川本梅花 フットボールタクティクス

GKからボールを繋ごうとする大宮と可変システムで挑む水戸(前編)【試合分析】明治安田生命J2リーグ #水戸ホーリーホック 1-2 #大宮アルディージャ【無料記事】

GKからボールを繋ごうとする大宮と可変システムで挑む水戸(前編)

大宮アルディージャが新しいやり方を取り入れようとしています。それは、単純にロングボールを前線に蹴るのではなく、ボールを大事にして繋いでいくことで数的優位を確保しようとするのです。これは、大きな変化と言っていいでしょう。その現れが、GKの笠原昂史から始まるビルドアップのやり方にあります。センターハーフ(CH)の小島幹敏が、最終ラインに下りてきてビルドアップに参加しようとします。そこで、GK笠原は、CH小島にボールを預けます。ボールを受けた小島は、前を向いてビルドアップを開始します。水戸の前線の選手がGKまでハイプレスに行った際は、笠原はボールを大きく蹴り出しますが、なるべくボールを繋ぐようなプレーを選択します。

(撮影 Wataru S.)

一方の水戸は、最終ラインに注目しました。ゲームスタート時は4バックで構えますが、途中から5バックになります。相手にボールを持たれた局面、ネガティブトランジションの際は4バックあるいは5バック。そして自分たちがボールを持っている局面、ポジティブトランジションの場合は2バックになるのです。センターバック(CB)のンドカ ボニフェイス(ボニー)と左右どちらかのストッパーが残ります。例えばボニーと左の乾貴哉が最終ラインに残って、右の岸田翔平が右サイドのタッチラインに張ってビルドアップの起点になります。さらに、2人のCBがハーフウェーラインを超えて敵陣エリアに入っていくと、GKの牲川歩見がゴールラインから12メートルくらい前進してポジショニングします。こうしたやり方は、とてもモダンなサッカーだと言えます。牲川を先発起用したのは、キックの精度とスピードを見込んでの起用だと思われます。斬新なやり方に対応できると監督が判断してのスタメンです。

(撮影 Wataru S.)

水戸の「4-4-2」に対する大宮の「3-4-2-1」のシステムの組み合わせ。

水戸の「3-5-2」に対する大宮の「3-4-2-1」のシステムの組み合わせ。

このような可変システムで水戸は試合に挑みました。見ていて、面白いやり方でしたし、大宮はミスマッチの局面で相当に苦労していました。本当ならば、監督会見で大宮の高木琢也監督に質問があったのですが、時間の関係で質問しませんでした。高木監督の後に水戸の秋葉忠宏監督の会見が続きます。私は、質問する内容を整理して監督の入りを待ちます。秋葉監督のあの発言がなければ、システムの質問をしようとしていました。

「最終ラインが最初は4枚で途中から5枚になりました。システムを変えるのに何かキッカケを与えていたのでしょうか?」

しかし、私は上記の質問をしませんでした。なぜならば、監督がこのような発言をしたからです。

「選手交代した後ですね、僕らが意図したポジションじゃないところで、選手同士がプレーする時間帯があったんです。コーチングスタッフが指示を明確に出して、きちんと伝えないといけない」

この発言の中の「意図したポジションじゃないところで」という話を聞いた瞬間に、「それは細川淳矢を入れた時だな」とすぐに分かりました。なぜならば、失点する前のボニーのプレーに不自然さを感じていたからです。不自然さというよりも、ぎこちなさと言った方がいいかもしれません。そこで私は質問を変えました。以下が私の質問です。

(撮影 Wataru S.)

筆者 細川を投入した意図はどうなんですか?

秋葉監督 単純に(外山)凌が足をつってしまったんです。戦術やシステムの問題ではないトラブルです。相手がどうかでもありません。山谷(侑士)と細川のどちらを出すかで悩みました。FKが入ってしまったら山谷を出そうと思いました。そこで、しのぐことができました。できれば1対1のまま展開させようと。先ほども言いましたが、ノーガードの展開が続いていたので、ベテランを入れてゲームを落ち着かせたい。守備をマネジメントさせようという意図がありました。ただ、欲を言えば、外山凌というのは、われわれにとって強みとなっています。サイドは、かなり押し込むことができました。本当なら90分元気でプレーしてくれたら良かったのですが……。開幕戦という独特の雰囲気の中で、いつもより足がつるのが早くなってしまったのかと思っています。

では、細川を投入して、ボニーにどんな変化が見られたのでしょうか?

川本梅花

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