川本梅花 フットボールタクティクス

【インタビュー】古参のサポーターが語る #SC相模原 の現在地【無料記事】#ヴァンラーレ八戸 相手に、どう戦うのか

【インタビュー】古参のサポーターが語るSC相模原の現在地

【目次】
SC相模原、三浦文丈監督のサッカーとは?
注目の選手は?
サポーター集団の解散とコロナ禍での現実
昇格に向けた戦いと八戸対策

2020年12月6日、明治安田生命J3リーグ第31節・ヴァンラーレ八戸対SC相模原が行われる。12月6日現在、相模原は勝点53で2位に。2位までがJ2昇格の切符を手に入れられる。残り4試合で、6位のガイナーレ鳥取の勝点が50。1試合の勝ち負けによって、順位が変動する戦いになっている。そうした過酷な生存競争において、相模原が八戸のプライフーズスタジアムに乗り込んでくる。15位の八戸にとって、当然、厳しい戦いが予想される。

SC相模原は、2008年2月にクラブが創設されてから12年が経とうとしている。神奈川県社会人サッカーリーグ3部から活動をスタートさせて、2014年のJ3リーグに参加する。相模原のホームスタジアム・相模原ギオンスタジアムの椅子席がJ2リーグ加入の基準に満たなかったので、J2クラブライセンスを取得できない状態だった。しかし、新スタジアム計画による「施設基準の例外規定(5年以内のスタジアムの新設)」適用申請を提出して、J2ライセンスを取得することができた。以下がクラブ代表者の望月重良による表明である。

2021シーズンJ2クラブライセンス交付について

筆者が相模原の試合をギオンスに見に行く時、必ずお会いする人がいる。クラブの古参サポーターである東山修司だ。東山は、クラブ創設時からのサポーターで、初代のコールリーダーでもある。彼以上に、相模原を知っている人はいない。そこで、八戸戦を前にして、相模原が置かれている現在地を話してもらうことにした。

SC相模原、三浦文丈監督のサッカーとは?

――東山さんにSC相模原がJ2ライセンスを取得できるようになったのを教えてもらって、期待できるシーズンになりましたね。

東山 在日アメリカ陸軍相模総合補給廠跡地を候補地にした新スタジアム計画が承認されてライセンスを取得できるため、2位でフィニッシュできれば、J2リーグに参加できることになります。

――現在の東山さんの活動はどんな感じなんですか?

東山 今季に限っては何もしていないです。ただ、スタジアムに試合を見には行ってます。たまに、アウェイも行きます。10月31日のJ3第24節・FC岐阜戦(1△1)に行きましたし、11月8日のJ3第26節・福島ユナイテッドFCの試合(0△0)にも行きました。今季は、アウェイへの参戦承諾が遅かったのですが、仕事との関係を測りながら、行ける時にはアウェイでも行きます。

――それは「何もしてない」じゃないですね(笑)。ところで、現在2位の相模原ですが、指揮を執られている三浦文丈監督のサッカーについては、どんな印象ですか?

東山 正直に言って1年目は、三浦監督が理想を持ってそれを追求した結果だったと思います。2年目になって、かなり現実的なサッカーをしていると思います。というのも、一巡目は、基本に忠実なサッカーというか、バランスの取れたチーム作りをしていました。たぶん、スカウティング能力が例年よりも上がったのだと思いますが、相手のサッカーをすごい研究して戦いに臨んでいることが分かります。相手チームのいいところを全部潰していくサッカーに切り替えました。そこからすごい成績が良くなりました。

システム的には、昨季は3バックでしたが、今季は4バックで戦うことで、3バックと4バックの併用ができるようになりました。ただチームが勝ってくると、勝ってきたで、その後のチームとして積み上がっていけるのかが心配ではあります。

――対戦相手によってシステムを変えてくる戦い方をするんですね。

東山 11月28日のJ3第30節・鳥取戦(3○2)なんかも……。

――鳥取は3バックですよね。

東山 ミラーゲームになるところを、両ウイングバック(WB)のどちらかが、上がらないでポジションをステイして4バックになるなど、しっかり守りたい時は両WBが最終ラインに入って5バックになって対応する。可変システムではないですが、シチュエーションによってシステムを変えています。

注目の選手は?

――東山さんから見て「この選手を見てほしい」というプレーヤーは?

東山 右サイドと左サイドのプレーヤーで、夛田凌輔選手と星広太選手ですね。彼ら2人が全試合出場していて、夛田選手は前節は出られなかったですが、両サイドバック(SB)や両サイドハーフ(SH)は、ここ数年固定されなかったポジションであって。このポジションを固定して使える選手がいなかったことが、うちのチームが上位に行けるキッカケを失わせていたと思います。今季は、きっちりと彼ら2人が安定していること、特に夛田選手に注目していたのは、コーチングに関してですね。声を出して選手に指示を出すことで、選手たちが落ち着いて試合に入れるようになりました。そういったところで、士気が高まっていることを、ずっと感じいていました。

――監督が変わっていく中で、相模原のサッカーは確立されている?

東山 安永(聡太郎)さんがやっていたサッカーは、けっこう攻撃的に行くチームを作っていて、ただしチームバランスを考えた時、バランスが壊れかけていた。西ヶ谷(隆之)さんが監督になって、壊れかけたバランスを修復するために苦心していました。パッチワークのように、試合をやってみてどこが悪い、じゃあ悪いところを修復して試合に臨む。修復して修正してを1年間繰り返していた印象です。

そうした中で三浦監督が就任した時、望月代表が「これが相模原というサッカーを作ってほしい」との要望があったはずです。1年目を終えたあたりで、「こういうサッカーをやりたいのかな」というビジョンはなんとなく見えてはきていました。SC相模原のサッカーというよりも、これは三浦文丈さんのサッカーだなと。ただ、今季の序盤に関しては4バックに変えたこともあったのですが、薩川(了洋)さんがコーチで復帰されました。

――2016年に監督をされていた薩川さん? ちょうど、僕が東山とスタジアムで会った時期ですね。

東山 4年ぶりに戻ってきました。ヘッドコーチとして、守備に関しては薩川さんが守りを構築しています。三浦監督が攻撃を見ている。そうした体制ですね。この2人で作ったサッカーは、一口に言って「負けないサッカー」ですね。正直に言って、序盤の戦い方を見て、いま、この順位にいるとは思わなかった。チーム作りとしては、面白いものができるのかと感じていました。相手の良さを消して勝ちにこだわるサッカーに切り替えていったのです。

そうした切り替えは、ライセンス取得に問題と関わっていると思います。新スタジアム計画によって、J2ライセンスの交付が暫定的にせよ了承される可能性が出てきた。J2に昇格できることが現実味を帯びてくる。そうしたライセンス取得可能の事実によって、現実的なサッカーに切り替えたのだと思います。

サポーター集団の解散とコロナ禍での現実

――東山さんは、社会人リーグからのサポーターじゃないですか。J2リーグに昇格できる順位にいる現在、気持ちのたかぶりはどうなんですか?

東山 正直に言って、ないです。

――えっ!そうなの?

東山 いまは一喜一憂しているところです。ただ、どう見ても2位からその下は、団子状態じゃないですか。2位以下の6チームを見ても、現実的にチーム力は、ほかのチームと比べて見劣りしてしまう。もし昇格しても、来季は下位4チームが降格するかもしれないですよね。そうしたら、間違いなくその4チームにうちのチームは入ってしまう。もしも、なんらかの上積みがあればいいんですが……。だから、すごくモヤモヤして毎日を過ごしている感じです。

ブラウブリッツ秋田みたいに、ぶっちぎりで優勝して昇格とか、あるいはFC琉球さんのようにJ2でも攻撃的に戦って降格をしないのは、J3で優勝して勝ち上がったチームだからです。ある一定のチーム力を作って昇格したクラブを見ていれば、彼らのような絵は描けないというのが、いまの印象です。

あとは、コロナ禍の中で、サポーターがバラバラになっている感じがあります。普通に、いつものように、応援活動ができないため、サポーター側の中心部分に集約しにくくなっている。その辺が盛り上がりに欠けていると思われる部分なのか。無理やりテンションを上げている感じですね。それに、応援団としてのサポーターの団体が解散してしまった。いまは有志の集まりという形での活動のようです。

――サポーターの団体が解散したって、すごく大きな問題じゃないですか。

初代のコールリーダーとして、本来ならば東山の意思とか理念を継承してきた団体じゃないですか。解散って、とても残念です。

東山 残念ですね。本人たちは、大きな問題だと思っていなかったんじゃないですかね。「解散しました」「コロナがありました」「スタジアムには行けません」「応援活動ができません」の流れの中で、何かを新しくやることが困難な環境にあって。そうした状況も難しくしています。

昇格に向けた戦いと八戸対策

東山 昇格を経験したことのあるサポーターって少ないですよ。2011年にJFLからJリーグに上がって、JFLもJ3ができることが前提に僕らは昇格できた。J2ライセンスもずっと交付対象になれなかったため、昇格争いにも入れなかった。序盤に首位に立ったシーズンもありましたが、ライセンスがないというモチベーションもあってか、夏場にトーンダウンしてしまうケースがありました。だから、いまのサポーターは、どう喜んでいいのか分からないという話を聞かされまして。まとまってこうだとかないのですが、徐々にサポーター個人個人が、「昇格したいよね」と、気持ちをそっちの方向に持っていこうとしている感じですかね。

僕の中では、最後の5試合になって「もう負けられない」という気持ちが湧いてきましたね。ただ、伝統的に「ここでは負けられない」「勝つしかない」という試合にはことごとく負けてきたチームなので、そうした勝負強さが見えたのが前節・鳥取戦で、「こういう勝ち方もできるようになったのか」と喜びがありました。

――八戸戦ですが、八戸の良さを潰していく戦い方を相模原はしてくるんですね。

東山 僕はそう思っています。どんな相手でも、ストロングポイントを潰して自分たちのゲームにしていく。顕著だったのが、10月11日のJ3第21節・Y.S.C.C.横浜戦(3○0)戦です。いつもは前線の選手が相手GKまでボールを追わない。YS横浜は、GKからボールを繋ぐサッカーをやっていて、珍しく高い位置からボールを追っていました。戦い方の基本線はあるものの、相手によってそこを逸脱しても勝ちにこだわっていると思いました。

川本梅花

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ