川本梅花 フットボールタクティクス

【レビュー】ゴールキーパーの好判断力が鹿児島の判断ミスを誘った【無料記事】J3第23節 #ヴァンラーレ八戸 1-0 #鹿児島ユナイテッドFC

【レビュー】ゴールキーパーの好判断力が鹿児島の判断ミスを誘った

【目次】

予想通り最終ラインを高く設定してきた八戸

GK田力の判断力が鹿児島の攻撃を抑え込んだ

対象試合:2020明治安田生命J3リーグ第23節 ヴァンラーレ八戸 1-0 鹿児島ユナイテッドFC

予想通り最終ラインを高く設定してきた八戸

ヴァンラーレ八戸の今季の戦いについて、このサイトで何度も語ってきました。特に、中口雅史監督の選手起用や戦い方については、以下のコラムを読んでもらえば、理解の助けになると思います。

【コラム】今季のヴァンラーレ八戸の戦い方について思うこと【会員限定】過去のストーリーを塗り替えさせるための起用

また、葛野昌弘コーチが実際の試合の指揮官として活動している内容については、以下のコラムが助けになるはずです。

【レビュー】実質的な指揮官は葛野昌宏コーチか?【会員限定】J3第20節 #アスルクラロ沼津 1-0 #ヴァンラーレ八戸

そして、連敗を脱出するための、策のひとつとして、鹿児島戦での戦い方を提案しました。それは、次のコラムで解説しています。予想通り、八戸は、攻撃の際に最終ラインを高く設定してきました。センターラインを超えて敵陣センターサークルの先端までディフェンダー(DF)が侵入していきました。こうした高いライン取りによって、攻撃している中で相手にボールを奪われても、フォワード(FW)とDFの距離が狭まっているので、相手の中盤の選手がフリーでボールを持てるチャンスが圧倒的に減りました。これは相当にポジティブな意味を持っています。

【プレビュー】八戸は最終ラインを高くしてチャレンジしてくるのか?【会員限定】J3第23節 #ヴァンラーレ八戸 対 #鹿児島ユナイテッドFC

では、実際に、鹿児島戦ではどのように八戸が戦ったのかを見ていきましょう。第一に挙げなければならないのは、ゴールキーパー(GK)の花田力のあるプレーについてです。

GK田力の判断力が鹿児島の攻撃を抑え込んだ

以前のコラムでも語っていたように、GKが目まぐるしく試合ごとに変わるので、チームとして安定できないのです。1試合の一つのミスでベンチに追いやられ、なかなか試合に使ってもらえない。他のGKが試合に出ても、彼らも同じように試合で勝てなければ、ベンチに行くことになる。そうした落ち着きのない選手起用によって、チームの柱となるべき最後の門番の誇りは消し去られていきました。筆者が提案したのは、花田力をレギュラーにして試合でのチームに安定と安心をもたらした方がいい、というものでした。

葛野コーチも同じ考えだったようで、花田を試合に使い続けるようになりました。八戸のゲームの組み立て方というよりも、葛野コーチのゲームの組み立て方は、前半に失点しないというものです。前半を0-0で終えるのではなく、相手に得点を与えないことが、葛野コーチのゲームプランだと思います。鹿児島戦では、守備的にして最初からゲームに入っていませんでした。八戸が先制して相手を0点で抑えるという試合の運び方をしていました。

そんな中、好調の鹿児島は、決定的なチャンスを何度も作ります。そこで、この試合の方向性を決めた、花田のあるプレーが現れるのです。39分に、鹿児島の米澤令衣がペナルティエリア内の右からドリブルで侵入してきます。米澤は、GKの花田と1対1の形を作りシュートを放ちます。花田は、ゴールから離れて、思い切って前に進んで米澤との距離を1メートル以内に詰めます。身体を投げ出してシュートをブロックします。この花田のプレーが、後半になって鹿児島の攻撃陣の脳裏に刻まれるのです。

56分の鹿児島の萱沼優聖が中央から抜け出して花田と1対1を作り出します。萱沼のシュートは、右ゴールポストに弾かれて無得点になります。この場合、萱沼は花田が前半の米澤の時にように、前に出てきて距離を詰められると判断したのでしょう。もっと冷静に花田の動きを見てからシュートしてもいいタイミングだったのです。萱沼はなぜか、早めにシュートを打ちます。おそらく、前半の米澤をストップした出足の速さを警戒して、早目にシュートを打つ選択をしたのでしょう。

その後も、シュートがバーに当たったりとか、鹿児島にとっては不運な結果でしたが、これは運不運の問題ではなく、花田の好プレーが後々まで鹿児島のプレーに焦りをもたらした結果だったと思います。

川本梅花

 

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ