川本梅花 フットボールタクティクス

【試合分析】守備ブロックを崩す #登里享平 と #長谷川竜也 の連係【無料記事】J1第14節 #川崎フロンターレ 1-1 #浦和レッズ #urawareds #frontale

先制点を生んだサイドバックとサイドハーフの連係

目次
「3-4-2-1」vs「4-4-2」
浦和の守備ブロックを崩したサイドの連係

2019明治安田生命J1リーグ第14節
川崎フロンターレ 1△1 #浦和レッズ
https://www.jleague.jp/match/j1/2019/060107/live/

6月1日の土曜日、明治安田生命J1リーグ第14節、川崎フロンターレ対浦和レッズ戦が等々力陸上競技場で行われた。

浦和は、オズワルド オリヴェイラ前監督との契約解除にともない、大槻毅氏が再びチームを率いる。さらにコーチングスタッフの入れ替えも実施。5月26日(日)に行われたJ1第13節・サンフレッチェ広島戦を0-4で落とした浦和が、新監督を迎えてどのような戦い方をするのか、注目される。

筆者は大槻氏を取材したことがある。2016年、雑誌『サッカー批評』(双葉社)の仕事で、筑波大学蹴球部に関する話題だった。大槻氏と日本サッカー協会(JFA)会長・田嶋幸三氏の関係にも触れている。以下の記事で、その内容を一部紹介している。

【コラム】大槻毅暫定監督が話した田嶋幸三会長から受けた影響【無料記事】過去の取材ノートより

「3-4-2-1」vs「4-4-2」

ホームの川崎Fは、鬼木達監督が指揮を執る。「4-4-2」のフォーメーションで、中盤にボックス型のシステムを採用する。浦和のフォーメーションは、大槻監督が昨季指揮した時に用いた「3-4-2-1」を採用。選手起用においては、明治大学から加入の1年目・岩武克弥を先発起用した。岩武はJ1初出場となる。両チームのシステムを組み合わせた図は、以下の通りだ。

Jリーグでは、しばしば「3-4-2-1」の布陣で戦っているチームが見られる。J1ならば、浦和や大分トリニータが挙げられる。ただし同じフォーメーションでも、システムは異なる。川崎Fが採用する「4-4-2」も多くのチームで採用されている。本サイトで取り上げることの多い水戸ホーリーホックも同じ布陣だ。しかも中盤は、ともにボックス型を採用している。

Jリーグで頻繁に行われている「3-4-2-1」と「4-4-2」の対戦。「3-4-2-1」は3人のDFでディフェンスラインを形成するが、守備時には両サイドのウイングバック(WB)の働きが重要となる。WBが戻れば5バックとなり、ディフェンスラインで数的有利を作れるからだ。ただし、常にWBがディフェンスラインにいると、中盤は数的不利に陥ることとなる。そのため、WBにはチーム全体のバランスを考慮したポジショニングが求められるのだ。

浦和の守備ブロックを崩したサイドの連係

「4-4-2」の川崎Fがビルアップを開始すると、「3-4-2-1」の浦和は、ボールサイドのWBがディレイを行い、逆サイドのWBがディフェンスラインに入る。そして3人のセンターバック(CB/槙野智章・マウリシオ・岩波拓也)と、2人のセンターハーフ(CH/青木拓矢・柴戸海)は、ボールサイドにスライドする。1トップの興梠慎三は相手CBを前に中間ポジションを取り、2人のシャドーストライカー(武藤雄樹・マルティノス)は下がり、相手のCH2人にプレッシャーを掛ける。

対する川崎Fは、ボールを左右に動かすことでプレッシャーをかわし、浦和のディフェンスラインをペナルティエリア手前まで押し込む。すると浦和は、1トップの興梠を残し、CB+WBによる5バックと、シャドーとCHによる4人で、ブロックを敷く。

川崎Fは、4人と5人で作る強固な守備ブロックを、いかに崩したのか。ここが得点のポイントとなる。

得点のポイント

川崎フロンターレの左サイドバック・登里享平のポジショニング。
登里と左サイドハーフ・長谷川竜也との連係。

図で示すと、以下のような形になる。

川崎Fの両サイドバック(SB)のポジションに注目してほしい。川崎Fの両サイドハーフ(SH)家長昭博と長谷川竜也はサイドに張っているが、両SBの車屋紳太郎と登里享平は、彼らにボールを供給できるポジションに位置している。SHは縦への突破を試みるため、SBを起点に、CHを経由して何度かパス交換を行う必要があるのだ。

浦和の選手は、ボールサイドにスライドしてプレッシャーを掛ける。対する川崎Fは逆サイドにボールを振り、浦和守備陣のポジショニングにズレを作り出そうとする。川崎Fの先制点、52分のFWレアンドロ ダミアンのゴールは、この展開から生まれた。

長谷川がドリブルで前に突破を図る。ダミアンのゴールをアシストした登里は、図にあるポジションから縦に走り込んでペナルティエリアへ進入。長谷川からのボールをダイレクトにゴール前に折り返す。そのボールを、レアンドロ ダミアンが冷静に押し込む。

川崎Fは、高い位置を取る浦和WB岩武をディフェンスラインに押し込むことで、その攻撃力を抑えていた。なおかつ、SH長谷川をタッチラインに張らせ、SB登里を長谷川の斜め後ろにポジショニングさせる。そしてボールを小さく、あるいは大きく回しながら、浦和が敷く2ブロックに隙を作っていった。個人戦術とチーム戦術のマッチングから生まれた、川崎Fの先制点だった。

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