川本梅花 フットボールタクティクス

【連載】キック・アンド・ラッシュは攻撃の最終手段です【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

キック&ラッシュは攻撃の最終手段です

相手チームのディフェンス(DF)ラインの後ろにボールを入れて、フォワード(FW)やミッドフィルダー(MF)がそのボールを追いかけることによって相手のエリアから攻撃を始める、というのがキック&ラッシュという攻撃戦術です。この戦術の目的は、いかに速く相手陣内でサッカーをしようとするかにあります。

キック&ラッシュの一辺倒で戦うチームは、ほとんど見かけなくなりました。その理由として、相手のDFの背後にボールを蹴り込むというやり方ではなく、相手のDFの裏を利用するために、まずボールをターゲットマンのFWに入れてから素早く展開するというやり方がメインになってきたからでしょう。さらに、選手のキック精度の向上や、FWに足が早い選手が起用されたり、FWのボールキープ力が高まったので、相手DFの背後にボールを放り込まなくても、FWにダイレクトにボールが渡るようになったことも影響すると思われます。

ただし、キック&ラッシュは、攻撃の最終手段として用いる場合があります。それは、状況に変化を与えたい時に使用するのです。ボールをポゼッションしていても、相手チームのプレスが速くて状況が停滞してしまってボールを前に運べない時など、試合の流れを変えるために、DFラインの背後にボールを放り込んで、相手陣内でサッカーをするという考えもあります。

オランダなど海外のジュニアユースのトレーニングの中に、キック&ラッシュをやらせるケースがあります。たとえば、11歳のカテゴリーの子どもを、13歳のカテゴリーの試合に出場させます。普段は、ポゼッションサッカーをしていても、当然、11歳よりも13歳の方が身体が大きいので、ボールをうまく繋げない場面ができきます。そうした停滞した局面を打開するために、最終手段の戦術としてキック&ラッシュをやらせることがあります。

ジュニアユースは、結果を重視しないで選手のスキルを伸ばす場所だと理解されているので、あえて体力差のある中に身を置かせることで、いろいろなやり方があることを身につけさせようとするのです。

キック&ラッシュのメリットは、中盤や後方で相手にボールを奪われることがなく、常に相手陣内で攻撃をスタートできることです。この戦術は、流れを変えるためや、時間が迫った時に用いられる、最終手段だと覚えておきましょう。

川本梅花

 

 

 

 

 

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