを具体的に説明してくれる。

堀江 2対1とか3対2とかの場面で、数的優位の時の「攻め方」「守り方」をどうすればいいのか。あるいは、2対2の時には、何を考えながらボールを動かしていけばいいのか。どういう風に、味方同士が協力しなけばいけないのか。基本の中の基本、ベースになる部分を子どもの頃から学ばせたい。

--対象年代はどうなっているの?

堀江 幼稚園児から中学生までですね。具体的には、ジュニアを監督としてみるかもしれません。まだそれは、これからの話ですね。

--スペインで学んだことを取り入れていこうという考えはあるの?

堀江 もちろんそれは考えていますけど、ただ、現地にいる子どもたちの性格とか、実際にコーチをやられている方々の意見を最大限尊重してたいです。スペインでは「こうだ!」というのを押し付ける気はありません。要は、監督が何かやっていることを、最初から「いやいや、これはダメだ!」とか押し付けことはせず、モチベーションが下がるようなことはしたくない。まずは、クラブの育成組織として、コーチがモチベーションを高く持ってやっていく組織を作っていきたい。監督を監督する立場、指導者を指導する立場になると思うので、そこは指導者としての存在を最大限リスペクトしながら、話し合いながら物事を進めていきたいんです。

--スペインではジュニアユースを指導していたんだよね。その時は自由に発言できていたの?

堀江 はい。スペインで監督はチームにおける最大の責任者で自由に発言していました。アシスタントコーチの立場であれば、監督の意図に沿って話さないといけないんですが。

--2018年の8月にスペインのバルセロナから日本に帰国して、2019年1月までアルバイトであるクラブでコーチをしていたよね。その時に、スペインと日本の育成に関しての違いとかを感じたことはある?

堀江 まず、日本は、サッカーをするグラウンドが少ないということです。狭いグラウンドにたくさんの子どもたちがいて練習をしている。サッカーの練習というよりも、フットサルの練習に近い環境にあります。もちろん、大きなクラブのジュニアユースは大きなグラウンドを使えますが、そうしたクラブではないところでの話ですね。平日は、小さいグラウンドを使って、土曜日、日曜日に練習試合を使って11人のサッカーを経験するという感じですね。

--スペインではどうだったの?

堀江 もちろん、環境の厳しいクラブもあります。ただ、基本は週に3日は7人制だったら半面を使える。保護者も、子どもたちがどういう環境で練習できているのかをチェックしているので、クラブもそこは配慮している感じです。

--スペインの7人制は何歳から何歳まで?

堀江 9歳から7人制のリーグ戦が始まって、12歳までですね。日本は、リーグ戦がなかなか普及しないということがあります。都道府県によっては、普及しているところもあります。それでもチーム数が少なかったりします。スペインでは、9歳から30試合を経験できますから。日本のジュニアユースだと、リーグ戦のファーストステージとセカンドステージと分けていて、17、18試合ですかね。

--スペインのジュニアユースはどれくらいの規模からどこまであるなの?

堀江 小さいクラブは1チームから、大きなクラブだとコルネジャというバルサやエスパニョールの次にくるチームだと9チームを持ったりしますね。1チームの登録人数のMAXが14人なんです。必ず、選手は1試合(クウォーター制)につき2回でなければならないという縛りがあるんです。だから1チーム10人とか11人に抑えています。僕がいたクラブも登録人数は12人でした。

--指導者を見た場合、スペインと日本のジュニアユースの指導者の違いを教えて。

堀江 トップのレベルで言えば、Jのトップリーグの指導者とスペインの指導者では、遜色ない部分はあるんです。ただ、層の厚さが違います。そもそも、スペインではユースでプロになる選手はユースにいないんです。スペインだとトップチームに所属して、1部でプレーしている。もちろん、ユース出身者で、2部や3部から初めて、キャリアアップしてくる選手もいます。ただ現実は、そこから1部リーグでプレーする選手は「稀に」なります。

--よくテーマになることだけど、「子どもに戦術を教えるべきかどうか」ということに関してはどう?

堀江 戦術の定義がみなさんバラバラなので、そこの定義が確定しないまま、「戦術を教えるべきか」という議論が始まっているので、平行線になってしまうんですよね。

--じゃあ、堀江くんのいうところの「戦術」とは何?

堀江 僕はヴィッセル神戸のリージョ監督の定義が一番わかりやすいと思っています。「いつ」「どこで」「何を」「どのように」「なぜ」するのかを考える手段そのものが「戦術」である、と。実は、日本のあるクラブで面談をした際に、「フィジカルで敵わない場合は、そこを戦術で補って」と言ったら、「戦術」という言葉を変に受け取られるケースがあったんです。「戦術で選手を縛るのか」という答えが返ってきたことがありました。

--なるほどね。それぞれ人によって「戦術」の定義が違うので、共通理解が得られないということだね。ところで、青森ではユースの強化がテーマになると思うんだけど。

堀江 まず短期的には難しい。下から少しずつ積み上げていくしかないんですよね。

--ラインメール青森の子どもたちに伝えたいことはある?

堀江 戦術の前に、態度というか、スクールの子どもだと、チーム経験がないので、「お前のせいで負けた」とか、コーチに対して敬意を欠いた言葉を発するとか、いくら足元がうまい子どもでも、そこでつまずくと、間違った時に人のせいにする子どもになってしまう。そんな子は、いずれサッカー自体を嫌になってしまうんです。相手を尊重することを、子どもの時から知らないとダメだと思います。そこはしっかり教えていきたい。スペインでも同じでした。民族、宗教がそれぞれ違う子どもだちの中で、その部分は、厳しく戒めてきましたから。スペインの中にはモロッコに対する歴史的背景があって、どぎつい差別用語を吐く子どもがいて、それは絶対に許してきませんでした。青森でも、そこは今までと変わらずに、接していこうと思います。

--そうか。2月1日から青森での生活がスタートするんだね。頑張って、期待してるから。

川本梅花

 

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