川本梅花 フットボールタクティクス

【連載】ボールを持っている選手がスペースにボールを出すサッカー【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

ダイレクトプレーサッカーとはなんですか?

ボールを持っている選手が味方の選手にボールを預けてパス交換を連続して行うサッカーをポゼッションサッカーと呼びます。その対局にあるのがカウンターサッカーと思われる方が多いと思います。でも、ポゼッションを志向しているチームでも、状況によってカウンターを仕掛けてくるケースがあります。ですから、単純に「これはこういう区分で」と分類できなくなっています。ただし、チームの特徴を見出したい場合、「ポゼッションサッカー」に対抗する勢力として「ダイレクトプレーサッカー」を挙げることができます。ポゼッションサッカーは、ボールを持っている選手が味方の選手にボールを預けるやり方で、いわゆる「選手から選手へ」ボールが運ばれます。一方で、ダイレクトプレーサッカーは、「選手からスペースへ」パスを出すという考え方をします。

「ポゼッションサッカーでもダイレクトプレーをするだろう」と思われる読者もいるでしょう。確かに、ボールを運ぶ際に選手同士がダイレクトでボールを交換していく場面があります。しかし、「ポゼッションサッカー」と「ダイレクトプレーサッカー」では、ゴールまでの過程が違うのです。そもそもダイレクトプレーサッカーとは、パス交換においてのダイレクトパスを意味しません。ゴールに直接的に向かって行くプレースタイルのサッカーのことを言うのです。

試合でのボール支配率を見れば、そのチームがどのようなサッカーを志向しているのかがわかります。ただし、試合中に「このチームのボール支配率は60%を超えていますね」とアナウンサーが伝えたからと言って、そのチームがポゼッションサッカーを志向しているとは限らないのです。なぜならば、ボールを持っているのではなく、相手チームにあえてボールを持たされているケースがあるからです。そこは、試合の状況によって判断するしかありません。

「ポゼッションサッカー」は味方同士で数多くのパス交換をして、数的優位を作ってゴールを目指すサッカーです。「ダイレクトプレーサッカー」は、少ないパス交換で一気にゴールを目指すサッカーだと言えます。どちらのサッカーにも「ボールを大切にして」という言葉が当てはまります。「ボールを大切にして」とは、ボールを前に運ぶのが無理ならば一度ボールを落ち着かせてから機会をうかがうという意味です。したがって、ダイレクトプレーサッカーを志向するチームであっても、ボール支配率が極端に低いとは言えないのです。

ポゼッションサッカーに対するカウンターサッカーとの対立軸。あるいは、ポゼッションサッカーに対するキック&ラッシュとの対立軸。そうした対立軸を持ち出して、一方を解説できるほど、現代サッカーは単純ではなくなっています。しかし、サッカーをわかりやすく見るために、筆者は、「ポゼッションサッカー」と「ダイレクトプレーサッカー」とを区分軸にしているのです。

選手からスペースへパスを出す場合、センターバック(CB)のようなディフェンダー(DF)が相手の裏のスペースにボールを出すケースをよく見かけます。あるいは、サイドハーフ(SH)とサイドバック(SB)の選手がショートパスを交換して相手選手を引き寄せておいて、相手SBの裏のスペースにボールを出して味方のフォワード(FW)をその場所に走らせるケースもあります。

図で示せば以下のようになります。

   

ダイレクトプレーサッカーのメリットは、ボールを相手DFの裏のスペースに出すことで陣地を挽回できることと、相手DF(最終ライン)を下げさせることができます。相手の最終ラインが下がれば、攻撃する側の最終ラインを上げられるので、攻撃に多くの人数をかけられることができるのです。これがダイレクトプレーサッカーのメリットです。

川本梅花

 

 

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