【試合分析】待ち望まれた村瀬勇太の復帰【無料記事】ラインメール青森FCアカデミーコーチ奥山泰裕の分析 #ロアッソ熊本 2-2 #ヴァンラーレ八戸
【インタビュー】ラインメール青森FCアカデミーコーチ奥山泰裕が語る熊本対八戸
【目次】
■奥山泰裕によるヴァンラーレ八戸選手採点
■連動した守備の中で見せた熊本のほころび
■待ち望まれた村瀬勇太の復帰
分析対象試合:2020明治安田生命J3リーグ第10節 ロアッソ熊本 2-2 ヴァンラーレ八戸
■奥山泰裕によるヴァンラーレ八戸選手採点
今回から奥山泰裕に選手のスコアを付けてもらいます。4が標準点です。標準よりも良かった場合、0.5ずつ加点。逆に、標準よりも良くなかった場合は、0.5ずつ減点されます。
【先発】
GK 1 ゴ ドンミン 4.5
DF 11 國分 将 4.5
DF 6 河津 良一 4
DF 22 穂積 諒 4
DF 33 佐藤 和樹 4
MF 32 國領 一平 4
MF 10 新井山 祥智 4
MF 4 前田 柊 4
FW 8 高見 啓太 4
FW 44 秋吉 泰佑 4
FW 18 谷尾 昂也 4
【途中出場】
DF 40 深井 脩平 4
MF 14 村瀬 勇太 4
MF 7 中村 太一 4.5
FW 30 黒石 貴哉 4
FW 9 上形 洋介 –
――GKゴ ドンミンは2失点を喫しているけど、0.5が加点されている。
奥山泰裕 熊本に決めた1点目も2点目も、GKからすればノーチャンスですから。シュートはどちらもGKの泣き所と言えばいいのか。ファーサイドから大外に入ってくるシュート。あそこを巻きで打たれたら取れない。ハイボールやCKも防いでいましたから。もし3点目を奪われていたら、八戸は追いつけなかった可能性がある。ファインセーブも何本か見せていました。
――佐藤は先制点を決めているけど、スコアは4だね。
奥山泰裕 前半のみの出場でした。それは守備に課題があるからです。
――同じように前半で前田も交代している。
奥山泰裕 前田選手は戦術的な交代です。前田選手自体のプレーは悪くなかった。
――FWは、3人とも標準点だね。
奥山泰裕 先制点が入ってから、ボールに触れる機会がなくなっていた。そこは個人としてよりもチームとしての課題だと思います。
――では、試合を分析していこう。
■連動した守備の中で見せた熊本のほころび
――熊本はボールをつないで、つないで、という大木武さんのサッカーだね。八戸は、前節のガイナーレ鳥取戦[1〇0]からスターティングメンバーが落ち着いてきた。
奥山泰裕 鳥取戦は、スタジアムで試合を見ました。八戸はすごく良い出来でした。そうした前節の流れを受け、熊本戦の入りは良かった。試合への入りが良かった分、先制点の1点を大事にしようとしたのか、あるいは暑さのせいか、移動での疲れなのか。理由は分かりませんが、1点を取ってから選手の出足が鈍くなった。熊本の攻撃を受ける形というか、相手の動きを見てしまう形になってしまった。
――その先制点をもたらした、國分の中央を突破したドリブルは良かった。
奥山泰裕 熊本は、プレスが連動して前から取りに行く守備をやっていました。そうした連動した守備の中で、ファーストディフェスの方向を決める前に、次の選手の出足が良かったため、問題が起きた。
國分が熊本の1人の選手をかわしたことで、次にプレスに行く選手が動きを予測してカバーに行かず、パスコースをケアする位置に動いてしまった。結局、國分は1人をかわしたことでゾーンを抜けていき、6人を置いてきぼりにした。熊本と対戦するチームは、プレスに来た選手をかわすことで起きるズレを狙っていったらいいと思いました。
――それにして、佐藤はあそこの高い位置まで上がっていったね。
奥山泰裕 ボールを持った選手を追い越していくプレーは、八戸が今季ずっとやってきたこと。國分選手が運べるとなった時、サイドバック(SB)の佐藤選手があそこまで上がれる。今季、八戸がやってきた形が出た場面でした。
――谷尾のコンディションが上がってきて、ボールをキープできたこともチームにとっては大きい変化だね。
奥山泰裕 鳥取戦も谷尾選手が身体を張ってキープできていて、周りの選手が上がってくる形ができていました。しかし先制点を奪った後のように、谷尾選手が孤立した場合が課題です。
熊本は「谷尾選手を抑えたらいい」と考えていたようです。谷尾選手がキープできないと八戸の攻撃が始まらないという傾向が見えましたね。谷尾選手にボールが入らずに、熊本にボールが渡ってしまう。そうすると、八戸のラインがだんだん下がってくる。
■待ち望まれた村瀬勇太の復帰
――中口雅史監督は、後半になって3枚替えをしてきた。
奥山泰裕 1点取った後、気持ちが守りに入ったのかどうか、分からないですが、熊本の攻撃を受けっぱなしになっていた。後半になって3枚替えをした理由は、前半の内に逆転され、沈んだ流れを少しでも変えたかったからだと思います。ハーフタイムを1-1で迎えるのは、まあ「アリ」ではあったものの、逆転されたため、大幅な選手交代が必要だと監督が判断したのでしょう。
中村選手、村瀬選手、深井選手は、試合の流れを八戸に引き寄せました。次節・カマタマーレ讃岐戦は先発もあり得ます。
――八戸は後半、どう戦えば良かったのか。
奥山泰裕 後半から前線の選手はプレスに行くべきです。左サイドで熊本に高い位置を取られていて、バイタルエリアに入ってからプレスに行くやり方をしていた。
左サイドの選手に八戸のボランチが付いていくと、相手は左利きのサイドハーフ(SH)だから、八戸のSBは縦を切る。そうするとカットインしてバイタルエリアに入ってきてシュートを打つので、SBとボランチの選手のコミュニケーションが大切になってくる。これは、個人で解決できるレベルだと思います。相手の左足が利き足ならば、「縦を切るから中に入ったら任せる」というコミュニケーション。しかし実際は、ただ無心で頑張っていたようにしか映りませんでした。
――八戸の同点弾は中村太一だね。
奥山泰裕 シュート意識がある選手がいるとチームに勢いが出てきます。この試合は、何人かの選手にいいプレーがありました。身体を張ってぎりぎりのところで防いでいた河津選手。新井山選手のパスさばきは見るものがありました。
村瀬選手は、ボールを持った時、みんなが上がって行ける時間を作れる。村瀬選手は、出した足の1歩目で、出した選手へのサポートが始まります。村瀬選手がボールを出した後、彼にボールを預けられるポジションに移動している。ボールをもらった選手が、パスの出しどころを迷わないように、サポートしている。村瀬選手が入ると、ボールを持てるようになる。後半になってチームが生き返った要因は、彼の働きが大きいと思います。
川本梅花