川本梅花 フットボールタクティクス

【試合分析】開幕戦の勝利のポイント【無料記事】J2第1節・ #ファジアーノ岡山 戦レビュー

開幕戦の勝利のポイント

J2第1節・ファジアーノ岡山戦レビュー

2019明治安田生命J2リーグ第1節
ファジアーノ岡山 0〇1 水戸ホーリーホック
http://www.mito-hollyhock.net/games/12744/

2月24日の日曜日、2019明治安田生命J2リーグ第1節、水戸ホーリーホック対ファジアーノ岡山が行われました。僕はDAZN(ダゾーン)での観戦になりました。試合は周知のように、1-0で水戸が勝ちました。貴重な勝利というか、次に繋(つな)がる勝利と言えばいいのか。試合後の会見で長谷部茂利監督は「次に繋げやすい、今日の勝利でした」と語りましたが、「継続する点」と「改善する点」がはっきりと分かる試合でした。

ともかく、1-0で逃げ切ったことは大きなことです。ツイッターでもつぶやきましたが、なかなか1-0でゲームを終えるのは難しいんですよね。「事故」という言い方をするのですが、セットプレーでクリアしたボールがたまたま味方に当たり、相手の目の前に落ちてきてシュートを決められる、とかですね。そうした「事故」による失点で同点にされた、あるいは逆転にされた場面を見てきたため、1-0でフェードアウトした試合を見ると、何か感じるものがあります。

https://twitter.com/kawamoto_baika/status/1099746045012062208

さて試合ですが、前半は岡山にボールを持たれました。しかし後半になって、岡山はうまくボールを持てなくなります。岡山は「ボールを持たされている」感覚を持っていたことでしょう。それは、なぜか?この試合のポイントはそこにあります。

岡山がビルドアップする時、センターバック(CB)の2人、田中裕介とチェジョンウォンが真ん中を開けて両サイドに広がります。そこに14番の上田康太が降りてきてボールをもらい、左右にボールを散らします。

水戸のFWのどちらかが上田に近づいた場合、上田はCBにボールを戻してやり過ごし、水戸FWに「無駄走り」をさせます。上田に渡ったボールを追いかけると、上田はCBにボールを送る。水戸のFWに「あと追い」をさせる。この結果、水戸はゲームのリズムは作れないし、FWの体力も消耗します。前半の水戸は、岡山の作戦にはまっていました。

岡山は無理にボールを繋ごうとせずに、ところどころでロングボールを水戸の最終ラインに入れて、陣地を奪回します。それをボニー(ンドカ ボニフェイス)がヘディングで弾き返す構図になりました。水戸は、なかなかセカンドボールがなかなか拾えない。理由はこうです。

水戸のFWが岡山のDFにプレスに行くと、上田を経由して再びCBにボールが戻る。すると水戸のFWと中盤の距離が広がる。そのタイミングで、岡山はロングボールを水戸の最終ラインに入れる。ボニーがクリアしても、岡山の2列目の選手が水戸のDFの前に進んでくるため、セカンドボールを拾うのは岡山の選手となる。

ハーフタイムに長谷部監督が「セカンドボールを拾う」という指示を出したことは、以上の点からも、うなずけます。

そして後半、試合のポイントが出てきます。

【試合のポイント】

水戸のFWは岡山の最終ラインまで無理にボールを追わない。

岡山のアンカー・上田を、主に前寛之、時には平野佑一がケア。

以上の施策により、岡山のビルドアップにふたをする(ボールを出させないようする)。

前半の戦い方を見た長谷部監督が選手に指示したのでしょう。FWは無理に「追わない」、そしてMFに「下がってケアさせる」ことは、すごく勇気のいる采配だと思います。「追わない」とか「下がる」と表現だけを見ると、簡単で消極的に感じるかもしれません。しかし字面とは異なり、勇気を必要とする、ポジティブな戦術変更だったと思います。

もし「あれ?後半になって岡山、前半ほどうまく行ってないな」と感じたならば、その理由は、主に上記の通りです。この采配から、長谷部監督の指揮官としての「すごさ」、あるいは「勝負師」としての顔を見ました。

さて左サイドバック(SB)の志知孝明ですが、先の鹿島アントラーズ戦における守備に関して「DFのボールの追い方ではない」と苦言を呈したのですが、徐々に改善されていますね。

https://twitter.com/kawamoto_baika/status/1094614563314487297

実は、西村卓朗強化部長と、こんな会話をしていました。

「(強化部長は)SBだったから、守備に関して話した方がいいんじゃないの?」

すると強化部長は笑いながら「シーズンに入ったら大丈夫ですよ。ジエゴよりも『やる』と思いますよ」と答えました。その時は「へー」と思って聞いていたのですが、岡山戦における志知の守備を見て、本人の意識改革があったように見えました。志知には、サイドの高い位置に行かせる攻撃戦術が課されていたため、守備の破綻は見づらい面もあったのですが、鹿島戦とは違った側面を見られました。

松井謙弥の好セーブに助けられた試合でしたが、そういうGKのプレーが出たことも、チームが上向きになっている証拠だと思います。

次節の栃木SC戦が楽しみです。

スタジアム観戦の予定ですので、心配は、雨が降らないことだけです。

川本梅花

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ