川本梅花 フットボールタクティクス

【試合分析】#黒川淳史 談話を通しての試合分析【無料記事】J2第14節 #水戸ホーリーホック 0△0 #柏レイソル #mitohollyhock #reysol

談話を通しての試合分析

2019明治安田生命J2リーグ第14節
水戸ホーリーホック 0△0 柏レイソル
https://www.jleague.jp/match/j2/2019/051901/live/

5月19日(日)にケーズデンキスタジアム水戸で行われた明治安田生命J2リーグ第14節、水戸ホーリーホック対柏レイソルの後、水戸MF黒川淳史は「我慢の時間帯が多かった」と語った。今回は黒川の談話を通し、試合分析を試みる。会話後の文が、筆者による分析だ。

――今日は、やりにくそうだったね。

黒川「そうですね、今日は我慢の時間帯が多かったですね」

柏にボールを持たれ、水戸は自陣で防戦する時間帯が多かった。試合後に昨季現役を引退し、今季よりトップチームのコーチに就任した栗澤僚一も「決定力のなさが全てです」と話していた。確かに、柏には何度か決定的場面があり、それを柏FWが決めていたら試合は一方的になったのかもしれない。しかし、決めきれなかったことには理由がある。水戸の選手は、柏FWにきちんと体を寄せ、余裕を持った体勢でシュートを打たせていなかったのだ。

――黒川くんになかなかボールが入ってこなかった。

黒川「うまく動いて、相手のボランチのところでフリーになろうとしました。しかし、なかなか自由にさせてくれませんでした。セカンドボールを拾っても、うまくパスという形にまでなりませんでした。相手は、間をしっかり閉めてきていたし、センターバック(CB)もそこを潰(つぶ)しに、前へ出てきました。まあ、こういうゲームもあるかなという気がしています」

柏は、前節・徳島ヴォルティス戦[1〇0]の反省を踏まえ、水戸戦に備えてトレーニングを重ねたようだ。

前節の対戦相手・徳島は、柏の前線の選手を釣り出すため、自陣の後方でボールを回し続けた。我慢できなくなった柏の攻撃陣は、ボールを奪いにプレスを掛ける。その状況を待っていた徳島は、フリーになったセンターハーフ(CH)の岩尾憲にボールを渡す。岩尾は、前を向いてドリブルを開始。岩尾をケアするために、柏MFが前進する。その結果、中盤とディフェンスラインの距離が広がり、徳島は空いたスペースでボールを回し、ディフェンスラインの突破を試みた。

しかし、5枚で防御する柏のディフェンスラインは強固で、徳島は得点を奪えなかった。柏にとっては、MFとDFの間で徳島に好きにさせてしまった反省から、水戸戦ではMFとDFの間に簡単に相手を入れないように、トレーニングをしてきたようだ。実際に、水戸戦ではそのトレーニングが生かされていた。

――柏のプレスが、横から後ろからと隙なく来ていたね。

黒川「球際に激しく来ていたという印象があります」

水戸の選手が、ボールを持って次のプレーの選択をしようとした瞬間に、柏の選手はボールを奪いにきていた。水戸の選手にとっては、いままで経験したことのないプレスだったに違いない。「隙」とまでは表現できない、人間が判断をする「一瞬の静止」の中で、素早くボールを奪取された。

――柏の選手のプレーは、昨季までJ1で戦っていたチームだと感じた?

黒川「はい、感じましたね。監督もブラジル人ですし、球際はものすごくタイトでした」

――ドリブルをして最終ラインを突破しようとしても、相手はサンドイッチにして防いできたね。

黒川「うまく背後に抜けられれば良かったのですが。そういう場面が何回かあったのですが」

――特に後半になってから、柏は前線からプレスを掛けて、ディフェンスラインを高くして攻撃してきた。

黒川「そういう試合になることは覚悟はしていました。ボールを持たれても、焦らずにやれることが大事だと思ってプレーしていました」

前半の柏は、前線の選手がボールを追いかけないやり方をしてきた。水戸DFがボールを持っても無理にプレスを掛けず、逆にディフェンスラインでボールを持たせた。水戸DFが味方のMFやFWにボールが渡るのを待って、タイトにプレスに行く。そうすることで、柏はDFとMF、MFとFWの距離を広げず、コンパクトな陣形を保つことができる。徳島に突かれた弱点を修正してきたのだった。

――黒川くんは、どうすればあの強固な5バックの最終ラインを崩せたと考える?

黒川「そうですね、CBが食いついて来ていたので、そこのギャップをうまく利用できればと考えていました。あとは簡単にカウンターを狙いすぎてボールを奪われる回数が多かったので、行く時と行かない時をはっきりさせたかった。中盤はタイトに来ていましたが、前線に2人を残していたので、もっと落ち着いて押し込む場面を作れたのかもしれません」

柏CBはボールをインターセプトするため、積極的に前に出てきていた。あるいは、ボールを持ったらドリブルをして前進している。黒川が言うのは、CBがポジションを離れてボールを持って前に出てくるのなら、そのCBがいたポジションが空くことになる。その場所に自分が入ってボールを受ける機会を作りたかった。そうすればチャンスがあったと、黒川は考えていた。しかし、水戸の選手がボールを持って、黒川がギャップを利用してCBのいた場所に入り込んだとしても、その前に柏のタイトなプレスに合ってボールを奪われてしまう。

筆者は試合後の監督会見で、長谷部茂利監督に「柏のDFとMFの間にボールを入れてから崩せなかった。そこからの攻撃についてアイデアをどう持っていましたか?」と質問をしていた。監督は「アイデアはありましたが、今日はうまく行きませんでした」と答えた。相手のMFとDFの間に人とボールを入れて、相手DFが前に出てきたところで、DFの背後に選手が入っていく。黒川がイメージしたことも攻撃の選択肢の1つにはあったと想像する。

――新しい選手が今日の試合で使われたね。

黒川「試合に出ていなくても、練習中もすごい貪欲にやっているので、いつ試合に絡んできてもおかしくない状態にあると感じていました。試合に出ている僕たちも、しっかり試合に絡んでいかないといけないと思っています」

外山凌がサイドバック(SB)で、森勇人がサイドハーフ(SB)で、途中出場を果たした。水戸の課題の1つに、選手の固定化がある。スターティングメンバーとサブメンバーの力の差があるので、頭から使えないという理由があるのかもしれない。しかし、固定化をし過ぎると、相手チームに攻略されやすくなるなど、マイナス面が出てくる。そのためにも、サブメンバーの底上げは急務なテーマだと考える。

この試合は、柏が前節の徳島戦での欠点を克服して臨んだゲームだった。柏の強固な5バックを崩すことは、水戸にとってたやすい仕事ではなかった。そのため、水戸も失点を喫することなく、0-0で終えたことは、大きな成果だと言える。

#川本梅花

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ