川本梅花 フットボールタクティクス

【試合分析】#田中順也 の資質と、規範にすべき松本の守備【無料記事】J1第6節 #松本山雅FC 2-1 #ヴィッセル神戸 #visselkobe #yamaga

松本山雅FC、後半アディショナルタイムに見せた「規律とコーチングと運動量」
本文目次
田中順也というプレーヤーの資質
模範とすべき後半アディショナルタイムの戦い方

2019明治安田生命J1リーグ第6節
松本山雅FC 2-1 ヴィッセル神戸
https://www.vissel-kobe.co.jp/match/game/?gid=20190100010620190406&type=detail

4月6日の土曜日、明治安田生命J1リーグ第6節、松本山雅FC対ヴィッセル神戸がサンプロ アルウィンで行われた。ホームの松本は、反町康治監督が指揮を執り、神戸はフアン マヌエル リージョが監督を務める。松本のフォーメーションは「3-4-2-1」。一方の神戸は「4-3-3」の中盤が逆三角形で臨む。両チームのシステムを組み合わせた図は、以下の通りとなる。

田中順也というプレーヤーの資質

試合は90分を経過。1-2と劣勢の神戸に残された時間は、5分間のアディショナルタイムだけとなった。神戸のセンターフォワード・ダビド ビジャは、41分にウェリントンに交代している。フィジカルに優れたウェリントンがポストプレーヤーとしてボールを収める役割を担う。後半開始から、右ウイング(WG)の三田啓貴に代わって、田中順也が投入された。田中は左WGの古橋亨梧とポジションチェンジするなど、比較的自由に動き回っている。田中順也の役割は、ウェリントンの補佐役だ。

筆者は、田中順也の起用に疑問を持っている。それは彼のポジションについてである。柏レイソル時代からポルトガルのスポルティングCP時代まで、筆者は田中順也に密着取材をしていた。サッカー雑誌の『サッカー批評』(双葉社)で、彼がスポルティングを退団するまで連載記事を執筆している。だからと言うわけではないが、彼の性格もプレースタイルもよく理解していると自負する。

はっきり言おう。田中順也はセンターフォワードに置くべきだ。ウェリントンよりも得点力はある。

柔軟性があるため、サイドでチャンスメイクする役を与えられるが、田中順也が最も輝く役割は“点取り屋”である。J1第5節・ガンバ大阪戦[4〇3]の2得点でも証明されているが、ペナルティエリア中央にどっしりと構えさせた方が生きるのだ。

模範とすべき後半アディショナルタイムの戦い方

両チームに与えられた後半アディショナルタイムの5分間。この試合のポイントは、ここにある。

試合のポイント

後半アディショナルタイムに見せた、松本山雅FCの「規律とコーチングと運動量」。

勝っている松本にとっては、いかに1点のリードを死守するのか。神戸にとっては、どうやって追いつくかが、後半アディショナルタイムのテーマとなる。神戸はサイドアタックを徹底し、松本は全員守備で対抗する。両チームの攻防は、とても興味深く感じられた。なぜならば、後半アディショナルタイムに追いつかれた試合を、2試合観戦したばかりだったからだ。J2第8節の水戸ホーリーホック対徳島ヴォルティスとJ3第5節のヴァンラーレ八戸対ガイナーレ鳥取である。この2試合については、コラムでも言及している。

【試合分析】どうすれば後半アディショナルの失点を防げたのか?【会員限定】J2第8節 #水戸ホーリーホック 1△1 #徳島ヴォルティス #mitohollyhock #vortis

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松本の選手は「規律とコーチングと運動量」において神戸を凌駕していた。各自の選手が、どのような場面でどのようなプレーをすれば良いのかを、きちんと把握して実践している。反町監督は89分、選手交代によって選手にメッセージを送る。FWレアンドロ ペレイラが下がり、FW高崎寛之がピッチに入る。高崎は自分の役割をやりこなす。エンドライン近くでボールを持ったら、コーナーフラック付近でキープ。サイドラインでボールを持っても、ひたすらキープに徹している。

先発出場のFW前田大然も、ものすごい運動量でボールを持つ相手にアタック。何度もインターセプトに成功していた。さらにウイングバック(WB)の田中隼磨は、ボールが自分に来たらボールアウトオブプレーを選択。守備者としての田中隼磨に、中途半端にボールを繋(つな)ぐとか、保持するという考えはない。そしてセンターバック(CB)の飯田真輝は、ウェリントンをマンマークで徹底的にケアする。ペナルティエリアにウェリントンが入ってきたら、飯田は身体を密着させて自由にさせなかった。このような守備を選手全員が成し遂げていた。

反町監督は試合後の監督会見で次のように述べている。
https://www.yamaga-fc.com/match/detail/2019-j1-match6

「J1の舞台では、こうやって勝ち点を取っていくしかないという感じもします。(中略)我々も、なりふり構わずという言い方が良いかどうか分かりませんが、自分たちの持てる力を最大限に出していきたいですし、最大限に出さないと1試合も勝てないということを前提にやっていきたいと思います」

試合終了までに残された5分間のアディショナルタイム。松本は「規律とコーチングと運動量」で神戸を圧倒していた。多くのクラブは、松本の戦い方を参考にすべきだ。

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