川本梅花 フットボールタクティクス

【連載】ローマ帝国の「アルパストゥム」がサッカーの起源?【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

ローマ帝国の「アルパストゥム」がサッカーの起源?

古代のギリシア人たちは、丸いボールを使った五つのゲームを行っていました。その5つのゲームとは、「アポルアクシス」「ユラニー」「フェニンデ」「エポスシーレ」「スシーレ」と呼ばれています。ボールの大きさは様々で、空気の他、麦や綿をつめたものもありました。詩人ホメーロス(約紀元前8世紀)の『オデュッセイア』の第八歌の中で、前述の「ユラニー」について触れています。フェアンシアンの王様であったアルシノスが、息子たちにゲームをさせて、それをユリシーズに見せると言う場面が詠われています。

「アルシノスは、息子たちのアリオスとラオダマスに、彼らだけで踊るように求めました。それというのは、誰もそんなにうまく踊れなかったからです。ポリーべが彼らのために作った紫の美しいボールを手に取ると、一人が後ろを向いてボールを暗い雲にむかって投げました。もう一人は、高くジャンプして難なく受け止め、地面に降り立ちました」

また「スシーレ」は、一種に陣取りゲームのようなものもありました。これは、ある一定の場所を設定して、そこをセンターラインで区切って、敵と味方に分かれます。敵を自陣のエンドラインの外へ追い返すというゲームです。さらに「フェニンデ」は、チーム単位で行われるゲームでした。チームプレーが重要視されて、ボールを手で扱ったり足で蹴ったり拳で叩いたりしました。

ボールを使うゲームがあったことは、紀元前8世紀の『オデュッセイア』の中に見られるのです。では、現代のサッカーにより近い形態を持ったボールゲームはなんなのかと考えると、いろいろな研究者の説では、ローマ帝国(紀元前8世紀から始まる)の時代に行われていた「アルパストゥム」だろうと言われています。「アルパストゥム」はもともと、軍事訓練として用いられていたようです。「アルパストゥム」を行う際は、中くらいの大きさの固いボールを使うように義務付けられていました。それ以外にも、民衆がボールゲームをする際は、主に3つの形をしたボールを使うように定められました。

①ボールは空気の詰まったブタの膀胱を使う。

②3人でボールを使う時は、小さな軽いボールを使う。

③農民がボールを使う時は、羽を詰めた大きな柔らかいボールを使う。

「アルパストゥム」の言葉の意味は、「奪う」や「つむ」なので、足でのゲームではなかったようです。ただし、チームに分かれての対抗戦や、ポジションの分化がメンバーの能力とグラウンドでの位置に応じて行われたようです。具体的には、センターにボールが投げ込まれたならば、ボールを持った人は、相手チームの背後にあるエンドラインにボールを持っていくというゲームだと言われています。

「サッカーの起源は?」の問いには、今のところ「ローマ帝国で行われたアルパストゥム」であろうという説が一番有力になっています。なぜならば、ローマ帝国が様々な国を征服していく過程で、ローマ人の影響力を他国の文化に落とし込むために、「アルパストゥム」を普及させていったのだろうと考えられるからです。ケルト文化などの異文化との接触によって、「アルパストゥム」のゲーム形式にも変化を及ぼしたのでしょう。

【連載】サッカーの起源を知っていますか?【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

そして、前回のコラムでも触れましたが、球体という形が「太陽」として捉えらえていたことも、ボールゲームの普及に大きな力を与えたと思われます。

川本梅花

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