川本梅花 フットボールタクティクス

【インタビュー】#村瀬勇太「自分を見つめ直し、あと先は考えず“今季”を頑張るだけ」【無料記事】#ヴァンラーレ八戸 から #FCマルヤス岡崎 へ ―祈る、君が輝く日のために―

【インタビュー】祈る、君が輝く日のために「自分を見つめ直し、あと先は考えず“今季”を頑張るだけ」

目次
FCマルヤス岡崎に移籍した経緯と中口雅史前監督のサッカー
チームのバランスが崩れた原因
名ばかりの監督と実際の指揮官の間で
八戸で学んだことと、これからの自分

村瀬勇太が、明治安田生命J3リーグのヴァンラーレ八戸からJFL(日本フットボールリーグ)のFCマルヤス岡崎に完全移籍した。村瀬については、奈良クラブ(JFL)から八戸に加入した時、ノンフィクションを書いた。

【ノンフィクション】#村瀬勇太 もう一度自分自身を取り戻すためにJの舞台へ【会員限定】#ヴァンラーレ八戸 @vanraure

今回は移籍の経緯と八戸の経験、これからの歩み方を聞いた。

FCマルヤス岡崎に移籍した経緯と中口雅史前監督のサッカー

――移籍した経緯は?

村瀬 流通経済大学を卒業して松本山雅FCに加入した時、一緒にプレーしていたのが、FCマルヤス岡崎の監督・北村隆二さんです。八戸から契約満了のリリースが出されると、すぐに「うちに来ないか」と連絡をもらいました。実は奈良クラブにいた時から誘われていて、今回も声を掛けてもらったので移籍を決めました。

――八戸からいつ岡崎に引っ越したの?

村瀬 1月19日です。青森県から愛知県への引っ越しは大変でした。

――岡崎ではプロ契約となる?

村瀬 はい、そうです。八戸よりも条件はいいです。

――昨季限りで引退した須藤貴郁(八戸)も一般企業で働いていた。一般企業からの給料とクラブからのサッカー給で生計を立てていた。プロ契約は村瀬を含めて5人くらいだからね。選手として1シーズンを過ごした八戸はどうだった?

村瀬 個人的には、ケガが多くて……。うまく試合に絡めなかったことは、とても残念でした。

――中口雅史前監督は、どんなサッカーをやりたいと言っていたの?

村瀬 全員攻撃、全員守備を掲げていて、センターバック(CB)も「得点を奪えるなら決めてしまえ」という考え方です。FWが後方に下がって守備をしてもいい。ポジションにとらわれないサッカーですね。

――キャンプでの調整の仕方は?

村瀬 八戸で練習している時は、けっこう走るトレーニングをしていました。沖縄キャンプでは、走ることよりもボールを使いながらコンディションを上げていく練習でした。

――キャンプの時は、チームにまとまりがあった?

村瀬 そうですね、最初の頃でしたから。中口監督がやるべき方向性を示してくれていたので、みんな同じ方向を見ていたと思います。

チームのバランスが崩れた原因

――チームのバランスが崩れた原因は?

村瀬 勝てなくなった。それが大きいですね。負けてる時、選手が他人のせいにする、誰かのせいする。そういう発言が多く聞かれました。

――そうした中、ケガで長く欠場していた。

村瀬 リハビリしながら、外から試合を見る立場でした。

――起用方法を見て、中口監督は村瀬を信頼していると思った。村瀬がケガをしている間に勝てなくなり、監督と選手の信頼関係がなくなっていったように見えた。

村瀬 負けた場合、その結果の責任は全て監督にある。これは確かですが、「中口さんだからやりたくない」と発言する選手もいました。結局、やるのは選手なんですけどね。

――チーム内に、中口派と葛野(昌宏ヘッドコーチ/2021シーズンから監督)派があった?

村瀬 まあ……ありましたね。

――どんなチームにも起こり得ることで、試合を見ていれば、ある程度は想像できた。

村瀬 そうしたことは、あってもしょうがないのですが、中口さんが指揮を執っている時は中口さんのサッカーだし、葛野さんがやっている時は葛野さんのサッカーなんですよ。しかし選手は、そう捉えようとしなかった。だから、うまく行かなかったのだと思います。

名ばかりの監督と実際の指揮官の間で

――なかなか勝てなくて、負けが続いていく中で、村瀬はどう思っていたの?

村瀬 リハビリ中に外から試合を見ていて、勝てなかったけど楽しいサッカーをしていると思えた試合は何試合かありました。結果は求めないといけないけど、八戸自体はJ2に昇格するためのライセンスは持っていないし、降格もない。では、どうすればいいのか。僕は「見ていて楽しいサッカーが、のちにつながっていく」と思います。そうしたことから始め、徐々に結果を出していければいいと考えていました。

――シーズン後半になって、チームが4バックから3バックに変わった頃から、中口監督から葛野HCに指揮権が移った。S級を持っている人物が中口氏しかいないため、クラブは解任できず、シーズンが終わるまで監督にとどまらせた。それを中口氏も承諾した。

村瀬 そうですね。中口監督は「選手が試合をできる環境がなくならないようにと思って残った」「選手のためを思って残った」と言っていました。

――中口監督は難しい環境下で指揮を執っていたと想像できる。ベンチに座って試合を見ていても、テクニカルエリアでは葛野HCが選手に直接指示を出している。中口監督にとっても、葛野HCにとっても、やりにくい。そうした不健全な環境で、2人ともよくやっていたと思うよ。

村瀬 最初に中口監督で行くと決めたのだから、最後までやってもらってもよかったと思います。中口監督から葛野HCに指揮権が移った結果、連勝して成績が上向いたなら「変えてよかった」と思えますが、実際は中口さんの方が勝率は上。そうなると、シーズン途中の交代は……と思います。

――試合に全く使われなくなった。その点について葛野HCから説明はあったの?

村瀬 ありました。八戸のサッカーに合わないと言われました。

――僕が思うに、システムが「4-4-2」か「4-3-3」ならば、村瀬を中盤で使えるけど、いまの「3-5-2」だと中盤が逆三角形、つまりアンカー1人と前に2人になる。前の2人はインサイドハーフというよりも、セカンドストライカーとかシャドーストライカーの役割で、サイドに走り込んでクロスを上げることが求められる。村瀬の個性を生かすポジションではないよね。そういう意味からすれば「合わない」という結論になってしまう。本当にケガによる離脱が、もったいない。ケガだから仕方ないけど、あのタイミングで試合から遠ざかってしまったことも関係しているのかもしれない。ところで、ケガを含めたコンディションはどうなの?

村瀬 ケガの方は大丈夫です。ちょっと追い込みすぎている感はありますけど、コンディションはいいです。

――ケガなくやり通せたら、何も問題がないと思う。技術、経験、メンタル。全てにおいて、いまがピークかもしれない。だからケガをしないでほしいけど、こればかりは祈るしかない。

村瀬 八戸では「自分がやり切った」という感覚が持てなかったので、余計に、ケガのこともそうですが、自分に何が足りなかったのかを考えて、少しずつでも変えていって、マルヤスで頑張ろうと思っています。

八戸で学んだことと、これからの自分

――八戸で、人として学んだことはあった?

村瀬 俺は思ったことを言うタイプですが、自分の意図とは異なる捉えられ方をされる場合があります。だから、ちょっと考えて一呼吸置いてからの方がいいのかなと。

――それはチームがよくなるためにと考えての発言のこと?

村瀬 そうです。プレーのこととか、何か起こった時に、その選手のために、チームのためにと思って発言したことが結果として、ということです。

――発言内容を誤解された?

村瀬 はい。副キャプテンでしたので、伝えないといけないことは伝えようとしました。でも「あいつは文句を言ってる」と捉えられることもありました。

――そうか、難しい環境の中で苦労をしたんだね。マルヤスでの練習はどうなの?

村瀬 マルヤスは企業チームなので、プロ契約選手が20人ほど、社員が10人ほどとなっています。社員とプロ契約選手との温度はあるのでしょうが、個人個人のレベルは高いですし、雰囲気も悪くない。かみ合えば上位に行けるチームだと思います。

――JFLからやり直すことになるけど、今季はどんな思いで望むのかな。

村瀬 もう1回、自分自身を見つめ直して、あと先は考えずに“今季”を頑張るだけです。ケガなくプレーできれば、結果はおのずと付いてくると思います。

――チームのシステムは?

村瀬 まだ練習試合をしていないので、はっきりと分からないですが、おそらく「4-4-2」か「4-3-3」の中盤が逆三角形でしょう。

――「4-4-2」だったらセンターハーフ(CH)、「4-3-3」だったらインサイドハーフだね。「4-3-3」のアンカーはどうなの?

村瀬 守備は得意ではないですが、そのポジションを求められるのなら頑張ります。

――今季の目標は?

村瀬 昨季は「ケガをしない」と目標を立てたらケガをしてしまったので……。

――じゃあ今季は目標を立てないで頑張っていこうか。

村瀬 そうですね。目標を立てて、それと違うことが起こったら嫌ですからね。逆に目標を立てないでいきましょう。

――よし、頑張って!

川本梅花

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ