川本梅花 フットボールタクティクス

【戦力分析】浦和レッズ、3バックから4バックに変更【無料記事】昨季と今季の開幕戦システムを比較

浦和レッズ、3バックから4バックに変更-昨季と今季の開幕戦システムを比較-

2019シーズン開幕時に浦和レッズの指揮を執っていたのは、鹿島アントラーズでJリーグ3連覇を成し遂げたオズワルド オリベイラ監督でした。(浦和の監督就任は2018年4月)2019シーズン開幕戦のベガルタ仙台戦は引き分け。システムは、下の図のように「3-5-2」。細かく言えば「3-3-2-2」の3バックでした。

オリヴェイラ監督は、J1第13節のサンフレッチェ広島戦で0-4と敗れ、契約解除(2019年5月)となり、現監督の大槻 毅にバトンタッチ。システムは「3-4-2-1」の2センターハーフ(CH)と1トップに変更されました。

最終ラインの3バックは固定的(槙野智章[32]・マウリシオ[22]・岩波拓也[24])で、鈴木大輔[13]が起用される場合もありました。右ウイングバック(WB)は橋岡大樹[16]、左WBは山中亮輔[14]や関根貴大[8]を起用。山中のクロスや橋岡の突破などサイドからの攻撃は迫力があります。またCHの青木拓矢[24]とエヴェルトン[16]は安定感があり、1トップの興梠慎三[27]を軸に、シャドーストライカーは長澤和輝[20]や武藤雄樹[12]、柏木陽介[15]を起用しました。([]内はリーグ戦先発回数:ソースはFootball LAB
連敗はあっても連勝はない。2019シーズンは波に乗れないまま終えた印象でしたが、ここに挙げた選手の名前を見れば、J1参入プレーオフに回った16位・湘南ベルマーレと勝点差1の14位という結果には、首をかしげざるを得ません。しかし戦い方を見れば、順当な結果だったと考えられます。

システムは「3-4-2-1」。一見“ミシャ式”のようですが、可変システムではなく、意外性のない3バックでした。そこには、大槻監督の「差別化したい」という意図があったのでしょう。大槻監督に迫られた課題は、ミハイロ ペトロヴィッチ監督による可変システム後のシステム構築でした。

そうした中で迎えた2020シーズン開幕戦。当然、システムが注目されます。守備時は「4-4-2」の中盤がフラット型で、攻撃時は「4-4-2」のボックス型の4バックを選択しました。以下の図が、開幕戦の陣形です。

「4-4-2」は一般的に、「守ってカウンター」を志向するチームが採用するシステムです。近年のJリーグでは「4-4-2」システムを採用。前線からの激しいプレスを仕掛けてボールを奪い、ショートカウンターで得点を狙うチームがいくつかあります。

ただし浦和の場合は、前線からそれほど激しい守備をしません。ある程度は、相手にボールを持たせても良いと考えているようです。それはボールを奪う位置が、ハーフウェーラインから敵陣ではなく、自陣であることからも分かります。得点に至る場面を見てみましょう。

カウンターの定義は、人数を掛けないで一気に得点を奪うことです。浦和の攻撃は、カウンターのお手本のような形でした。山中から、ロングボールが湘南の最終ラインの裏に出されます。そのボールを目掛けて走り込む汰木康也。ボールに追いつくとゴールライン近くまでドリブルで進入、ペナルティエリア中央にマイナスのパスを出します。そこに興梠が飛び込み、ゴールを決めます。山中→汰木→興梠と3人でゴールを奪うことになりました。攻撃に関しては、両サイドとも十分な破壊力を備えています。

「4-4-2」のシステムの特徴は「対称性」と「関連性」にあります。対称性とは、中央から分割されている右と左が「対称であること」を指します。

関連性については、小さな枠で見れば、左センターバック(CB)と右CB、左CHと右CH、左サイドバック(SB)と左SH、右SBと右SH、左FWと右FWが、2人で1組のグループになり、それぞれのグループ内で連動。2人1組のグループは距離間を保って動くことが求められます。そして大きな枠で見ると、5つのグループが1つに連動している。これは「4-4-2」の構造の一例です。

このような特徴のある「4-4-2」は単純に見えますが、構造化されたシステムなのです。大槻監督が、どこまで「4-4-2」のシステムの優位性を選手に落とし込めるかで、今季の浦和の行方が見えてくると言っても過言ではありません。

川本梅花

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